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若き天才大臣が生まれた理由...台湾政府が目指す「オープンガバメント」

講談社編集部

2022年07月24日 公開

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選挙では勝敗は明確にでる。いかに僅差であろうとも、勝者はすべてを得て、敗者の言い分はひとつも通らない。それが政治の世界である。

けれど、台湾の天才大臣として有名なオードリー・タンが政治の世界に入ったきっかけもまた、その異能ぶりと同様に、まったく趣が異なっていた。

なんと選挙の敗者が、勝者に「このオードリー・タンという人物はすばらしい」と推薦し、勝者がそれを受け入れたというのだ。そのことによって、敗者であった者の思いは引き継がれ、花を開かせることになったという。

台湾の選挙では、なぜそのようなことが起こったのか。その結果として生まれた「オープンガバメント」とは何なのか…彼女の伝記の中から、抜粋して紹介する。

※本稿は石崎洋司著『「オードリー・タン」の誕生 ~だれも取り残さない台湾の天才IT相』〈第2章5 オードリー、大臣になる〉(講談社)より一部抜粋・編集したものです。

【オードリー・タン(唐鳳) PROFILE】1981年台湾・台北市出身。台湾のデジタル担当政務委員(日本の大臣にあたる)。ITやビジネスの分野で大活躍し、「ITの神さま」と称される。33歳でビジネスから引退。2016年、蔡英文政権に史上最年少の34歳で入閣。政府と民主主義のデジタル化を推進している。2019年、アメリカの外交専門誌『フォーリン・ポリシー』のグローバル思想家100に選出。
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大臣就任時に提示した「3つ条件」

2016年1月16日、台湾で、総統と立法委員(日本でいう国会議員)の選挙が行われました。

結果は、蔡英文氏が史上初の女性総統に選ばれ、立法院でも民進党が過半数の議席を獲得。政権を担っていた国民党は敗北しました。

この選挙では、「ひまわり学生運動」で活躍をした、林昶佐も立法委員に立候補して、当選を果たしました。そう、オードリーが大ファンのロックバンド『ソニック』のボーカル、フレディ・リムです。

フレディが選ばれたことは、それまでの強権的な政府ではなく、より開かれた政府を国民がのぞんでいることの表れのひとつでした。そしてその波は、新しい政府作りにも大きな影響を与えることにもなりました。

その象徴的な出来事が、2016年8月、オードリーのデジタル担当政務委員(IT大臣)任命です。

35歳の若さ、トランスジェンダー、長髪のITの神さま……。どれをとっても、史上初の型破りな大臣の誕生です。けれども、変わっているのはそれだけではありません。

オードリーを大臣に推薦したのは、前の国民党政権の女性大臣、蔡玉玲(ジャクリーン・ツァイ)だったこともそのひとつです。

選挙で敗北した側が、政治の世界の敵に「この人は台湾のために働いてくれるすばらしい人材ですよ」と勧める————そんなありえないことを蔡玉玲がしたのは、彼女こそがvTaiwanを作った人だったからです。

vTaiwanの制作でオードリーに協力を求めたとき、蔡はオードリーの人柄や政治に対する考え方に、深く感動していました。

オードリーは、いつも明るくて、他人からよい意見が出てくれば、それを大歓迎して、自分のメンツなどには決してこだわりません。そして、政治に対しては、徹底的に透明性を重んじて、すべてをオープンにしようとするのです。

もともと法律家の蔡は、そんなオードリーこそ、政府に権力が集中しすぎない、開かれた政府づくりに貢献してくれる人だと確信したのです。

こうして、蔡の推薦をもとに、民進党政権もオードリーにIT大臣への就任をお願いしました。それに対するオードリーの返事はこうでした。

「次の3つの条件を受け入れているくれるなら、引きうけましょう」

・行政院(日本の内閣にあたる機関)以外の場所でも仕事をしていいこと。
・出席するすべての会議、イベント、メディア、納税者とのやりとりは、録音や録画をして公開すること。
・だれかに命じることも命じられることもなく、フラットな立場からアドバイスを行うこと。

条件はもちろん、受け入れられました。大臣になるときに書く性別欄には「無」と書きました。

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アジアで初の「同性婚特別法」成立の裏側

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