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呼吸に集中することで「今、ここ」の状態を作り出すマインドフルネスの方法

荻野淳也(マインドフルリーダーシップインスティテュート代表理事)

2020年02月26日 公開 2023年08月17日 更新

 

一瞬のストレス反応には理性は介在しない

 そもそも、ストレス反応とは、脅威に対する防御反応です。

 脅威に接すると、脳の大脳辺縁系にある扁桃体が興奮して、副腎からコルチゾールというホルモンが分泌されます。すると、呼吸が浅くなる、体温が上がる、視野が狭まるなどの反応が起こります。

 これは「扁桃体ハイジャック」と呼ばれ、原始時代、猛獣に出くわすなどの脅威に接したとき、戦うのか、逃げるのか、一瞬で決めるための反応でした。一瞬で決めなければ命を落とすことになるので、理性は介在しません。

 現代では命を落とすような脅威に出くわすことはほとんどありませんが、この反応は残っています。上司や仕事のプレッシャーなどによって「扁桃体ハイジャック」が起こり、無意識に身体が反応するのです。

 この無意識の反応が起こったとき、「今、ここ」に注意を向けられれば、反応に気づくことができ、コントロールすることもできるようになります。

 

無理に感情を抑えると一気に爆発するかも

 脳科学の研究を集約すると、マインドフルネスは脳の三つの部位を特に活性化させます。

 一つ目は、注意力をコントロールする部位です。

 扁桃体ハイジャックが起こると、「怒りを爆発させる」などの衝動的な行動を、無意識に取ってしまいます。マインドフルネスは、それを意識的な選択へと変える力を向上させます。

 注意力のコントロールがうまくできるようになると、「今、自分はネガティブになっている」ということも把握でき、過度にネガティブに傾くことも防げます。

 これは、いわゆる「ポジティブ思考」とは違います。「ポジティブになろう」とするのではなく、「今、ネガティブになっている」と自分の状態を把握するのです。自分の感情や状態に対して「良い」「悪い」のジャッジをしないことも、マインドフルネスの重要なポイントです。

 二つ目は、感情を制御する部位です。

 現在、多くのビジネスパーソンは、ストレスを抑圧しています。ストレスが積み重なると、あるとき、一気に暴発したり、うつになったりする危険があります。

「今、ここ」に立ち戻る習慣を持てば、無理やり感情に蓋をするのではなく、自然な喜怒哀楽を表出できるようになります。

 三つ目は、自己認識力を高める部位です。

「今、怒りに駆られている」「今、落ち込んでいる」などと自分の状態を把握し、かつ、それに評価を下さずに受け止める練習をすると、だんだんうまくできるようになってきます。

 その結果、ストレスに対処する能力も上がります。「これ以上は頑張らず、少し休もう」といったような冷静な判断ができるようになるのです。

 

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著者紹介

荻野淳也(おぎの・じゅんや)

〔一社〕マインドフルリーダーシップインスティテュート代表理事

1973年生まれ。埼玉県出身。慶應義塾大学卒業後、外資系コンサルタントやベンチャー企業のIPO担当、取締役を経て、現職。マインドフルネスを軸としたコンサルティングやエグゼクティブコーチングに携わる。慶應義塾大学大学院システムデザインマネジメント研究科研究員も務める。著書に『かんばりすぎない休み方』(文響社)などがある。

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