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「ドラえもんはAIですか?」の質問に研究者が「イエス」と言い切れない理由

大澤正彦(AI研究者)

2020年02月27日 公開 2020年03月23日 更新

 

ディープラーニングだけでは「心の問題」が解決できない

ドラえもんは、のび太と心が通じ合っています。

現在は、機械学習技術のなかでもディープラーニング(深層学習)が高い性能を発揮し、日々発展を続けており、AIの代名詞的な位置づけとなっています。

しかしながら、心が通じ合うという部分は、現在のディープラーニングの技術の発展をただ待つだけでは実現困難だと私は考えています。

この点は実際、研究者のなかでも大きく意見が分かれている部分ですが、私の立場はディープラーニングによるデータ処理を繰り返す以外にブレイクスルーとなる技術があるのではないか、といったところです。

心理学や認知科学では、「人間と人間がどうやって心を読み合っているのか」という理論が多く研究されています。しかしながら、この研究成果を工学的に応用する研究が実用レベルにあるかと問われると、そうとはいえない状況だと思います。

とくにAIと呼ばれる研究では、AIの中身となる技術にばかり注意が向きがちですが、外側にある環境や他者を含めた全体のシステムをどうデザインするのか、それを考えないと、のび太と心が通じ合うドラえもんはつくれないのではないでしょうか。

 

AIと非AIを分けるものは何か?

そもそも、AIの定義そのものがはっきりとしていません。

研究者のあいだでも、AIの定義は明確になっていないのです。なので、研究者以外の方が「AIっていったい何だろう」と感じるのは、不思議なことではありません。

コンピュータで自動化されたものが、すべてAIだと思われていることもあります。ただ、その多くの部分は、決められている手順に沿って処理するプログラムであり、コンピュータがつくられた当初からあるものです。AIの定義がはっきりとしていないため、昔からあるプログラムがAIだと思われているケースもあります。

研究者の場合は、未知の技術をAIと呼び、すでに確立された技術はAIとは呼ばない傾向があるように思います。

たとえば、コンピュータが画像を認識して、「これは人」「これは自動車」「これは建物」などと自動的に識別する技術は、以前はAIと呼ばれていたそうですが、技術が確立されて以降は、研究者は「画像認識」と呼んでいます。

また、文書を処理できるシステムをAIと呼んでいたころもあるそうですが、アルゴリズム(プログラムの仕組み)が確立されるにつれて、研究者は「自然言語処理」と呼ぶようになりました。

「AI」という旗の下に研究が進んでいくのですが、技術が確立されるとAIとは呼ばなくなり、別の名前に変わります。

つまり、専門家たちは、まだ見ぬ未知の技術だけをAIと呼んでいるともいえるのです。専門家がそうした状態であることも、AIのイメージをわかりにくくしているのかもしれません。

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未知の技術に対する過剰な期待や恐れ

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