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苦手な人にどう接するべき? 「相手と会話をする前」に考えるべきこと

徳吉陽河(一般社団法人コーチング心理学協会代表理事・講師)

2025年03月24日 公開

苦手な人にどう接するべき?  「相手と会話をする前」に考えるべきこと

初対面の相手や職場の上司など、コミュニケーションがうまくいかない相手とはどう接すれば良いのでしょうか。一般社団法人コーチング心理学協会代表理事の徳吉陽河さんは「まず、相手に好奇心を持つ」ことが重要だと語ります。本稿では、書籍『結果を出す人はどんな質問をしているのか?』より"人間関係を深める質問"について解説します。

※本稿は、徳吉陽河著『結果を出す人はどんな質問をしているのか?』(総合法令出版)の一部を再編集したものです

 

質問の入口は好奇心

質問力を高めるうえでは、相手の話をしっかりと理解してから、状況を観察して、意図をもって質問することが重要です。傾聴や質問とは単に聞くだけではありません。「質問」と「聞く」は似ていますが、相手を意識しながら尊重しているのが「質問」。つまり耳ではなく、心で「聴く」のが傾聴なのです。

そして、質問をするとき重要になるのは「好奇心」です。

「もっと詳しく聞きたい」
「ここを掘り下げたい」
「どうやってその考えに至ったんだろう」

自分の中の好奇心が相手に対する「質問」をつくるのです。

もしも相手に興味・関心がもてないという場合は、交流会、旅行、遊びなどで共通の体験をすると少しずつ相手に対して好奇心がもてるようになります。

相手に関心を抱くと、自分も関心をもってもらいやすくなる「ブーメラン効果(好意の返報性)」というものがあります。反対に、相手のことを嫌いと思ってしまうと、相手に嫌われやすくなってしまいます。そうすると当然ながら、コミュニケーションはうまくいきません。

しかし、今まで興味がなかった人に対していきなり好奇心を抱くことは非常に難しいといえます。その場合に有効なのも「質問」です。興味がない相手と話す際は、自分の中で自分自身に質問をしてみてください。

「この人の中で好きなところはないか」
「この人から学べることはないか」
「この人はどのような考え方、知識をもっているのか」

仮に相手に対して質問するモチベーションが低い場合、最初は自分にメリットになる聞きたい情報を質問として投げかけるのでも構いません。

ただし、一部でもよいので相手の好きなところや良いところを見つけようと試みてください。それを見つけることができたなら、その気になった点について質問をしてみましょう。そこからお互いの関係性が、以前より大きく動き出すはずです。相手も興味があることや気になっていることを話すときは情熱的になるからです。

基本的には、デカルトが「我思う、ゆえに我あり」(考える自分がいるから、私は確かにここに存在しているのだ)と述べるように、人間は自己中心的に考える存在です。基本的にあなたが相手に興味がないと同じように、相手もあなたに興味をあまりもっていないことが多いです。

だからこそ、相手の「興味」をくすぐれるように自分自身に質問をしていく必要があるのです。相手に対して好奇心があれば自然と「質問」が出てきますし、ない場合でも自分に「質問」をして、相手の良いところを探していけます。

私もかつて、苦手な上司がいました。なぜなら、彼は完璧主義でいつもイライラしていたからです。でもよく観察すると、きちんとメモを取っていて、仕事を忘れないようにマメに対応をしていました。その人の良い部分を見て、自分の仕事にも活かしました。

嫌いだからと距離を取ってしまうと、気づけていなかった良いところを見逃してしまうかもしれません。コミュニケーションがうまくいかない相手とは、そのうまくいかないところに学びがあることも多いものです。嫌いな人や苦手な相手の中にある良いところを抜き取って見ることで、学びに転換できる、という考えを知ることは重要です。

私自身、講師やコーチ、カウンセラーとして、相手から話を聴き、質問することで、相手から学ぶことが非常に多いです。自分に足りていないことを周りの人から謙虚に学ぶことが自分自身の成長につながります。

質問も、相手のためだけに行うものではありません。質問を介したやり取りは相手の答えから、自分自身の考えを明確にする支援にもなるのです。

 

聞く前に、まず自分に問いかけて考えてみる

他の人と良い関係を築くためには、一番重要なポイントは「相手のことをしっかり考える」ことです。

最初に相手をよく観察して、「今」どんな言葉をかければよいのかを考え、相手の状況を把握するということです。相手がイライラしているように見えたら、質問をするタイミングをずらしたほうがよいかな、など自分の中で相手を思いやります。

質問をする前に自分への問いかけ方は次のような質問です。

「話をするうえで何が大切か」
「今、なぜこのことをその人に聞きたいのか」
「質問をすることで相手に何をどうしてほしいのか」

このように自分に問いかけたうえで質問をすると、相手が困りにくくなります。少し冷静になって話せば、感情に流されて、思ったことをうっかり口に出してしまい、相手を怒らせるというミスも防げます。

また、何も考えずに急に質問をすると「いきなり何?」と相手に引かれてしまう可能性があります。そのような場合だと相手が気持ちをオープンにして答えてくれないこともあります。

その回避のためにも事前に自分に対して「質問」をすることは有効な手段です。相手を責めたり、相手の考えを正そうとしたり、論破するような質問になっていないか、言葉にする前に自分の頭の中で点検をしておきましょう。単に相手の考えを正す論破のような質問は、ハラスメントにもつながりかねません。

もし、何か相手に対して「行動を変えてほしい」などと思っていた場合でも、そこを直接指摘するのではなく、「相手自身が質問に答えたことで大切なことに気づいてもらう」という意識をもつことが重要です。

まず、相手が自分自身で気づいて理解しないと、本当の意味で相手の行動に変化は起こせません。直接的に表現することで、相手も苛立ったり悲しくなったりと感情が邪魔して、成長のための良い指摘内容であっても、うまく頭の中でかみ砕けないことがあるからです。

つまり、「相手を思い通りに動かす」のではなく、相手が心地よく考え、行動でき、心から「そうしたい」と思えるように「相手自身に考えてもらう」ことです。あくまでも相手の意志を尊重することを意識しましょう。

観察し、傾聴し、自分に問いかけてから質問をする。

このステップで進めることではじめて、質問の力が発揮され、関係性を深められるやり取りになるのです。

 

著者紹介

徳吉陽河(とくよし・ようが)

一般社団法人コーチング心理学協会代表理事・講師

一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会代表理事・講師
専門分野はコーチング心理学、ポジティブ心理学、キャリア心理学、認知科学など。資格は、コーチング心理士、公認心理師、キャリアコンサルタント、ポジティブ心理療法士、認定心理士(心理調査)など多数。クライアントやコーチ・カウンセラーがお互いに前向きになるようなウェルビーイングや能力の向上、自己成長の支援を行っている。海外の心理尺度の翻訳、実用的な心理テストや性格診断の開発をし、WEBサイト『ペルラボ』にて、心理学とデータ解析に基づいた心理尺度、ストレス研究などを行う。

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