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ストレスが悪化する意外な行動とは? 心理師が教える「セルフケア習慣」3つ

伊藤絵美(洗足ストレスコーピング・サポートオフィス所長/公認心理師)

2023年02月04日 公開 2023年09月05日 更新

 

身体をたたくタッピングやセルフハグもお勧め

先ほども述べた通り、どんなコーピングがその人に適しているかは千差万別。ですが、あえて例を挙げるなら「深くため息をつくこと」などが代表的です。無意識にではなく、意図的に、大きく息を吐いてみてください。

特に「パニック」に近い状態になったときなどは、努めて大げさに息を吐いてみるのが吉。何度も繰り返せば、そのたびごとに心身が落ち着いてくると思います。実は息を吐くことそれ自体に、心身の緊張を和らげる効果があるのです。

また、手を使って自分の身体をトントンと軽くたたく「タッピング」もお勧めの手法です。場所は頭や頬、肩や太ももなど、好みの部位で構いません。

そんなことかと思われるかもしれませんが、規則的な刺激に注意を傾けていると、想像以上に気持ちが落ち着くもの。両腕を胸の前で交差させ、自分で自分をハグすると一番落ち着く、という方もよくいます。

あるいは、触り心地の良い毛布や布団に包まれたり、柔らかいものを抱き締めたりするのも効果的。私の患者さんでも、40代くらいの働き盛りの男性が「実は、大きなぬいぐるみを抱き締めると心が安定する」とおっしゃったことがありました。

 

「今、ここ」に気づくマインドフルネスの効用

伊藤絵美

ここまで見てきた「コーピング」は、主にストレスを感じた心をケアし、落ち着けるための手法です。それに対し、ストレスを受けている状況を客観的に受け止めるための「マインドフルネス」という方法もあります。

マインドフルネスと聞くと「瞑想」をイメージされる方も多いと思いますが、本来は「今、ここ」の自分の状態に意識を向け、それを「良い」「悪い」とジャッジせず受け止めること、およびその練習を意味します。

私たちは、忙しかったり悩みがあったりすると、「今」を客観視する心の余裕を失ってしまうものです。つまり「マインドレス」の状態になってしまうということ。

その状態から意識を「今、ここ」に引き戻し、より自分の状態に気づきやすい自分になるための訓練が「マインドフルネス」なのです。自分の状態に敏感になることは、的確なセルフケアの継続にもつながります。

コーピング同様、マインドフルネスにも色々ありますが、ここではまず、すぐできるものとして「食べるマインドフルネス」を伝授しましょう。

皆さんも、心ここにあらずのときは、ポテチなどを一気に一袋食べてしまう、なんてことがあるのではないでしょうか。ですが、この「食べるマインドフルネス」は、そういった「ヤケ食い」とはまったく別物。大切なのは、とにかく丁寧に「味わう」ことです。

ポテチを食べるにしても、一気に何枚もバリバリ食べるのではなく、一枚ずつ手に取り、色や形を見て、匂いをかぎ、ひと口ずつ食感を確かめます。こうしたことをとにかく「意識的に」行ない、努めて味わいながら食べてみてください。五感を使って味わい尽くすような感覚です。

他にも、コーヒーを飲むときなど何でもない時間に「食べる(飲む)マインドフルネス」を実践していると、次第に「今、ここ」の自分の感情、状態に気がつきやすくなることでしょう。

また、もう一つ「歩くマインドフルネス」もすぐ実践できるお勧めメソッドです。普段歩いているとき、たいていの人は「歩くこと」自体にはほぼ意識を向けませんよね。

だからこそ「歩くマインドフルネス」が効果的なのです。歩くという単純な動作に、あえて意識を集中してみる。それは「今、ここ」に意識を向ける絶好の練習になります。一歩踏み出すごとに「足裏の感覚」や「下半身から脚までの動き」などの感覚に集中してみてください。

他にも「呼吸」に意識を向けたり、生活の中の「音」に集中してみたりするのも、有力なマインドフルネスの方法です。

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「ジャッジをしない」が一番のポイント

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