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医者が明かす本音…患者の「自分は院長の知り合いだ」は逆効果

平松類(医師・医学博士)

2019年08月21日 公開 2022年07月11日 更新

 

「院長の知り合い」であっても口にしてはならない

患者さんの身だしなみだけではなく、社会的地位はどうでしょうか?
「院長の知り合いだ」というと優遇してくれると思っている人が、たくさんいるようです。これ、完全にデマです。

そもそも優遇するといっても、せいぜい待ち時間を早くするぐらいで、治療を優遇することはありません。なぜなら、どの人に対しても、医者ができる最大限の医療を行っているはずなので、それ以上が存在しないからです。

むしろ、「院長の知り合いだ」だなんて言うほうが、逆効果になります。
第一に、院長が大好きな職員はばかりではないという現実。職員同士でランチをとっている時に、「院長ってすごいよね」と言っている病院は結構少ないです。むしろ愚痴が多い。

第二に「知り合いなら我慢してくれるよね」ととる職員も多いこと。例えば私も、患者さんの中に友人がいた場合は、他の患者さんを優先させたくなります。

一般の患者さんを待たせるのは申し訳ないけれども、友人を待たせる分には「ごめんね、患者さんがいるからちょっと待ってて」と言いやすいからです。

第三に、「院長の知り合いだ」と声高に言うのは、暗に「俺を優遇しろ」と言っているように職員は感じます。

院長のご機嫌取りをするようなごく一部の志の低い職員は優遇してくれますが、一方で志の高い職員は職位で判断するのが嫌いです。それなのに「院長の知り合いだから優遇しろって、どういうこと? 納得できない」と思います。

ただ自分が医療関係者の場合は、相手に言ったほうがいいです。そうすると、医者も説明がラクになります。「この用語は知っていますよね?」となって、説明が省けるからです。

市議会議員や国会議員など政治家の場合も優遇されませんし、あえて優遇しないように医者は気を付けてあげています。変に優遇してしまうと「あの議員は優遇されている」と、悪い評判を得ることになってしまうからです。

テレビに出ているタレントさんなど有名人の場合は、場所によって扱いが違うと思います。

私も元々は「タレントだろうが一人の患者さん。順番を優遇するなんていけないことだ」と思って、実際に待ってもらっていました。

でも、有名人の患者さんとお会いしていくうちに、待ち時間にサインを求められたり握手を求められることがあります。病院で待っていることが、変にネットで出回ってしまう可能性もありますし、実際に起きています。

このように、有名人には一般の人にない苦労があることを知りました。そこで私は、あまり目立たない場所で待ってもらったり、場合によっては早めに診たりすることがあります。

でもそれは、決して特別扱いしているのではありません。普通にしていると、病院がうまくまわらなくなり、結果として全員が困ってしまうからです。とはいえ有名人の方々は「一般の方と同じように待ちますから」と言ってくれることが多いです。

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