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生き方

思春期の指導がカギ…五輪、甲子園...大舞台で10代が物怖じしない理由

仁志敏久(横浜DeNAベイスターズファーム監督)

2021年08月16日 公開 2022年06月09日 更新

 

上達する人は「目標」が明確

ひとたびユニフォームを着て集まれば、一人ひとり与えられた役割があります。

チームの道具管理を任せ、持ち運びは重いものでも、なるべく私たちは手伝いません。責任をもって管理することや重い荷物を仲間とどう運んだらいいのかを考え、自分の手が空いたらほかの子を手伝うなどを率先してできるようにと見守っています。

もちろん、人手が足りなければ私たちも手伝うのですが、すぐに「代わります」と言って駆けつけてくる子もいます。周りの状況を見て、ほかに何かできないかと考えられることも、立派な自立です。

夜の食事が終わると、子供たちは素振りなどの個人練習をしに外へ出ます。私たちがやらせているわけではなく、子供たちみずからがやりたいと言ってきます。

なかには人がやるから自分も、という子もいるので、そうした子には「無理しなくていいよ」と毎回言うのですが、さすがに自分だけやらないのはバツが悪いのか、結局全員でやることに。そんな内心もあってか、ここでも子供たちの性格が表れます。

最初は真面目にバットを振っているのですが、誰かが飽きておしゃべりが始まると1人、また1人と引き込まれていき、結局数人のおしゃべりの輪ができてお遊びがスタート。

こちらとしては、だから「やりたい子だけやりなさい」と言っているのですが、そこは子供なので仕方のないところ。とりあえずは放っておき、ある程度のところで「終わったら帰れよ」と声をかけます。

ここでも1人が帰り出すと、「オレも、オレも」となることがほとんど。しかし、そんななかでも黙々と素振りやシャドーピッチングをしている子もいます。

私たちが長い時間近くにいると、"見ているからやらなきゃ"となりがちなので、まんべんなく見て回って言葉をかけているのですが、なかにはそれとは関係なく練習していて、いつも最後まで帰らない子もいます。

性格と言えばそうなのですが、目的意識を強くもち、目標が明確である子の傾向とも言えます。そういう子は家でも同じ調子で練習しているようで、家族の協力や兄姉の影響というのが共通しています。

練習は、やったからといって試合などで的確に実践できるわけではありません。しかし、一つ言えるのは、そういった労力を費やしてでも上手くなりたいと考えているからこそ上達するのだということ。

上手くなりたい選手にとって、それは「やらされる努力」ではなく、みずから「必要」だと思ってやっているにすぎず、疲れるかどうか、人が見ているかどうかなどは関係ないのです。

「成長したい」「上手くなりたい」という的確な目標がある子は周囲の状況に左右されない強さをもっています。これこそが上達の原動力。その姿を見ているだけでも少し先の将来が見える。選手としても人としてもそんな強さがあれば、誰よりも前に進めるのだと思います。

野球というスポーツはとかく監督の存在がクローズアップされ、チームの象徴のように受け取られがちですが、いざ試合が始まれば誰も助けてはくれません。作戦的な指示はあっても、ボールを目の前にした時、どう動くのか、どう対処するのかは選手の判断で決まります。

自信をもって判断するための準備は、日常からしか生まれない。普段から「自分ならどうするか」「こんな時はどうするか」とイメージする習慣をもっているかどうか。

だからこその「自立」であり、自分がいまやるべきことは何かを自覚する日はいずれ誰にでも訪れます。そのことに気づくきっかけを早い段階で作れることが、その後の競技人としての成長にもかかわってくるでしょう。

 

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