脳は日々使っている機能だけを残す
しかしながら、そのままでは生きづらいので、8歳くらいまでに、ミラーニューロンの数を劇的に減らします。そのとき、何の機能を残すのか?
実は、親との日頃のコミュニケーションで使っているものだけを、脳が学習して残していくのです。
たとえば、ときどき母と子が目と目を合わせて微笑み合ったりすれば、「人と目と目を合わせて微笑み合う」機能が残ります。思いどおりにいかなくて悲しい思いをしたとき、親が一緒に悲しんで慰めてくれれば、「思いやりの所作」が身につきます。
一方で、日頃スマートフォンに夢中でそっぽを向き、子どもがコップを倒したときにはイラついて怒鳴る、そんなふうに接していたら、脳が、そういうコミュニケーション手法を学んでしまうのです。
共感力を育てるためのポイント(1)微笑み合う
何でもないときに、子どもと目を合わせて、微笑むことを習慣にしましょう。授乳中に目と目を合わせる「微笑み合い」は、実は、その大事な一歩。そっぽを向く「スマホ授乳」は、本当にもったいないと思います。「それ、やっちゃった」という方も、8歳までなら、まだまだ間に合います。
母になったら「女優」になる
手をつないで一緒に歩く。絵本を読み聞かせる。食事をする。添い寝をする。そんなとき、ときどき、子どもの目を見て微笑みましょう。保育園や幼稚園に迎えに行ったときも、学校から帰ってきた子どもを迎えるときも、まずは優しい笑顔で。これを習慣にすれば、柔和な笑顔で人と接することができるコミュニケーションの達人に育ちます。
親にだって、だるいときも、イラつくときもあるでしょうが、親になった以上、「女優」「俳優」になる必要があると思います。目を合わせるのは小言を言うときだけ、しかも尖った顔をして。それでは、常にイラッとした顔で人を見る大人に育ってしまいます。脳は、学習したとおりに出力してくる装置なのですから。
共感力を育てるためのポイント(2)一緒に悲しむ
子どもの思いどおりにしてあげられないとき、せめて、一緒に悲しんであげましょう。いろいろなことを吸収しようと好奇心がほとばしる幼子に、「言うことを聞かない」と言って、なじったり叱ったりするのは酷だと思います。また、将来の好奇心の芽を摘むことにもなりかねません。
親がしてくれたことを子もするようになる
先日、わが家のおよめちゃんが、こんなことを言いました。
「地下鉄の入り口で、電車に乗りたいと泣く小さな男の子と、そんなこと言ってると置いてくよ、と息巻いている両親とおばあちゃんを見た。私も、そんなふうに育ってきたから、黒川家におよめに来なかったら、きっと、自分の子に同じようにしてたと思う。でも、今はわかる。お母さんなら、絶対にそんなことしないでしょう?」
私は息子が幼い頃、「もっと電車に乗りたい」と泣くわが子を抱きしめて、「ママももっと乗せてあげたい」と一緒に泣いたことがありました。
息子は、30歳になる今でも、私の心の痛みに優しく寄り添ってくれます。