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仕事

じつは見込みあり?「エクセルデータ破壊おじさん」との付き合い方

カレー沢薫(漫画家・コラムニスト)

2021年11月18日 公開 2024年12月16日 更新

仕事に対しやる気があり、人間関係に繊細なのはいいが、それで健康を害してしまっては無意味。時には、仕事に無感情な人間の姿勢を取り入れ、「どうでもいいことでは悩まないようにする」のも大事なのでは? そんなわけで、新刊『反応したら負け』から、エクセルデータを破壊するオジサンの対処法をお届けしたい。

※本稿は、カレー沢薫著『反応したら負け』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

まだたくさんある「エクセル以前の職場」

今回のテーマは「エクセルデータ破壊おじさん」の対処法である。だがその前に、IT知識がない上司の中では、このエクセルデータ破壊おじさんはレベルが高いほうであることを知っておいていただきたい。

新型コロナウイルスの影響で、私の取引先の多くが「出社しないので請求書をPDFで送ってくれ」と言うようになった。逆に言えば、東京にオフィスを構えているような大きな会社でも、ついこの前まで紙の請求書を郵送で送らせるという風流をやっていたのである。

日本の事務作業が急速にデジタル化し、簡略化したというのは、コロナ禍がもたらした唯一の恩恵と言えるかもしれないが、中には「コロナに負けるな!」という強い意志のもと、未だに「請求書のPDFデータを送るので、プリントアウト後、住所氏名を記入し、押印したものを郵送で送ってください」という、日本の文化を死守しようとする愛国心の強い会社も存在する。

それも87歳の社長と専務(妻)が二人でやっているような会社だけではなく、割と名の知れた会社ですらそんな感じであるため、私が2年余り前に勤めていた地方の中小企業などは99%の請求書が紙であり、うち数%がカーボン紙の心のこもった手書き請求書であった。

しかし、このカーボン紙という「若人にとって未知すぎて逆に新しいアイテム」を使って作られた手書き請求書を笑うことはできない。なぜなら、我が国では「履歴書は手書きの方がやる気が伝わる」という文化がまったく滅んでいないからだ。

そんな会社ならさぞかし「エクセルデータ破壊おじさん」も多いだろうと思うかもしれないが、はっきり言って皆無である。なぜなら、そういう会社のおじさんは「エクセルに触らない」からだ。エクセル以前に机にPCがないのである。「触らずに念だけでエクセルデータを破壊するおじさん」がいるなら、それはもはやライバル会社に送り込んだ方がいい。

 

「エクセルおじさん」は見込みアリ

実際、エクセルなどで書類を作るのは「自分の仕事ではない」と思っているおじさんは多く、女子社員に書類を作らせ、プリントアウトしたものに赤ペンで指摘し、データを修正させ、またプリントアウトさせる儀式を行っている会社は未だに多い。

海外ではすでに「骨董品」として博物館に展示されている「FAX」が日本では現役なのも、チェックするおじさんが高齢なため、確認して欲しい書類をメールで送ろうにも、アドレスどころか個人用PCすら持っていないケースが多いからでもある。

そういうおじさんは「PCは部下に操作させるもの」と思っているので、自分で操作する気も覚える気もないのである。よってまず「エクセルデータ破壊おじさん」は自分でエクセルを操作しようとするだけ偉いと思おう。

世の中にはインターネットエクスプローラー以外に触らないまま定年退職するおじさんが山ほどいる。いわばエクセルデータ破壊おじさんは、料理に興味を持ち始めた小学校低学年の息子みたいなものだ。

当然知識がないから、食材を新鮮な生ゴミに変えたり、キッチンを汚しまくったりと、じっとしておいてくれた方がマシな結果になりやすいが「料理は母親、もしくは将来の嫁がやるものであって自分がすべきことではない」と思い込んでいるよりは、幾分か精神的にはマシである。

そんな息子に対し「それはお母ちゃんがやるからあんたはもう何もするな」とエクセル仕事を全部やるのがよい母親だろうか。確かに「そのほうが早いし確実」だが、それは何もできない男を作り、己の仕事を増やす行動である。

相手はおじさんなので、成長するかはわからないが「私がやっておきます」ではなく、塩と砂糖の違いから説明するように、相手にやる気があるのなら「全角英数字を打つな」から教えるのも大事である。

 

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