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孫正義のエネルギー革命 「アジアスーパーグリッド構想」

2012年06月28日 公開

自然エネルギー財団 (会長:孫正義)

PHPビジネス新書『孫正義のエネルギー革命』より》

アジアスーパーグリッド構想とは

 自然エネルギーにシフトしなければならないというのは、すでに国民のコンセンサスと言えます。2011年8月には「再生エネルギー特別措置法案」も国会を通過し、日本政府としても自然エネルギーの普及に向けて舵を切りはじめました。

 いまこそ我々は新しい代替エネルギー、新しいエネルギー政策を考えるべきで、そのために政策決定者、マスコミ、国民が意見を交わし、議論を高めていかなければなりません。そして私が自然エネルギー推進のために本書で提唱したいのが、「アジアスーパーグリッド(高圧直流送電網)」構想です。

 アジアの国々をケーブルでつなぎ、自然エネルギーで発電した電力をやりとりするというもので、これが実現すれば自然エネルギーの弱点と言われる「コストが高い」「大量に電力を供給できない」「不安定である」という問題は、すべて解決します。

 たとえばモンゴルのゴビ砂漠では一年を通して素晴らしい風が吹き、太陽が照っています。この風力と太陽光を使った電力の潜在量は2テラワットにのぼり、今日の世界的な電力需要の3分の2に匹敵する量です。

 アジアだけなら、これだけで全体をカバーすることも可能なパワーです。そして、モンゴルと日本をスーパーグリッドでつなげば、日本の電力問題はいっきに解決します。

 もちろん1カ国に依存するのは危険で、ほかの国々から電力を調達することも考える必要があります。

 アジア全体を見回すと、電力についてさまざまな可能性があることがわかりました。たとえば電気料金ひとつとっても、ブータンでは1キロワット時あたり2セントです。

 これは日本の電気料金のわずか1割に過ぎず、しかもブータンでは電力が余っていて、国内で使い切れない電力をインドに売っているほどです。もしブータンと日本がつながれば、日本がこの安い電力を使うことも可能になります。

 アジアの国々で自然エネルギーを使った発電を行い、発電した電力をアジア中に張り巡らせた送電線網を使って融通しあう。実現すれば日本だけでなく、アジアの国々が抱える電力に関する悩みは、いっきに解消します。

 あるいは日本国内でも今後、素晴らしい太陽光発電の技術が開発され、安価で大量の電力を供給できるようになるかもしれません。この電力をアジア各国に売り、日本が電力の輸出国になる可能性もあるのです。

 荒唐無稽な話と思う人もいるでしょうが、じつは目を転じるとヨーロッパでは、すでにかなり緻密な送電線網が構築されています。

 隣り合った国同士をケーブルでつなぎ、自然エネルギーで発電した電力をやりとりしあうことは、すでに当然のように行われているのです。

 陸続きでなくとも、海底にケーブルを敷き、電力をやりとりしている国々もあります。ヨーロッパでできるのであれば、アジアでもできるはずです。

 完全なゼロからのスタートでなく、ヨーロッパに先行事例があるのは頼もしいかぎりです。この構想を進める中で、ヨーロッパの人々が得た成果も取り入れながら、アジアに一刻も早くスーパーグリッドを築き上げたいというのが、目下の私の願いです。

 詳しくは本文で述べますが、すでにモンゴルをはじめ、アジアやヨーロッパの人たちとの話し合いも進めています。

 私は政治家ではなく、実業家です。実業家としてこの構想を事業として進めていきたいと考えています。たんに夢見るのでなく、実際に行動していけば、たとえ志半ばで倒れたとしても、「危険なエネルギーは使わない」という思いを持った人がいる限り、誰かがこれを続けてくれるでしょう。

 ビジネスで一番難しいのは、購買者を見つけることです。購買者さえ見つかれば、物事はうまくつながります。電力の場合、アジアから見れば高い電力料金を払い、かつ脱原発に向かおうとする日本は、最大の購買者と言えます。

 逆に言えば、アジアスーパーグリッドが実現したときの最大の受益者は、自然エネルギーによる安全で安定した電力を安価で購入できる日本になります。

 日本がリーダーシップを取り、「我々が買います」と宣言してアジアスーパーグリッドを構築していけばいいのです。アジアの国々にとっても輸出のチャンスを提供でき、まさにウィン‐ウィン(どちらも勝つ)の関係が成り立つのです。

