認知症になると“口座凍結”の恐れも...親が元気なうちから始める「相続対策」
2021年09月06日 公開 2022年03月03日 更新
認知症になると、銀行の手続きや契約行為など色々なことができなくなってしまいます。親が認知症になっても困らないように、元気なうちに"できる対策"を講じておくのが賢明です。
ファイナンシャルプランナーの福一由紀氏がお金にまつわる制度や手続きを分かり易く説明します。
※本稿は、『PHPくらしラク~る♪』2021年9月号より、内容を一部抜粋・編集したものです。
親が認知症になってしまう前にしておきたい「手続きと制度」
制度を知り、家族で相談しながら計画的に手続きを進めましょう。ここでは3つ紹介します。
(1)「代理人カード」の作成
銀行口座の凍結を回避できる
(2)「任意後見制度」
不動産の売却が可能になる
(3)「民事(家族)信託制度」
財産管理、契約行為が可能になる
(1)は取引先の銀行窓口で、(2)と(3)は、司法書士などの専門家と相談して手続きを行ないましょう。
困る前に先手を。お金の話をする機会を持つことから
認知症になると本人の判断能力が落ち、日常の生活に支障をきたします。家族などの介護サポートを受けながら生活することになりますが、家族でも代行ができなくなる手続きがあります。万が一、親が認知症になっても困った事態にならないよう、事前にできる対策があります。
銀行や証券会社の口座は、本人が認知症とわかると凍結される可能性があります。これを回避するためには、「代理人カード」を事前に作っておきましょう。子や配偶者などが本人に代わって預貯金の出し入れや株の売買ができるようになります。
銀行や証券会社によって手続きなども異なりますので、まずは窓口などに問い合わせを。その前に、銀行などの口座情報、印鑑やキャッシュカードの場所、暗証番号などを聞いておくことも大切です。
相続が発生した際に遺言書が無い場合は、相続人で話し合う遺産分割協議が必要となります。この時、相続人の中に1人でも認知症の人がいると、協議ができなくなります。家族全員で遺言書を準備しておくと安心です。
自宅などの不動産の売却もできなくなります。売却資金で老人ホームへ入居しようと予定していたら大変。このようなことを避けるには、「任意後見制度」を使うのが有効です。
認知症になってしまった後に資産管理などをするには、法定後見制度を利用するしかありません。しかし、法定後見制度は、基本的に財産維持が目的。不動産の売却などは原則としてできません。これに対して「任意後見制度」は、認知症になる前に、後見人を自分で指定し、どのように財産を管理するかや、どんな時に不動産を売却するか、などを決めておけます。
また、賃貸物件などを持っている場合、認知症になってしまうと修繕などの契約もできないことに。この場合は、「民事(家族)信託制度」を利用すると有効です。判断ができるうちに、託したい財産を、指定した人に託します。
託された人は取り決めの内容に従って、財産を管理します。その財産に対する契約行為なども可能となります。紹介した「任意後見制度」や「民事(家族)信託」は契約内容をしっかりと決めることが大切です。司法書士などの専門家と相談して手続きをすると安心です。困った事態になる前に、できることを家族で話し合えると良いですね。