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生き方

実は相手のことには興味なし? 「一目惚ればかりする人」の共通点

加藤諦三(早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員)

2021年12月17日 公開 2023年07月26日 更新

恋が実ったようで実っていない。そういった恋がある。淋しさから逃れるために恋愛したり、結婚したりするから恋が実らない。そして失敗すると驚いたことに「相手が悪い」と考える。

数々の人生相談を受けてきた加藤諦三氏は、著書『なぜか恋愛がうまくいかない人の心理学』にて、「愚かな恋」に陥ってしまう人の特徴を示す。

心理的な問題を抱える人同士の恋愛に起こりがちな傾向とは。同書より詳しく解説していく。

※本稿は、加藤諦三 著『なぜか恋愛がうまくいかない人の心理学』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

刃傷沙汰まで引き起こす「愚かな恋」の心もよう

一般的にこの「愚かな恋」は、日が経つにしたがって次第に熱の上げ方が二人の間で違ってくる。どちらかが先に冷めてくる。しかし冷めないほうはうるさく相手につきまとう。そしてお互いに「消耗」してしまう。

「最初の興奮が消えて、やがて対立、失望、倦怠が最初の興奮の名残が消してしまう(註5)」

そして熱の冷めた恋人は、おそらくここではじめて「大いなる情熱」と思っていたものが、お互いの単なる束縛欲でしかないということを理解してくるのである。

このようにお互いの熱の上げ方が違ってきたときに、相手は自分を愛していないということに気がついてくる。

時が経ってはじめて、相手が自分を全く愛していないということに気がついてくる。相手は自分を理解していないということに気がついてくる。

この「愚かな恋」は、恋人への関心ではなく、自分の心の願望や、必要性を相手に投影したに過ぎない。孤独を癒したい、性の不満を解消したい等々の必要性、願望である。だから一目惚れなのである。

「愚かな恋」においては、こんな恋愛がしたい、こんな恋人が欲しいという自分の願望が、相手という鏡に映っただけである。その相手という鏡に映った自分の願望を、相手そのものと錯覚する。相手と思っている人間は、自分の願望を相手に外化したに過ぎない。

相手に映った自分の願望を見ているので、相手その人を見てはいない。お互いに相手その人を愛してはいない。熱の冷めた側の恋人は、全体として、この「愚かな恋」の本質が何となく理解できてくる。

すると熱が冷めたということを通り越して、相手が嫌いになる。相手が不愉快な存在になる。それに歩調をあわせて、まだ熱を上げている側の恋人は、憎しみをもってくる。だから「偉大な愛」の後にはすぐに刃傷沙汰が起きるのである。

愚かな恋をしているときには、相手そのものに関心がある訳ではない。相手は何を求めているのか、そうしたことを思いやる優しさはない。

ただとにかく相手を通して、私の欲求を満たしたいというだけである。自分の愛情飢餓感、性的欲求不満、それらを何としても満たしたいということである。しかも、それを愛という名において。

一目惚れというのは、お互いにこうした心の問題を抱えているから起きることである。

孤立感があって、性的欲求不満のような問題を抱えていると、その心の問題を一気に全面的に解決してくれるものがあれば、こんなに有り難いことはない。

それが「一目で依存症」という恋である。

つまりお互いに相手が好きで相手とかかわりあっていくのではない。お互いに自分の心に問題があって、それを解決するためにかかわっていくのである。

しかし勿論のこと、一気に心の問題を解決してくれるような魔法の杖はない。そこでお互いに心に問題を抱えているから、やがてその問題が表面化する。そのときに偉大な愛が憎悪に変わる。

これらの愛は相手を愛しているのではない。相手は関係ない。相手に関心があるわけでもない。とにかく自分の欲求を満たしたいというだけで、相手は関係ない。

まともな人間なら、会って五分と経たないで人を愛することはできない。相手がどんな人だか分からないのだから。相手は何を望んでいるか、相手はどういう人か、五分では分からない。

とにかく恋の始めは自分の憧れを相手に外化していることが多い。だから相手が理想の女性に、あるいは理想の男性に見えるのである。

現実のその人に恋をしているのではなく、自分が作り出した理想の男性に、あるいは理想の女性に恋をしている。

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自分自身が嫌いな人の恋愛がうまくいかない理由

著者紹介

加藤諦三(かとう・たいぞう)

早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員

1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。

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