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新婚の頃は優しかったのに…産婦人科医が明かす「産後に妻が別人になってしまう理由」

東野純彦(東野産婦人科院長)

2021年06月11日 公開

あんなにやさしかった妻がどうして…育児ストレスで大変とはいえ、まるで人が変わったように妻が攻撃的になっている。自分が何かやっちゃった?産婦人科医の東野純彦さんは、産後の妻の事情について男性はもっと知るべきだと警鐘を鳴らす。

※本稿は、東野純彦著『知っておくべき産後の妻のこと』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

 

「敵対意識」は「愛情ホルモン」の裏返し

産後、妻の心情の変化に関わるオキシトシンという女性ホルモンがあります。オキシトシンは産気づいたときに子宮をぎゅっと収縮させる役割を持ち、出産には欠かせません。

産後間もない母親はこのオキシトシンの分泌量が盛んになり、授乳中など子どもと密着してゆっくりした時間を過ごしている間に、よく働いていることが、あらゆる研究から明らかになっています。

別名「愛情ホルモン」とも呼ばれ、このオキシトシンが分泌されることで「母として子どもを愛し、守っていこう」という強い気持ちが芽生えるのです。一方で、男性には子どもができてもホルモンの変化が生じないため、出産直後の時点では妻と同じレベルで愛情を持つことができません。

妻からすると「なんでそんなに家族や子どものことを考えられないの?」と思えてしまい、苛立ちや怒りの感情が湧き、やがて夫に対し敵対意識が生じることがあります。

実は、この「敵対意識」を引き出すのもオキシトシンの仕業です。オキシトシンと攻撃性の関連について、カリフォルニア州のチャップマン大学でこのような実験が行われました。

実験に参加したのは40人の母親です。そのうち20人には、オキシトシンの分泌を高めるために実験前に授乳をしてもらい、「オキシトシンが多いグループ」と「オキシトシンが少ないグループ」に分けます。

そして、実験参加者には事前に仕掛け人と対面してもらいます。仕掛け人にはわざと失礼な態度を取ってもらい、母親に不快な印象を与えておきます。その後母親たちには「勝利すれば相手に嫌がらせのブザーを鳴らせる」というルールのもと、仕掛け人の女性とゲームで対戦してもらいます。

ブザーの大きさや長さは選択でき、相手への嫌がらせがひどければひどいほど攻撃性が高いと判断できます。実験の結果、「オキシトシンが少ないグループ」の母親に比べて「オキシトシンが多いグループ」の母親には強い攻撃性が見られ、ブザーの音量は1.5倍大きく、鳴らす時間は1.3倍長かったのです。

 

悪気はなくても妻をイライラさせる理由

前述したように、オキシトシンは「愛情ホルモン」と呼ばれ、絆を強める役目があります。しかし、その愛情や絆を邪魔する相手に対しては、攻撃性を高める作用があることが分かったのです。わが子への愛情が深まるのと同時に「わが子を守ろう」と母親の攻撃性をも高めてしまう作用があるのです。

そのため、産後必死に育児に取り組む自分に比べて、夫が悠長に構えているように見えると、それだけで夫を敵と見なしてしまうのです。1日中育児でヘトヘトになっているなか、やっとの思いで作った料理に対し「これだけ?」と思わず言ってしまう。

子どもが泣いているのを見て「なんで泣いているの?」と他人事のように言ってしまう。「育休って良いよな」と、まるで妻がラクをしているかのような言葉を発してしまう。

こういった言動を取った結果、妻は夫に対し攻撃的に責め立てる口調になったり、ヒステリックになったりするのです。男性が「産後、妻がおかしくなってしまった」と思うのも無理はありません。

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「産後の記憶」はずっと残る

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