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「旅ができない夏」を救ってくれた“特別な読書”

田口幹人(書店人)

2020年08月26日 公開 2022年06月22日 更新

 

まだ知らない知識や人に偶然出合える仕組みが、人生に刺激を与える

読書が好きな方でも、年々新しいジャンルや著者の本を手にする機会が減ってきてはいないだろうか。

これまでの読書歴から飛び出して、新しいジャンルや著者の本を手にする勇気と意欲が年々減ってきたことを感じたことがある方も多いはずだ。これまでの自分の頭の中にある文脈だけを頼りに本を選ぶのは、ハズレはないが少し物足りなさもあるのではと感じる。

読書は楽しいし、面白い。用がなくても何気なく書店に行って、思ってもみなかった本を買う。そういう経験をした方は少なくないと思う。身近に本というものに触れる機会があって、当たり前のように本との出合いがあった。

ところが各地で書店が消えていくことで、書店を身近なものに感じる人が減ってしまった。少しずつ街から書店が姿を消した一方で、ネット書店を通じて本を購入する方が増え続けている。

目的の本を買うには、在庫の有無が分からない書店を捜し歩くよりも、ボタン一つで注文し、数日で手元に届くネット書店は便利であり、生活様式の変化と共に需要が増え続けているのは当然だろう。

それが、自分の頭の中の文脈だけで本を選ぶ傾向を強める要因の一つとなっているのではないだろうか。書店の店頭での偶然の本との出合いをネット書店で体験することは難しい。

あくまでも自分の頭の中の文脈で検索された本を基とした様々なデータから提案される本に出合うことはあるが、それはあくまでも自分の頭の中の文脈の延長戦上にあるものといえるのではないだろうか。

読書は、人生を豊かにもしてくれる。でも、きっかけがないために本を読むチャンスを逃していることも少なくない。自分の頭の中の文脈の外にこそ、自分にない新しい世界が広がっている可能性があるだろう。

読書は、読む本を選ぶところから始まると思う。

まだ知らない世界との新しい繋がりを創り出してくれる本との出合いの場が増えることを大いに歓迎したい。

「WORLD MAP BOOKSTORE」が提案する新しい本との出合い方が、今後どのように進化していくのかを楽しみにしている。

まずは、今年の特別な夏を読書で旅をしてみたい。どんな本が届くだろうか。

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