
「友人が約束を破ったのでイライラした」
「自分のやりたいことを理解してくれない家族にモヤモヤしている」
あなたには、こんな経験がありませんか?
どうしたら、このようなイライラ、モヤモヤ、怒りの感情とうまく付き合っていくことができるのでしょうか?アドラー心理学の考え方を分かりやすく解説した小泉健一さんの書籍『その気持ち我慢するより、できることがあるかもよ』から見ていきます。
※本稿は、小泉健一 著, 田山夢人 監修『その気持ち我慢するより、できることがあるかもよ』(大和出版)を一部抜粋・編集したものです。
「思い出しイライラ」が止まらない!
日常のイライラを思い出して、さらにイライラしてしまう。気持ちを抑えこんで少し落ち着いても、しばらくしたらまたふつふつと湧き上がる...。
そんな経験ありませんか?
そんなときにストレスを発散するために運動をしたり、忘れられるように何かに没頭したりする人もいるかもしれません。
確かにそれも効果があると思いますが、私は個人的にはおすすめしません。
体を動かすことで心が軽くなることは確かにあります。でも、思い出してイライラするということは、その感情を消化しきれていないということ。
消化しきれてない感情は、ずっとこびりついて離れません。
アドラー心理学では、この感情は、次のように処理をします。
感情はすべて自分で選んでいます。そして感情には目的があると考えます。
感情が消化しきれていないということは、その感情があなたにとって意義のあることだと考えましょう。
したがって、まずはその感情をしっかり味わってみましょう。なぜイライラしたのか、そのイライラは自分に向かっているのか、他者に向かっているのか、そして誰にどうしてほしかったのかを、できる限り具体的に書き出してみます。
そこに隠れた自分の想い=本当の目的を見つけることができると、その感情との折り合いがつくようになります。
自分の感情を理性で抑えつけることは難しく、考えないようにすればするほど、脳裏にこびりついて離れません。
私も昔は、自分自身を納得させようと「こんなことでイライラする必要はない」と言い聞かせては、数日後に思い出したようにまたイライラしていました。
その感情を選んでいるのは自分自身なのに、変な理屈で抑えつけようとしても無駄だということです。
脳は否定形を理解できない
あなたは、「黄色くないゾウ」と言われて何を思い浮かべますか?
おそらく「黄色いゾウ」を思い浮かべたのではないでしょうか。
「今から車のことは絶対考えないでくださいね!」と言われたら、誰でも車が気になってしまうでしょう。
このように「脳は否定形を理解できない」、つまり「〇〇しない」と否定しようと意識しても、脳は「○○する」をイメージしてしまうものだと言われています。
よって、「もうイライラしない!」と決めても「イライラ」が残るので、ずっとその感情と離れることができません。
感情にはしっかり向き合うことが大切です。イライラするということは、あなたの価値観にそぐわない出来事があったということですよね。何が気に食わなかったのか、そして誰にどうしてほしかったのかをノートに書き出してみましょう。
そして、忘れてはいけないのが「課題の分離」。
誰に何をしてほしかったかがわかると、それは自分のエゴだったり、価値観の押し付けだったりすることに気がつくことがあります。
「あー、これって自分の『こうあるべき』という考えを相手に押し付けていたな」などと気づいて、「相手のことはコントロールできないから、この感情を解消するためには自分で何ができるだろう」と考えてみるのです。
相手の言葉に腹が立ったとしても、自分のイライラを鎮めるために相手に思いどおりのことを言わせることはできませんよね。
例えば、パートナーに悩みを相談したとき。「気にすることないよ」と声をかけてなぐさめてほしかったのに「あなたにも非があるんじゃない?」と言われたら、カチンとしますよね。その気持ちを抑えるために「『気にすることないよ』って言ってよ!」
と指示したところで無茶だということは誰にでもわかります。
このように相手のことはコントロールできません。
「もっと優しい言葉をかけてほしかった」と思っていたとしても、そのように相手を動かすこともできません。
できることとしては、「他人は思いどおりに動いてくれない」と理解すること。
そして、「私は自分の行動を認めてもらいたかったんだね」「優しい言葉を求めていたんだね」と、自分自身で自分を大切にするしかありません。
自分の感情に向き合う
「セルフハグ」というストレス発散方法をご存知でしょうか。
これは自分の両手で自分を抱きしめて体をいたわる方法で、「大丈夫だよ」と声をかけながらセルフハグをしてストレスを軽減させるというものです。
例えば、こんなふうにやってみます。
「いやなことがあってパートナーに話したのに、優しい言葉をかけてもらえなかったけど、私はよく頑張ったよね。えらいよね」と自分に声がけしながらセルフハグをする。
そうすることで、じんわり温かい気持ちになれてイライラやストレスが軽くなっていきます。
こうした方法も使って、自分で自分を認めてあげましょう。
感情を抑えつけるのではなく、つらくてもじっくり向き合っていくこと。
そこでネガティブな感情が出てきても「そんな自分でもいいんだ」と思うこと。
すべての感情には目的があるのですから。
このアドラー心理学の「目的論」を意識して、「自分は、なんのために今のイライラを選んだのか?」という視点で向き合うと、いやな感情も消化し切ることができます。