「来週から全社員原則テレワークになりますが、営業目標は変えません」
「もちろん、人と会うのは極力遠慮して営業してください」
人と会わずに営業する。そんな矛盾を突きつけられ、テレワーク営業に突然放り出された営業マンが、コロナ禍をきっかけに大量発生している。
新たな営業スタイルを探る現場の前に立ちはだかるのが「ITオンチの上層部」の壁である。直接訪問ができず営業成績が悪化しているにもかかわらず、「自粛が終われば戻る」と言ってオンライン商談ツールの導入を許可しない。そんな上層部の問題点を指摘するのは、累計17万部を突破した『御社の営業がダメな理由』(新潮新書)をはじめ、多数の著作で知られる株式会社グランド・デザインズ代表取締役の藤本篤志氏。
本稿では、藤本氏の新著『テレワークでも売れる新しい営業様式~直接会わずに成果を出すテクニックとマネジメントとは』より、今後確実に普及していく「新しい営業様式」について解説した一節を紹介する。
※本稿は藤本篤志著『テレワークでも売れる新しい営業様式~対面せずに成果を出すテクニックとマネジメントとは 』(技術評論社)より一部抜粋・編集したものです。
オンライン商談はすでに会社間格差がついている
【営業部会議にて】
営業部長「テレワーク時代に突入し、オンライン商談で使うツールの予算を申請します」
営業役員「社内のテレビ会議システムにどれだけのコストがかかったと思ってるんだ? それは無理だ!」
営業部長「話を最後まで聞いてください。検討している案は、営業社員1人、たったの月2000円です。営業交通費が少なくなるので、経費削減にもなります」
営業役員「えっ? しかし、……、それは、ランニングの話だろ! ハードや環境を整える初期投資は、どれぐらいかかるんだ!」
営業部長「ゼロ円です。ランニング予算も、営業手法を少し制限すれば、ゼロ円にすらできます」
私はサラリーマン時代にIT担当役員を経験したことがあるのでよくわかるのですが、IT系のシステムやツールはまさしく日進月歩で、目まぐるしく新商材が登場し、投資コストも「昨日の常識が今日の非常識」というぐらい変わります。
したがって、どこかの国のIT担当大臣が一時期じつは「日本の印章制度・文化を守る議員連盟(はんこ議連)」の会長を兼務していたという例にあるように、会社の方向性を決める上層部がITオンチで固められていれば、必ず時代の流れに取り残されます。単なる知識不足によって。オンライン商談は、そのような背景の下、どうやらすでに会社間格差がついています。
オンライン商談の定義は、直接会わずに"対面"しながら商談をおこなう、ということです。正確には、モニター画面を通しての"対面"ということです。したがって、本書においても、従来の顔と顔を直接合わせる対面を"直接対面"、オンラインによる対面を"遠隔対面"と表現し、使い分けることもあります。
「直接とモニター画面を通してでは、だいぶ違いがありますよ」と"できない言い訳"を主張する営業関係者が多いのも事実ですが、結論を申し上げると、単なる"慣れ"の問題です。
似たようなものに、オンライン遠隔診断というものがあります。日本はこの分野も相当遅れており、これも新型コロナ災害によって、やむにやまれず開始されました。
風邪の疑いがある人が病院に行って本当の風邪をもらってくるという、笑い話にもならない事実が多くありますが、遠隔診断というクッションをひとつ置くことによって、そのリスクは相当軽減されることが推察されています。
医者も、最初は慣れが必要でしょうが、先進国では遠隔診断はあたりまえのように実施されています。
営業も同じで、オンライン商談も慣れが必要です。入口の"慣れ"というハードルさえも飛び越えられない、ということだけは避けるべきです。そのためにも、実行継続あるのみです。