前向きな気持ちになれる、脳のリセット法
2012年03月05日 公開 2023年01月05日 更新
新しいものを好む脳の性質を利用する
人間の脳は、新しいものを好むネオフィリア(neophilia)という性質を持っています。この地球上で人間だけが進化と繁栄を得たのは、人間が新しいものを好む性質を持っていたからだといっても過言ではありません。
これは裏を返せば、人間の脳にとっては退屈が一番の敵だということです。もっとも、退屈を感じるということは、その人が成長している証拠でもあります。子どもの頃を思い出していただければ分かるかと思いますが、子どもはすぐに退屈します。子どもの脳がそれだけネオフィリアの性質を強く持ち、新奇のものが脳の栄養素となっている証拠です。
大人でも「いつも楽しいことを探し出しているから、退屈なんてしないよ」という人は、いいでしょう。脳も新しい栄養を摂って成長できているからです。
しかし、特に新しいことをするでもなく毎日を惰性で生きているだけなのに、退屈を感じなくなるとしたら、それはちょっと危険信号です。退屈を退屈と感じない、それは脳の成長が低下気味だからかもしれません。
退屈の空気の中に長い間浸っていると、人間の脳はだんだん退屈に慣れて成長が止まってしまいます。そうならないうちに、自分の退屈感を察知して、ネオフィリアを満足させる行動を新たに見つけ出すことが大切です。
これも子どもと比べることになってしまいますが、幼稚園や小学校、中学校の頃までは、学校の先生や大人たちがいつも新しい課題を与えてくれました。宿題や推薦という形で、新しいテーマを子どもに提供し、子どもはそれらに挑戦することで自身のネオフィリアを満足させてきたのです。
ところが大人になると、ほかの誰かが新しい課題を見つけ出して与えてくれるわけにはいかなくなります。大人は経験がある分、自分で工夫して新しい刺激をつくり出していかなくてはならないのです。
僕の場合は、本を読むことでネオフィリアを満足させています。本は読み始めれば、一瞬で違う世界に連れて行ってくれるものです。また本のいいところは、読む本を替えれば、また別の世界に飛んでいけることです。1冊の本はいつか終わりがくるでしょうが、
この世にある本に終わりはありません。どれだけ僕が読んでも、まだ僕自身のネオフィリアを満足させてくれる本はいくらでもあるということです。僕は同時期に数冊の本を並行して読む癖がありますが、これも1冊の本を読むのに少し飽きたら、別の本を手に取ることができるという、退屈予防のための作戦です。
また、音楽を聴くのもお勧めです。音が流れてきた瞬間、気分はパツと変わります。様様なジャンルの音楽をその日の気分で替えていくことで、音楽を聴くという同じ行動の中でも、気分を変えることができます。
また、最近ではコンピュータを使って簡単に自分で音楽をつくれるようになってきていますので、それらを使って自分で音楽をつくってみるのも面白いと思います。
たとえばアップルが開発・発売しているGarageBand(ガレージバンド)という初心者向きの音楽制作ソフトでは、楽器を練習したり、作曲したり、レコーディングを行うこともできます。その他にも、音声や動画、静止画などを組み合わせたマルチメディアタイトルを制作するためのソフトも充実しています。
今の時代は、かつてのように本を読んだり音楽を聴いたりという受動型の方法ばかりではなく、自ら音楽や動画を制作するなどの能動的な方法を使って、自分で楽しみをつくることができるようになっています。退屈しない方法はいくらでもあり、自分のネオフィリアを満足させられるかどうかは自分の工夫次第なのです。
今、ご紹介した方法はすべてひとりでできることでしたが、人と関わることでもネオフィリアを満足させることはできます。たとえば人との会話は退屈することがありません。会話とは常に未完成で、そこから未知の要素を見出せるからです。
もし、誰かと話していて退屈だと感じるとすれば、それは相手があなたに対して、ある一面しか見せていないからでしょう。その一面だけで付き合っていれば退屈してしまうかもしれませんが、どんな人でも絶対に奥行きと広がりを持っているものです。
その奥行きと広がりをつかめるような会話をこちらが繰り出すことができれば、誰と話していても興味深い時間を過ごすことはできます。
脳は退屈するとどうしても、考えなくてもいいようなネガティブなことを考えてしまう癖があります。退屈しないように生きていくことで、脳を健康に保つこともできるのです。