「マイナス思考」の人ほどビジネスに向いている理由
2012年05月28日 公開 2022年12月26日 更新
経営評論家の金児昭氏は、「マイナス思考の人ほどビジネスに向いている」と語る。一体、その理由は何か。
※本稿は、金児昭 著『仕事が10倍うまくいくマイナス思考』(PHP新書)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
1万分の1の不安に思いを馳せることが大事
私は自他ともに認めるほど、マイナス思考の人間です。いつも物事を悪いほう、悪いほうへと考えてしまいます。たとえば、人を招待して、どこかで待ち合わせる場合は、絶対に先にその場所に行って待っています。
「きっと、電車が遅れるにちがいない」
「待ち合わせ場所が、わかりにくくて、迷ってしまうはずだ」
と考えて、15分も前に着けばちょうどよいところを、気が小さいものですから30分も早く着いてしまったりすることもよくあります。
あまり早くから待っているのもきまりが悪いから、どこかで時間をつぶすつもりでお茶を飲んできて、13分前くらいに待ち合わせ場所に行くと、相手が待っていた、なんてこともあります。
日常生活では、マイナス思考でよかったと思ったことは、ほとんどありません。しかし、ビジネスでは別です。
私は、マイナス思考の人ほどビジネスに向いていると思っています。
というのは、どんなことでも用心する、というくらいでないと、ビジネスでは成功できないからです。ビジネスには、想定外のトラブルがつきものです。悪いことが起きたら、そのときに考えるような対応では手遅れになることがほとんどです。
ですから、事前に問題になりそうなことを予想し、それに対して、準備をしておくことが必要です。その際、リスクを予想できるかどうかは、想像力の問題ですが、マイナス思考の人ほど、様々なリスクに思いを馳せることができます。
私はあるがままでマイナス思考なので、どんどん悪い事態を思いつきます。以前は「これは弱ったな。これでは、落ち込んでしまってなにもできなくなってしまうなあ」とよく思いました。
しかし長年仕事をするなかで、9999が安全で、1すなわち1万分の1を不安だと思ったとき、この1の不安をなくす行動をとることが大事で、むしろそのとき、9999の安全を過大評価してはならないことを学びました。
小さな1の不安が完全に起きないように処置が終わるまで、安心してはなりません。
「きっと悪いことが起きるに違いない」と考える
普通、人は、危険なものやことには近づかないようにするでしょう。マイナス思考の私はさらに、「危険そうかな」「どちらかわからないなあ」くらいのことにも近づきません。普通の人が「もしかしたら、危ないかも」と思うことに対して、「きっと悪いことが起きるに違いない」と考えます。
たとえば、私は電車に乗っていて、同じ車両になんとなく怖そうに見える人や、挙動不審の人が乗り合わせていたら、なるべく避けるようにします。私は、もう歳をとって動きも鈍いですし、力もないということがわかっているので、そういう人をはじめから避けます。
やっかいなもめ事でいやな思いをするのはごめんですし、近頃はいつなんどき、「いやな思い」程度ではすまない惨事が突然降りかからないともかぎりません。
そうした場に出くわすことのないよう、なるべく遠ざかるようにして、たとえ席が空いていてもそういう人の隣に座ったり、すぐ前に立ったりすることはありません。
何事も用心するに越したことはありません。
これは仕事にも通じることです。新規の会社と取引をする、新しい地域に進出する、こうしたときに、リスクをとらない判断を下せなければなりません。
マイナス思考だと、とにもかくにも自分を守る、自分の会社を守る、自分の同僚を守る、自分の家族を守る、ということに集中できます。そしてそれがきちんとできれば、御の字だと思います。
ポジティブな性格の人はリスクに対しても、ラフになりがちです。マイナス思考の人は、あえてプラス思考になろうとしなくてもよいと思います。