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世界に出遅れた日本経済を復活させる「10兆円」

大賀康史(フライヤーCEO)

2021年03月18日 公開 2022年10月12日 更新

著者が提言する「10兆円基金」の意義

著者は国家100年の計として、10兆円基金を提言しています。その内容を紹介します。国家の研究力強化のため、10兆円の基金を設立します。なお、以降の年度はもとの基金の運用益によりまかなうため、新たな資金は原則として必要ありません。

世界トップクラスの運用プロフェッショナルにより、年率7%以上の運用益をめざします。ハーバード大学では年率10%程度で基金を運用していることからも、不可能な水準ではないようです。

初年度で言えば、10兆円に対する7%として7,000億円程度が運用益となります。その半分は基金を増やす方にまわします。そのため、順調に運用が進めば年々運用益は複利で増えていきます。

そして、運用益の残りの半分を大学教授等の研究者の人件費や、人材育成のための学費補助、施設のリノベーションにまわします。10兆円基金構想の骨格は以上です。

いかがでしょう。驚くほどシンプルな提言だと思いませんか? 経営改革案や変革案で本当に優れたものができたときは、シンプルで力強い提言になることが多いものです。国家というスケールの構想がこのシンプルさにまとめられていることに、大きな驚きがありました。

そしてこの提言は政府を動かしていきます。2021年度政府予算案に組み込まれ、数年で10兆円規模に拡大していくと言われています。国家を動かす力として、きっと本書も大きな役割を果たしたのでしょう。

著者のような使命感を持った人がいて、それを支える周りの方がいるときに、変革が起こるように思います。その変革の結果は誰にもわかりませんが、少なくとも私たちに希望をもたらしてくれる取り組みだと感じています。

 

未来は後進のためではなく、“私たちのもの”

10兆円基金の他にも、社会保障費の一部を研究者や若者にまわすことで、未来に投資していくことなどが提言されています。

著者は我々が作っていくべきは、「残すに値する未来」という表現を使っています。私たちの子供たちは、もっと希望にあふれた国家に育てられ、活躍の場を与えられるべきだ、ということだと理解しています。

著者のストーリーにも共感します。さらに加えれば、これからは人生100年時代です。読者が選ぶビジネス書グランプリのリベラルアーツ賞に輝いた『LIFESPAN』では、私たちはもっと長生きする、というよりも老化すらコントロールできるかもしれない未来が語られています。

それもハーバード大学の研究成果をもとにした話です。研究が順調に進めば、寿命は100歳をはるかに超えると言われています。

そうすると、私たちが残そうとしている未来に、自分たち自身も参加する可能性があります。『シン・ニホン』が残そうと願う希望ある未来に、私たちも生きているかもしれない、と考えれば自分ごとになっていきます。

年齢にもよりますが、私たちは十年から数十年をキャリアの残り期間ととらえがちです。しかし、それが50年か100年、場合によってはもっと長いものを想像した時に、未来の課題は私たち自身の課題になります。

未来に何を残していくのかは、慈善活動ではなく、自分たちにとって直接恩恵が得られる活動になります。

今は、国家を見限り、個人として満たされていれば良いと考えている人の方が多いかもしれません。それでも、将来が暗いよりは明るく、貧しいよりは豊かで、衰退よりは成長している方が、人をうまく導いてくれるように思います。

今の日本にとって、高度経済成長期における池田内閣の「国民所得倍増計画」や、フランス革命前夜のジャン=ジャック・ルソーの『社会契約論』のような、人を導く力を持った一冊です。ぜひ手に取っていただき、大きな動きを体感いただければと願います。

 

著者紹介

フライヤー(flier)

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