優越することでは、本当の「自信」は生まれてこない
自分の安全は、決して優越することによって保たれるのではない。このことが頭でも感情でもわかるまでには時間がかかる。まず世界は自分にとって今まで感じていたほど敵対的なものではないとわかることが必要である。
過去に侮辱された屈辱感なしに「俺は金をもつんだ!地位を得るんだ!」と叫ぶ人は、いないのではなかろうか。
人が成功を望む時、ともすると成功によって人々に受け入れてもらおうとする場合が多い。だからこそ、他人から拒否された時、人は時には激しく「権力を望む」「お金を望む」「出世したいと願う」ものだ。
「出世するんだ!地位を得るんだ!金を握るんだ!」と叫ぶ人間は、たいていそのあとに、「そして復讐するのだ!」とつづくのではないだろうか。
しかし、自分が他人に受け入れられる理由は、社会的位置によってではなく、内面の豊かさによってだ――そう感じられるとこわいものがなくなってくる。
「自分は成功しても、たとえ失敗しても受け入れてもらえるのだ」という感じ方が実際にできた時に、まず伸び伸びとした自信が生まれてくる。そして、その安心感が基礎になって「よーし、やるぞ!」という強烈な意欲がわいてくるのだ。
【著者紹介】加藤諦三(かとう・たいぞう)
1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。