 ウィン‐ルーズ(一方が勝ち、一方が負ける)であれば、抵抗したり、文句を言う人々が現れるでしょうが、ウィン‐ウィンの関係が成り立つのなら、必ずいつか人びとの理解を得られるものです。

迷ったときは、遠くを見る

 いま我々が求められているのは、10年、20年先のための解決策ではありません。100年、200年先を考えた解決策を考えなければなりません。10年、20年先のための解決策なら、「とりあえず化石燃料による火力発電でいい」という話にもなります。原発の再稼働も、選択肢の1つになるかもしれません。

 とはいえ、今後の日本で原発を新たにつくるのは、かなり難しいでしょう。また、かりに再稼働したとしても、いずれ寿命がくれば使えなくなります。そう考えたとき、やはり原発依存には限界があります。

 人類はまだ、原子力を十分にコントロールする方法を手にしていません。非常に危険すぎるものです。コントロールする方法を知らないエネルギーは、けっして使い続けてはなりません。

 日本に54基あった原発は、トラブルや定期検査などで2011年の冬には2基しか稼働していませんでした。一時は「日本経済が全停止する」「家庭の電気はすべて停電する」などと危惧されましたが、なんとか乗り越えられました。そこには国民の節電の努力があり、また停止していた火力発電が稼働する方向で動いたこともあります。

 火力発電も一時的には依存せざるを得ないでしょうが、将来的に燃料費の値上がりは避けられないでしょう。

 気候変動や資源枯渇の問題もあり、やはり100年、200年先という長い年月で考えたら、自然エネルギーをもとにしたアジアスーパーグリッド構想の実現しかありません。

 物事に迷ったときは、遠くを見ることです。答えはシンプルに見えてきます。そして見えた答えがあれば、迷わずシンプルにそこに全速力で向かう。あとで振り返ると、結局それしか解決策はないのです。短期的な解決は、途中の寄り道にしか過ぎません。

 しかもこれは経済的に成り立つ方法です。だから国民に負担をかけず、税金に頼らず、実現できます。いま現在は、自然エネルギーによる発電はコストがかかります。そのため固定価格買取制度などに頼らざるを得ませんが、中長期で見れば、むしろ火力より安くなります。当然、原子力よりも安くなります。

 福島原発の事故以来、安全レベルのハードルがいっきに上がりました。原子力を新たにつくる場合、これから大変なコストがかかります。これから新たにつくろうという動きは、世界中でどんどん減るでしょう。

 その意味でもアジアをスーパーグリッドでつなぎ、長く持つような、自然エネルギーによる新しいシステムをつくる必要があります。

 アジアスーパーグリッド構想について言えば、自然エネルギー財団を設立した当初、私自身、荒唐無稽な夢物語と思っていました。直後に開いた会合でも、「まだ信じないでください。とりあえずクレージーな夢物語を語っています。ただの大風呂敷ですから、忘れてください」と発言しました。

 ところがそれから半年経って、夢は着実に前進しています。本文でご紹介するように、世界の人びとが我々の構想に関心を抱いてくれています。日本政府の方々にも、ぜひ大きなスケールで日本のエネルギー政策を解決する議論をしていただきたい。

 本書『孫正義のエネルギー革命』が、そのための一助となることを願いたいと思います。

 

 自然エネルギー財団

自然エネルギーを基盤とする社会の構築を目指し、2011年8月、孫正義(自然エネルギー財団会長・創設者)によって設立された公益財団法人。
東日本大震災および福島第一原子力発電所の事故を受け、人々にとって安全・安心な自然エネルギーの普及を急務とする。自然エネルギーの普及を、政策やビジネスモデル提言、幅広いネットワーク作りをとおして推進すべく、国内外と連携した活動を行っている。


◇書籍紹介◇

孫正義のエネルギー革命

自然エネルギー財団 監修
本体価格 840円    

再び、深刻な電力不足が叫ばれる夏。日本人に「安く、大量に、安定して」電気を届ける、大胆なビジネスプランをプレゼンする書。 


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