「お前が言うな」の大合唱に? 下に説く前に上司が見直すべき心理的安全性
2021年09月16日 公開 2022年06月02日 更新
最近耳にすることが増えた「心理的安全性」。答えのない時代に、チーム・組織において対話や多様性を活かした集合知を武器にするためのキーワードとして、重要視されている。
組織の変革を目指して声高に心理的安全性を唱えるリーダーもいる中、2020年に上梓した『心理的安全性のつくりかた』が「HRアワード2021 書籍部門」にも入賞した心理的安全性の研究者、石井遼介氏は、そうしたリーダーがチーム・組織を変えていくうえで重要となる2つの視点を指摘する。
※本記事は、石井遼介 著『心理的安全性のつくりかた』(日本能率協会マネジメントセンター)より、一部を抜粋編集したものです。
あなたの行動は、他人のきっかけやみかえり
「さあ、これから自分のチームや組織に心理的安全性をもたらそう!」という意志を持って行動しようとする時、役職や地位に関わらず、あなたは組織・チームに心理的安全性をもたらすリーダーです。リーダーは時に孤独ですが、組織に心理的安全性をもたらす仕事は、それでも達成する価値のある仕事です。
そのような心理的安全性を導くリーダーとしてのあなたには、2つの考え方を導入していただきたいと思っています。
一つ目は、自分自身を問題の中に入れて考えてみましょうということです。
つい私たちは、いろいろなことを思考し、またそれにとらわれてしまいます。「あの声の大きい先輩が、ウチの職場に心理的安全性をもたらす上で障害だ」とか、「この新人はまだまだスキルが低くて、私は困らされている」とか、自分を問題の外に置いて、他人の中に問題を見つけるのが、人間は得意です。
しかし、あなた自身の「行動」は、他の人のきっかけやみかえりになっているのです。
同じ職場やチームで「相手に問題がある。それに私は困っている」と思うとき、実はあなたは問題の一部となっているわけです。
例えば、「若手が自分の意見を持たない」と、若手メンバーの中に問題を見ると、つい「自分自身は、若手が発言した直後に適切な反応やみかえりを与えられたか」という観点を忘れがちです。
そして、あなたを問題の一部へ組み込めたなら、あなたの行動を柔軟に変えることで相手も変わるかもしれません。
たとえ相手が「本当に」悪かったとしても、自分を問題の外に置いて相手の悪さを指摘し、非難することが、相手の行動に影響を与えることはほとんどありません。
少なくとも、あなたが「問題だと考える」相手から深い信頼を得られている状況で無い限り、これらは残念ながら役に立たない行動なのです。