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ホームレスは「自己責任」でいいのか? 14歳で痛感した社会の“無関心”

川口加奈(認定NPO法人Homedoor理事長)

2021年04月29日 公開 2023年01月11日 更新

ホームレスの支援を行う、認定NPO法人Homedoor(ホームドア)理事長の川口加奈氏は、14歳の時に参加した釜ヶ崎(大阪市西成区)の炊き出しで出合った元ホームレスの“おっちゃん”に大きな衝撃を受けた。

そのおっちゃんの生まれ育った家は貧しく、中卒で日雇い労働をして生計を立てる外なかった。しかし50歳を過ぎて体力などの問題から仕事を与えてもらえず、困窮してしまったという。

川口氏は、何らかの事情を抱えてホームレスになった人に「やり直す」チャンスが与えられない社会を疑問に思い、その頃から小さなアクションを始めた。

現在、Homedoorは“ホームレス状態の人が撮影した写真集”の出版を目指したクラウドファンディング(カメラマンはホームレスのおっちゃんたち!写真集出版で支援の輪を広げたい。)を行っている。ホームレスの方の目線で撮影された個性ある写真で、この課題を理解してもらうきっかけに繋げたいという。

そんな川口氏の著書『14歳で"おっちゃん"と出会ってから、15年考えつづけてやっと見つけた「働く意味」』(ダイヤモンド社)では、中学時代に直面した“ホームレスに対する世間の偏見”について振り返る。

※本稿は、川口加奈 著『14歳で"おっちゃん"と出会ってから、15年考えつづけてやっと見つけた「働く意味」』(ダイヤモンド社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

「自己責任」で片づける世の中の怖さ

炊き出しで出会ったおっちゃんたちはおっちゃんたちなりに、がんばっている気もした。

「じゃあなんでホームレスのままなんだろう?」

自分の頭で考えるには限界を感じ、ホームレス問題について調べはじめた。すると、ある新聞記事を見つけた。

「ホームレス焼死 少年逮捕」

こんな見出しから始まる新聞記事には、私と同世代の中高生が、ホームレスの人を襲撃して殺したという事実が書かれていた。なんと私と同い年の少年もいた。

亡くなった方は、足が不自由で持病もあって仕事を辞めざるを得ず、2年前から兵庫県姫路市でホームレスをしていたそうだ。テントで寝ていたところに火炎瓶を投げ込まれ、焼死した。驚いたのが、少年たちは足が不自由であることを認識したうえで、火炎瓶を投げ込んでいたことだった。

他にも残虐な事件が毎月のように全国各地で起きていた。路上で寝ていたら、5人の少年に囲まれて殴る蹴るの暴行を受けて亡くなってしまった方。熱湯をかけられ、全身を火傷してしまった方。鉄パイプや角材で殴打されて亡くなってしまった方。

その方たちは、どんな気持ちで亡くなったんだろう。私は思いをめぐらせた。

寝ていたら、いきなりテントが燃えている。でも足が不自由で逃げることもできない。
寝ていたら、少年たちに囲まれている。わけもわからず殴りつづけられる。

ホームレスだから。路上で寝ているから。

それだけの理由で殺されてしまう日本って嫌だな、そう思った。

さらに事件を調べていくと、事件を起こした少年たちの供述には、こうあった。

「社会のゴミを掃除するという感覚だった」
「人間のくずなので、死んでもいいと思った」

私は、その少年少女たちの気持ちがなんとなくわかった。わかっちゃいけないはずだけど、わかった。私も、炊き出しに参加するまではそちら側のものの考え方をしていたからだ。

――自己責任じゃないの?
――怠けているからホームレスになったんじゃないの?

でも今は、そうではないとわかる。ホームレスになるには、ならざるを得ないだけの理由があるのだと。

では、私とその少年たちにどんな違いがあったのだろうか。

ストレスがたまっていたか、いなかったかの違い?
襲撃するような友達がいたか、いなかったかの違い?

そうではなく、それは問題を適切に知る機会が「あった」か「なかった」かの差ではないか。好奇心からとはいえ、私はたまたま炊き出しに参加することができ、知ることができた。

じゃあ知って終わりなのか。そうじゃないんじゃないか。知ったからには「知ったなりの責任」というのが実は発生しているんじゃないか。そんな気がした。

 

全校集会で志願の5分間スピーチ。結果は……

知ったなりの責任を果たしたい。そこで思いついたのが、ホームレス問題を伝えることだった。

学校の先生が、「ホームレスの人を襲ってはいけません」と言うよりも、友達が「ホームレスの人ってこういう人なんだよ」と言うほうが伝わるんじゃないかと思った。生まれて初めてかもしれない。私だからこそできる、私がしたほうがうまくいく。そんなことを見つけられたのだ。

そこで物は試しと、まずは自分の学校で友達に伝えようと考えた。時はちょうど冬休み。休み明けの全校集会で、ホームレス問題について発表しようと企んだ。

しかも、冬休みの作文の宿題が出されていたので、炊き出しに参加した感想とホームレス問題について書いたら一石二鳥。早速書き上げた作文を持って、私は先生の元を訪ねた。

「今度の全校集会、私に5分、時間をください」

先生は非常に驚いていた。あまり真面目でもないし、目立つ存在でもない生徒が、急にそんなことを言い出したからだ。全校集会もコンテンツがいっぱいで時間が取れないと渋る先生を前に、「どうしても読みたいんです」と繰り返し、「では、クラブなどの活動発表をする時間があるから、そこで発表してください」と言われた。

このエピソードを披露したあとで書くのもなんだが、実は私はシャイで、人前で話すという経験はそのときまで皆無だった。文才もないほうで、読書感想文なんていつも落選。だから、どう話せばホームレス問題がより伝わるのか、一言一句にまでこだわり、徹夜で読む練習もした。

そしてとうとう、発表のときがやってきた。しーんと静まり返っている集会の場で、私はその緊張に耐えきれず、声を震わせながら懸命に作文を読んだ。

作文も後半に入ったところだろうか、少し余裕が出てきて、ふと、作文用紙から顔を上げた。すると、友達はみんな爆睡。全校集会は昼寝の時間となっていたのだ。

怒りがこみ上げてきた。こっちは徹夜で練習してまで作文を読んでいるのに、なんで寝ているんだ――。ただ、寝ている人を責められない自分もいた。いつもは私も、全校集会では爆睡する側だったからだ。

意気消沈しながら、クラスに帰った。そうだ、学級委員長もしている真面目なあの子なら聞いていたかもしれないと、声をかけた。

「私の話、どうだった?」
「え?どうせ自業自得やん」

全然伝わっていなかった。自業自得ではない理由を私は説明するも、友達は聞く耳を持たないという感じで何も伝わらない。何よりまだ、私も自信がなかった。

本当に、自己責任じゃないのかな? もっとがんばればなんとかなるんじゃないかな? そんな思いがまだ拭ぬぐいきれていなかったのだ。

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「誰かがきっとやってくれる」 その「誰か」って誰?

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