
あなたは、次のような日々を送っていませんか?
・とにかく時間が足りない
・サボっているわけではないのに仕事が溜まっていく
・いつも何かに追われている気がする
・プライベートの時間がとれず充実感がない
そんなあなたのために、自らトライ&エラーを繰り返しながら身につけたという"時間術"を営業サポート・コンサルティング株式会社代表取締役の菊原智明さんに解説して頂きます。
※本稿は、菊原智明著『コンサルが密かにやっている うまくいく人の時間の使い方』(総合法令出版)の一部を再編集したものです
行き過ぎた完璧主義はスピードを奪う
知人や仕事相手で、こだわりが強く妥協を許さない人がいます。それはいいことですが、あまりに完璧主義になりすぎてしまうと、仕事のスピードは落ちます。こだわりが強すぎて約束の期限に間に合わない、では本末転倒だと思います。
ここで知っていただきたいのは、重視すべきはスピードであり"期限を守ることが大切"ということです。
私は完璧主義ではなくスピード重視思考です。
スピードはあるもののその点で多少のミスも出したりします。ただ、そういったマイナス要素を差し引いたとしても、スピード重視思考には十分なメリットがあります。
もちろんはじめからスピード感があったわけではありません。私がスピード感を身につけられたのは、営業スタッフ時代の経験があったからです。
とくにダメ営業スタッフ時代は常に苦しい立場でした。苦しさのあまり"とってはいけないお客様"と契約をしてしまうこともありました。契約をすれば地獄が待っていると分かっていても、契約ゼロ月から抜け出したくて思わずとってしまっていたのです。
この手のお客様はとにかく自己中心的です。ほぼクレーマーと言ってもいいくらいです。そんなお客様からの「この工事の見積もりを明日までに出して」という無理な注文に対してノーと言えませんでした。
通常は2、3日はかかるところをとにかく間に合わせるしかありません。お客様の機嫌を損ねるとあらゆるところに火種が飛び、どんどんトラブルが広がっていきます。ですから言われたことに関して何としても守るしかなかったのです。
そのときはきつかったものの、今から考えると「スピードをつけるためのいいトレーニングになった」とつくづく思います。このような経験から強制的にスピード感が身につき、今でも体にしっかりと染みついています。
仕事をさせていただいている仲間には完璧主義者の方もいます。期限通りに仕事が完了しないときに連絡すると「完成度が低く、送っていいか迷っていまして...」という返事がきます。慎重でミスがなく素晴らしいのですが、スピード感がありません。
結果的に約束の期日を破ってしまうのです。
こちらとしては期限が過ぎて待っている間、ストレスが溜まります。できているのであれば「80%の完成ですが」と言って期限内に送ってもらった方がいいのです。
完璧主義はスピード感を奪います。くれぐれも期限を守ることが優先順位の1位なのです。完璧を目指すよりスピード感を身につけることを優先してください。
できる人は漆塗り方式で仕事をする
時間に追われている人は無意識のうちに時間を無駄に使っています。サボっているつもりはなくても大幅に時間を奪われているのです。
代表的な例は"計画なしに手をつけて結局やり直しになる"ということです。しかも、悪いと気がついていない人が多いのです。こういった時間は極めて効率の悪い仕事の進め方です。こういった死に時間を減らす必要があります。
私の知人に仕事熱心な人がいます。真面目で熱心ですが、いつも仕事が期限に間に合わず悪戦苦闘しています。
知人は「2時間以上もやったのに結局すべてやり直しになった」という話をよくしています。これでは、その2時間結局何もやっていないことと同じです。仕事の進め方に問題があるのです。
私自身、以前はすべて水の泡になるような仕事の進め方をしていたこともあります。
何度も痛い目にあいながら少しずつ改善してきました。
営業スタッフ時代、商談中のお客様の図面を考えていたときのことです。お客様の要望をチェックしながら1つ1つ細かく進めていきます。
「よっし! これならいい間取りができるぞ」と思い、時間をかけて作り、90%ほど完成というところで「洗面所が狭すぎる」ということに気がつきました...。
この時すでにスタートから2時間以上は経過しています。最後になって重大な欠陥に気づいてしまったのです。それまでの図面作りがすべて台無しになり、結局はじめからやり直しです。やったことがすべて無駄になったのでは時間がいくらあっても足りません。
当時の私は労働時間こそ長かったものの、たいしたアウトプットができなかったのです。
そんなあるとき、トップ営業スタッフの方から「間取りは漆塗り職人のように作ると無駄がなくなる」と教えてもらったことがあります。
漆塗り職人のようにとは"下地、中塗り、上塗りといった工程を経て、漆を重も塗りする"といった感じです。
実際に図面を作っているところを見させていただくと、はじめにぼやっと全体像を描かれました。漆で言えば下地を塗る感じでまず概略を描いていったのです。それから細部へと進みます。これが中塗りです。そしてほぼ配置が決まったときに上塗りをするように仕上げ作業をしていました。
その後、先輩を見習い、全体像からサッと描くことから始めてみました。するとどうでしょう! 後からミスに気づくなんてことはなく、一気に仕上げることができました。2時間以上かけて作ったものが一瞬にして水の泡ということがなくなります。
この進め方で時間の無駄がなくなりました。
この仕事の進め方は今でも役に立っています。あなたも資料や提案書などを作る際は"漆塗り方式"を意識してみてください。無駄な時間が大幅に削減できるはずです。
漆塗り方式は、読書や仕事の書類を読むときにも応用できます。
長い文章をはじめから順番に読んでいくのではなく、はじめにザッと最後まで目を通します。このとき、単に速く読むというのではなく、自分が欲しい情報が書いてありそうな見出しを探していきます。
具体的な方法はこのような手順です。
大見出し・小見出しを読む → 太字や強調の文字を読む → 知りたい情報の詳細を読み込む
このように読み進めていくと、どこに何が書いてあるかがはじめに理解できます。
そして必要なところを重点的に読んでいくのです。この読み方なら、はじめから順番に読んで集中力が落ちて肝心なところまでたどり着かない、といったことがなくなります。
何事もいきなり細部に時間をかけるのは危険なことです。漆塗り方式で全体像を作りその後、細部へと進めましょう。これで大幅に時間短縮ができるはずです。