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脳だけが知る「好き」や「幸せ」の正体 “言葉にならないキモチ”の可視化はどこまで進んだか

茨木拓也

2019年12月04日 公開 2023年03月02日 更新

「脳科学」という言葉は、実は国際的にはあまり使われない

このように、脳科学を実社会に応用する学問分野のことを、私は「応用脳科学」と呼んでいます。

そもそも、「脳科学」という言葉自体があまり国際的には使われません。Neuroscience(=神経科学)と呼ぶのが普通です。

では、なぜ応用脳科学という言葉を使っているかというと、神経科学に加え、行動科学・心理科学・認知科学などヒトのココロの情報処理を扱う幅広い学問と、さらに工学や情報科学、コンピュータサイエンスやICTなどかなり学際的な領域を融合して実社会に応用することを(私自身が)志向しているので、そういう学際的なニュアンスがある"脳科学〞の応用というのがしっくりきているからです。

よく心理学・行動科学の知見なんかを脳科学の話として話すと、ネットで「それは脳科学じゃない」とか「脳を測ってないくせに脳科学とか言うな」と叩かれるのですが、決して脳を測るだけが能ではありません。

表出される行動だけを見てもある程度は脳内の計算過程を推測できるわけで、「ヒトの脳の情報処理を科学的に理解することを通して社会に役立てることを志向する学問=応用脳科学」くらいに思っていただきたいと思います。(まあ日本では心理学が文系に位置づけられていているので、脳科学という理系っぽいものと一見遠く見えてしまうのも仕方のないことですが。。。)

そもそも、神経科学の世界の中でも、人間を研究対象としている人たちは非常に少ないです。モデル動物を使って、神経細胞に発現するタンパク質やニューロンそのものの働きを研究する分子細胞生物学的なアプローチは神経科学の王道です。

他にも、視覚や運動の研究、注意や情動の研究、脳がたくさんある環境での脳の働き=社会的意思決定の研究など幅広い分野があります。

こうした分野の科学的な「知見」「方法論」「技術」を、実社会における研究開発や人材育成・組織マネジメント、インターフェース開発、マーケティング分野、最近では脳の情報処理にもとづく人工知能の設計に応用していく────それが脳科学応用の広い裾野です。

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