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社会

超過密な東京はもう限界…「2つの街に住む」という若者たちのニューノーマル

玉木雄一郎(衆議院議員),河合雅司(人口減少対策総合研究所 理事長)

2020年10月22日 公開

 

自然との共生を重視する時代へ

【河合】 日本は戦後、テクノロジーによって発展してきた国です。しかし今後は、効率化とは異なる方向に技術力を発揮していくことが望ましいと思います。たとえば北欧では気密性を高めることで、冬でも暖房を使わずに暮らすことのできる住宅が研究・開発されています。

日本の技術を用いれば、エネルギーロスの極力ない暮らしも実現可能ではないでしょうか。自動車の排ガス規制に対応してきた歴史を見ても、省エネは日本の得意技でした。持続可能な暮らしを設計し、生活システムを丸ごと外国に輸出できれば理想的です。

【玉木】 日本版グリーンリカバリー(コロナショックから経済を立て直す際、併せて環境問題も解決しようとする取り組み)ですね。ご承知のように日本の国土の3分の2は森林で、中世までは森林に囲まれた集落でした。

川下を選んで住むようになったのは戦後の潮流で、それまでは河川の氾濫を恐れて川下を避ける人が多かった。山林はいわば、天然のベーシックインカムです。木の実や木材など、人が生物として生きていくのに必要なものがすべて揃っている。

【河合】 先ほどの「共通社会資本」のお話を伺いながら思っていたのは、日本社会は極度に高齢化しますので、日が昇ると活動を開始し、沈めば眠るといったように自然に逆らわないライフスタイルへと社会全体がシフトしていくのではないかということです。

かつて「24時間戦えますか」といったコマーシャルがありましたが、体力的に夜遅くまで起きていられない人がすでに増えてきました。コロナ禍で多くの人の価値観や死生観が変わりつつあります。人口減少が進むにつれて、人工的な都市生活より、自然との共生を重視するようになるのではないかと思うのです。

【玉木】 私が希望の芽を感じるのは、「二拠点居住」を行なう若者が徐々に見られてきたことです。UターンやIターンのような移住ではなく、東京にベースがあるけれども、大分県にも半年くらい住む、という複数拠点型の生き方です。

【河合】 若い人の場合、一度に自然と共生する暮らしに移行できない人も多いでしょうから、私も二地域居住は有望だと思います。ただ、地方に分散して住むようになるといっても人口減少社会では住民同士の「助け合い」は不可欠なわけですから、おのおのが好き勝手な場所に住むというわけにはいかないでしょう。

国土全体としては東京一極集中を是正しなければなりませんが、分散しながらも各地域においてはそれぞれの「拠点」に集住するといった形をとらざるを得なくなると思います。

私が考える「拠点」は、経済や機能面での優先性ばかりを追い求めるのではなく、「のびやかな空間」「時間的ゆとり」「人間らしさ」「自然との共生」といった価値観に根差す暮らしが実現できる場所です。

人口減少社会において求められるのは、若者にとっても、子育て世代にとっても、高齢者にとってもそれぞれの「役割」があり、同時にマイペースを保って自分らしく過ごせる街づくりです。

【玉木】 いまや高速のインターネット環境さえあれば、どこでも仕事ができる時代です。そこから物価が安く、豊かな自然が近くにある環境でクリエイティビティを発揮する、という新しいライフスタイルが広がれば、少子化の解決にもつながるのではないでしょうか。

いわば大平正芳総理が40年前に提唱した、田園都市国家構想の現代版です。田園都市国家構想は「都市の快適さと田園のやすらぎを融合させる」というコンセプトでしたが、40年前に実現させるのは難しかった。当時はやはり、田舎と都市は対立するものとして捉えられていました。

しかし、いまは地方にいても都会と同様にIT技術を活用でき、最先端の情報が手に入ります。まさに「デジタル田園都市国家構想」が、ポストコロナ時代の国家像ではないかと思います。

20代の若者がつくり上げる人間らしく、豊かな暮らしを我々の世代が政策的にサポートしていく。そうすれば、子どもの笑い声が絶えない日本になるのではないでしょうか。

 

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