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「高収入の仕事ほど奪われていく」AIと戦わなくていい分野の仕事とは何か?

大塚あみ(ソフトウェアエンジニア)

2025年04月14日 公開

「高収入の仕事ほど奪われていく」AIと戦わなくていい分野の仕事とは何か?

怠け者の大学4年生がChatGPTに出会い、ノリでプログラミングに取り組んだら、教授に褒められ、海外論文が認められ、ソフトウェアエンジニアとして就職できた――。

大学時代にChatGPTを使って毎日ゲームを作る「#100日チャレンジ」を成功させ、その経験を本にまとめた大塚あみさん。本稿では、大塚さんに「生成AIが社会にもたらす影響」についてお話を聞きました。

 

生成AIが浸透するには、まだハードルがある

100日チャレンジ

――大塚さんはご自身を「生成AIに育てられた第1世代」と仰っていますね。大学生の間ではAIの利用は当たり前になっているのでしょうか?

実はあまり使われていません...(笑)。実際ネットで言われてるほど、みんな使っていないんです。レポート作成に生成AIを使ってる人たちの、多分大半はどう見ても生成AIが作った出来のものになっているので弾かれてしまいます。そこを学生もよく理解しているので諦めて自分でやっているのが現実だったりします。

――それは意外でした! プライベートで使っている人もあまりいないのでしょうか?

私は使っていますけど、普通の人は使わないと思います。世の中で「流行っている」と表現されるのは、だいたい1~2割に普及した段階と言われているので、生成AIはまだその段階なのではないかと思っています。いずれは浸透していくでしょうけど、まだハードルがいくつもあると思いますね。

いまのChatGPTは、専門家が自分の仕事をうまく進めるためのツールとしてはものすごく役に立つんです。ただ、ChatGPTについては使い手側に数百時間の訓練がないと使い物になりません。AIの使い方をまったく知らない人が自分の思ったことをそのまま作る、みたいなことはまだ出来る状態ではありません。

例えるなら、エクセルでグラフを作るときに、グラフの作り方をわかってる人の場合は3秒でできます。でもグラフの作り方を知らない人の場合は、おそらく変なグラフができてしまいますね。それと同じことが生成AIでも起きます。

――生成AIを使っていると、出してくる文章の質にも毎回差があるなと感じています。

そうですね。ただ、それは人間の書く文章にも同じことが言えるんじゃないでしょうか。下手だと批判される文章でも、評価してくれる人もいたりします。そこについてはどうしようもないとは思っています。それに、5回試したら1つぐらいは自分の好きなものが出てくるっていうのがChatGPTのいいところだと思っています。

 

「AIが仕事を奪う」は正しいようで正しくない

――AIがどう変わったら、みんなが使う状況になると思いますか?

難しいですね。そもそもAIを使わなくてもいい職業の人はたくさんいますし、ChatGPTが進化したとしてもユーザーはそこまで増加しないのではないでしょうか。あくまで一つの分野における専門家が自分の知識を使って、その仕事量を10倍とか100倍にするようなツールであり続けるんじゃないかと思ってます。

――最近は"AIが仕事を奪う"ことを危惧する声をよく聞きます。大塚さんは、そうはならないと思いますか。

それは正しいようで正しくなくて、AIが仕事を奪うのではなく、AIを高度に使いこなす個人が仕事を奪っていくんですよ。

『アイ,ロボット』という映画を例に、ロボットが人間の仕事を奪っていくとよく言われていますが、あのロボットが働いて得た利益は、ロボットを所有しているオーナーのもとにいくわけです。ロボットは、オーナーの指示した範囲内での仕事しかやっていません。

AIが自分の意思を持って活動していくことは考えられないですし、当面は「AIに仕事を奪われる」ようなことは考えなくてもいいんじゃないかなと思います。

ひとつ考えるとすれば、AIを管理している個人がいて、その個人に仕事を奪われることを考慮した上で、その人にどう対応していくかということを考えた方がいいのではないでしょうか。

――高度なスキルを身につけて、AIを管理する側にならないといけないのか焦っている人も多いかもしれません。

2つの道に別れるんじゃないかなと思ってます。ひとつは"AIを管理して他の人の仕事を奪っていく立場"になる道。もうひとつは、"AIを用いた個人と戦わなくていい分野で細々と生きていく"という道です。

実際、AIを使っていく分野というのは高収入の仕事に多いんですよ。AIを作る側としても、高収入の仕事を奪いたいので。

逆にAIに代替されない仕事は、おそらく接客業でしょうね。接客業といっても色々あります。マッサージ店も接客業ですし、店舗で商品を紹介する営業的な仕事など、人間が人間に売ることに価値がある接客業は残ると思います。

――もしAIを操って、他人の仕事を奪いにいく立場になりたいと思ったら、どういう道を歩めばいいんでしょう?

その業界の中の上位1%入る、でしょうか(笑)。1%か10%かわかりませんが...。

――それはかなりのいばらの道ですね(笑)。

とにかく、初心者は仕事をしても稼げない時代になってしまうんじゃないかと思ってます。今までは見習いでも雑用的な仕事はたくさんありましたが、生成AIがほとんど何でもできるようになってしまうと、たとえ小さな雑用であってもコスト的にはかなり差があるので。

これまでは誰かに教えてもらいながら仕事をすることができていたけど、そんな非効率なことは誰もやってくれなくなってしまうと思うんですよ。これから就職する人にとってはとても苦しい時代になるんじゃないでしょうか。

 

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