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それは「正しい怒り」ですか? アドラー心理学からひも解く3つの振り返り手順

小泉健一(ライフコーチ)

2025年06月20日 公開

それは「正しい怒り」ですか? アドラー心理学からひも解く3つの振り返り手順

「友人が約束を破ったのでイライラした」
「自分のやりたいことを理解してくれない家族にモヤモヤしている」
あなたには、こんな経験がありませんか?

どうしたら、このようなイライラ、モヤモヤ、怒りの感情とうまく付き合っていくことができるのでしょうか?アドラー心理学の考え方を分かりやすく解説した小泉健一さんの書籍『その気持ち我慢するより、できることがあるかもよ』から見ていきます。

※本稿は、小泉健一 著, 田山夢人 監修『その気持ち我慢するより、できることがあるかもよ』(大和出版)を一部抜粋・編集したものです。

 

怒りが湧いたら、いったん落ち着く

自分の思考の癖がどんなものか、またどんなことでイライラするのかがわかったとしても、怒りの発生を事前に止めるのはなかなか難しいものです。
それにはひたすら練習するしかないと私は考えています。

どんな練習かというと、怒りが湧き上がってきたら、「なぜ今、イライラした?」「何を望んでいたんだろう?」と自問を繰り返して、自分の感情と向き合うことです。

ただ、イライラが沸き起こったときに瞬時にこれをするのはハードルが高いでしょう。
私もイライラしてしまうと冷静に考えることができないので、いったん我慢して落ち着くように意識しています。
アンガーマネジメントでは「怒りが湧いたら6秒待とう」と言われていますが、6秒が適正かどうかは置いておいて、これは効果的だと私は感じています。

最初は我慢するのが結構しんどいのですが、「あのとき言い返さなくてよかったー」
と思うことがたくさんありました。
イライラしているときにはその勢いに乗って発言しないようにしましょう。

1 自分のどんなビリーフ(信念)や価値観に背いたからこのイライラは生まれたのか?
2 誰にどういう期待や理想を持っていたのか?
3 では、今からどうすればいいのか?

この3つの順番で考えてみることをおすすめします。
実際にどんなふうにやるか、私の経験談で具体例を紹介していきますね。

 

3つの手順で振り返ってみる

あるとき、私は友人と食事をするために、ネットでお店の予約をしました。そして前日に、ネットでちゃんと予約できているか確認しようとお店に電話しました。
すると「いえ、予約は入っていませんけど...」とのこと。
とても焦り、「そんなことはないはずです! 名前と電話番号をもう一度確認してもらえますか?」と言いましたが「いや、ないですよ」の一点張り。
ここで店員さんの突き放すような態度にカチンときてしまいました。

ただ、絶対予約は入っていないとのことなのでいったん電話は終了。
改めて予約したネットのページを見てみると、私の勘違いだったことがわかりました...。前にとあるお店に予約をしたものの、キャンセルして別のお店を予約していたのですが、そのときのキャンセルしたお店に電話をかけてしまっていたのです。

申し訳ないと思いつつも、私は店員さんの態度にイライラしていました。
私のミスではありますが、もう少し寄り添った受け答えをしてほしいと思ったからです(ここまで読んで、私のことを「なんて自分勝手なんだ」と思う方もいるでしょう...)。

ここで、先ほどの3つの手順に沿って振り返ると、次のようになります。
1 自分のどんなビリーフや価値観に背いたからこのイライラは生まれたのか?
→「人には優しくするべき」というビリーフ(信念)があり、自分に寄り添ってくれなかったと感じたため、イライラした。
2 誰にどういう期待や理想を持っていたのか?
→店員さんに「予約は入っていませんけど...」だけではなく「大変恐れ入りますが、予約は当店では入ってないですね。今からでしたら予約できるのはこちらのコースのみになりますが...」という、寄り添った優しい対応を望んでいた。
3 では、今からどうすればいいのか?
→とはいえ、この期待は自分自身のエゴで、相手の行動をコントロールすることはできないから諦めるしかない。今後同じ場面が出てきても受け流せるようにしよう。

こんなふうに振り返ってみました。私は態度が冷たい店員さんにイライラしがちでした。「お客さんを大切にしろ!」と思っているわけではなく、単に愛想が悪くて冷たい態度がいやだったんですよね。でも、その人の態度を「愛想悪い」とか「冷たい」と感じているのも私の勝手な解釈でしかありません。

私にとっては「愛想が悪い」と感じても、本人にとっては寄り添って対応しているのかもしれません。
したがって、これは勝手な自分のエゴだなと思えるようになり、同じ場面に遭遇してもイライラしなくなりました。「期待しない練習」ができたからです。

 

あえて「怒り」を選択する

ただ、どうしても譲れないビリーフだった場合は「相手に期待しない」という選択が難しいかもしれません。

例えば、私は「人は平等であるべき」というビリーフには強いこだわりを持っています。もし、特定の人を差別するような場面に出会ったら「相手のことだからコントロールできないし、しかたない」と諦めることはできないでしょう。落ち着いて考えても「やはり許せない」と思ったときは怒りをぶつけてもいいんです。

アドラーも「怒りは選択できる感情」だと言っています。あえて「怒り」を選び、自分の強いこだわりを主張するということも、時には必要です。
怒ってしまう自分をすべて否定するのではなく、自分にとって正しい怒りであれば怒りを使ってもいいと私は考えています。

このように、あなたもイライラする場面があったら、振り返ってみてください。
そして自分の傾向をつかみましょう。

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