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「ふざけるな!」と凄む男性から逃れ温泉地へ…苦難続きの経営者を支えた“愛犬の力”

伊藤眞寿子(「リトルモナ」オーナー)、吉澤恵理(医療ジャーナリスト)

2021年06月30日 公開 2022年07月05日 更新

 

東京に戻り、必死に資金を集めて経営者に

東京へ帰った伊藤さんは、奇跡の出会いを果たす。

「東京に戻り、街を歩いていたら昔働いていた恵比寿のバーのママにばったり会って、ママが『いま、何してるの?』というので、それまでの話をしたら『それなら店に戻ってくれば?』といってくれました。ママの言葉に甘えて働くことにしました」

恵比寿のバーで働き、落ち着きを取り戻したようにも見えたが、心の内は違っていた。

「『自分の人生はまだまだ。これで終わるか』いつもそう思っていました。40歳を過ぎてその思いがますます強くなり、自分の店を出そうと決めました」

そう決めたものの資金が全く足りない状況だったため、周囲には話さず、黙々と準備を始めた。

「当時は社会的信用もなく、銀行からお金を借りることもできませんでした。それでも諦めたくなかったので、朝は朝6時30分から11時まで駅ビルの掃除のアルバイトをして、家に帰り仮眠をして、夕方からバーの仕事に行きました」

お金を貯めるため、極力、出費を削り、一心不乱に働いた。バーで働く女性のイメージからはかけ離れた地味な生活を続け、ようやく、渋谷コスモ館にスナック ネオンをオープンすることができた。

オープンの日、沢山の人が祝福に訪れ、強かった伊藤さんもその日ばかりは嬉しさに泣いた。

 

どんな時も「心の支え」で居てくれたのは

離婚後から独立まで紆余曲折あったが、どんなに辛い時でも人に弱音を漏らすことはなかった。伊藤さんが、一人で頑張ってこれたのは、心の支えになる「愛犬」の存在があったからだ。

「犬は、私の気持ちをいつも感じ取ってくれます。辛い時はそっとそばに寄り添い、嬉しい時は一緒にはしゃぐ、まさに異体同心です。私のキャラではないので、周囲に愛犬の話はあまりしてきませんでしたが、本当に愛犬の存在が私を支えてくれました。

渋谷でスナックの経営を始め、多くの人に助けられ、軌道に乗せることができました。そして、以前からの夢だった『犬と楽しめるレストラン』をオープンすることを決めました。念願の夢をかなえることができると嬉しさでいっぱいでした」

希望に溢れた伊藤さんとは対照的に周囲からは反対の声が上がった。

「賛成してくれる人も大勢いましたが、中には、『せっかく苦労して軌道に乗せた店が、レストランの赤字を埋めることになったら、経営が行き詰まるから止めたほうがいい』と言う人も。

どちらの言葉も私のためを思って言ってくれているものでした。だけど、私は、失敗も全く怖くありませんでした。夢に挑戦しない方が後悔する...だから、前進あるのみでした」

そして、2017年12月、東京目黒区自由が丘に愛犬と楽しめるイタリアンレストラン「リトル・モナ」はオープンした。

「なかなか客足が伸びない時期もあり、試行錯誤しながらのスタートでしたが、多くの友人や地域の人が立ち寄ってくれる店へと成長しました。店が軌道にのり、これからというとき、コロナウイルスの感染拡大で休業を強いられた時期もありますが、現在はランチ営業を中心に宅配にも力を入れています」

コロナ収束後は、愛犬家の交流の場となるようさらに事業を広げたいとの夢がある。

「ドックウェアのアパレルブランド『リトル・モナ』を立ち上げることが夢です。人生は最後にどうなっているかだと思います。いつまでも『まだまだ』という気持ちを捨てずにこれからも挑戦していきます」

【吉澤恵理(よしざわ・えり/薬剤師、医療ジャーナリスト】
1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業(現、東北医科薬科大学)。薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

 

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