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「空気を読もうとして空回りする人」の正しい気配り

カレー沢薫(漫画家・コラムニスト)

2021年12月10日 公開 2024年12月16日 更新

仕事に対しやる気があり、人間関係に繊細なのはいいが、それで健康を害してしまっては無意味。時には、仕事に無感情な人間の姿勢を取り入れ、「どうでもいいことでは悩まないようにする」のも大事なのでは?

そんなわけで、新刊『反応したら負け』から、空気が読めない人の正しい気配りをお届けしたい。

※本稿は、カレー沢薫著『反応したら負け』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

空気を完璧に読める奴などいない

簡単に言えば「空気ってどうやったら読めるんだ?」ということだ。

おそらく空気が読めない奴は、皆が別の話題で盛り上がっている時に、突然こういうことを言い出して「そういうとこだよ」と思われているのだろう。

「空気が読めない奴」は2種類いる。まず、最初から空気を読む気がなく、自分の言いたいことを言う脳と口が直通している奴。そして空気を読もうとして見当違いのことを言ってしまう奴。最後に、空気を肉眼で見ることができない奴だ。

いきなり3種類になってしまったが、ほとんどの人間が3番目だと思う。空気を完璧に読める奴など存在しないのだ。

「空気が読めない」ことに悩んでいる人間は、まず「他人は読めている」と勘違いしている場合が多い。実際は同じように読めてないか、ハナから読む気がない奴の方が多いのだから、まず自分だけ読めてないと思うのをやめよう。

しかし、肉眼では見えなくても「見えないものを見るセンス」に差があるのは確かだ。こう書くと幻覚を見るセンスみたいだが、空気を読むのが上手い奴と下手な奴がいるのは事実である。

センスがない人間が、まずすべきことは、センスのいいことを言おうとすることではなく「黙る訓練」である。「沈黙は金」というのは下ネタではなく、立派な格言である。

センスのないことを言って空気の読めない奴と思われるぐらいなら、黙っていた方がマシなのだ。

しかしこの戦法を取り続けると「しゃべれないコミュ症」が爆誕してしまうのも事実だ。私も完全にこのタイプである。

ただ、おしゃべりクソコミュ障としゃべらないコミュ障どっちがマシか、というと後者なので、「おしゃべりクソコミュ障タイプ」は、とりあえずしゃべらない方にジョブチェンジしたほうがいい。

 

「何か話さなきゃ」という謎の責任感は持つな!

しかし空気を読もうとして空回りするタイプほど「沈黙」に弱かったりする。 エレベーター内で沈黙になったりすると「この沈黙を打破せねば」と焦り、おかしなことを口走ってしまうのだ。

沈黙を破る一声というのは、目立つうえに唐突になりやすいものであり、センスがない奴がやってそう上手くいくものではない。だがノーセンスな奴ほど、この第一声で特攻し玉砕しがちなところがある。

つまり、空気を読もうとして失敗しがちな人間は、他人といる時、「焦り」を感じやすく、焦りからトチくるった発言をしやすいのだ。

どうして焦りがちかというと「この沈黙を打破するのは俺しかいない」など、その場に対し「謎の責任」を感じていることが多いからだ。

「自分を囲む会」とかだったら多少の責任はあるので、無言や「別に…」だけでは怒られるが、そうでなければそこまで自分が身体を張ってその場を何とかしようと思う必要はない。

よって、まず自分はその会話の責任者ではなく平社員の一人にすぎないと思おう。そう思えば、たとえ沈黙になったとしても、それは同じく黙っている奴にも平等に責任があり「自分が先陣をきって何とかせねば」などと思う必要もなくなる。そうすれば、焦りもなくなり、空気も前より正確に読めるようになるのではないだろうか。

そもそもセンスがないのだから、会話の中での地位は平社員ですらなく「バイト」程度だと思っていた方がいい。

バイトが責任者のように発言していたら「なんだコイツ」と思われるのは当然である。バイトはバイトらしく、偉い人が喋り出すのを待って「へえー」とか「マジっすか」と言うところから始めた方がいい。

 

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