「世界一教育にカネをかけない国」日本が生み出した“教師のブラック労働化”
2020年06月24日 公開 2024年12月16日 更新
ニッポンは「教師の残業大国」
しかし、日本の教育には世界トップの反対、世界ワーストの部分もあります。
まず、政府が教育にかける予算は、ワーストクラスです。
OECDの2016年の調査によると、初等教育(小学校)から高等教育(大学等)の公的支出がGDPに占める割合は、日本は2.9%となっており、これは35か国中最下位です。なお、OECD加盟国の平均は4.0%です。
このうち、小学校~高校(初等教育、中等教育等)への日本の公的支出のGDP比は2.4%で、これはOECD中でも最低レベルです。
日本の教育のワースト記録は、これだけではありません。もうひとつあります。
それは、教員の労働時間の長さです。
図は、教育社会学者の舞田敏彦さんが、教師の労働時間についてデータ分析をしたグラフです。
日本の先生(中学校教員)は、グラフの右上に飛び抜けた位置にいることがわかります。週の平均勤務時間は約60時間。さらに、勤務時間が60時間以上の割合が半数を超える国は、日本しかありませんでした。
こちらは中学校教員のデータでしたが、小学校教員の長時間労働についても世界一との結果が出ています。「先生が忙しすぎる」という日本のイメージは、世界では当たり前ではないのです。「日本の常識は、世界の非常識」というわけです。
日本の生徒の「読解力」は楽観視できない
さて、数学と科学はトップクラスの一方、読解力はトップクラスには遠く、なおかつ低下傾向にあるとお話ししました。読解力と言っても、OECDではどういうものを「読解力」と定義し、評価しているのでしょうか。
OECDの資料によると、読解力(リーディング・リテラシー)として主に3点を試しています。
①情報を探し出す力(関連するテキストを探索し、選び出すなど)
②理解する力(字句の意味を理解する、統合し推論を創出するなど)
③評価し、熟考する力(信憑性を評価する、矛盾を見つけて対処するなど)
もちろん、日本の国語の授業でも①②③に関連することは扱っています。ただし、問題例などを見て感じるのは、国語だけでなくて、社会や技術・家庭、総合の時間など、あらゆる教科で①②③は大事になる能力だということです。
ビジネスパーソンであれば、日ごろの仕事のなかでも①②③に関連することを常に行っている人は多いと思います。たとえば、顧客や取引先からのメールを読んで、何が求められているのかを理解する(①や②の能力)。
その上で顧客のリクエストをそのまま受けていいのか、別の提案ができないかなどを考える(③の能力)などです。
PISAの結果だけに一喜一憂するのはどうかと思いますが、重要なリテラシーを試していることにはちがいありません。その結果が低下傾向にあるということは、単純に「国語の授業が苦手」といったレベルを超えて、社会に大きな影響をもたらす可能性があります。