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福祉の現場に新拠点 門前仲町「ながれる」が描く“誰もが安心できる空間”

PHPオンライン編集部

2025年09月11日 公開 2025年09月11日 更新

福祉の現場に新拠点 門前仲町「ながれる」が描く“誰もが安心できる空間”

2025年9月、東京・門前仲町に新しい施設「ながれる」が誕生しました。オープンを記念したイベントではトークセッションが開かれ、所長の高橋亜美さんをはじめ、設計を担当した株式会社安部良アトリエの安部良さん、企画に関わったロフトワークの服部木綿子さん、「ながれる」でコミュニティマネージャーを担う濠うかさんが登壇。

小さな会場は立ち見が出るほどの熱気に包まれていました。本稿では、そんなトークの模様をお届けします。

 

「半開きのシェルター」から始まった新施設の構想

ながれる開設記念イベント
左から、濠うかさん、高橋亜美さん、安部良さん、服部木綿子さん

冒頭、高橋さんはこれまでの活動を振り返ります。

「長年、虐待や貧困など困難を抱えた人たちと関わってきました。本来なら支援者と相談者は一番安心できる関係であるはずなのに、支援を続ける中で、互いに傷つけ合ってしまうこともある。支援者が"捧げる人"になりきってしまい、感謝の気持ちすら持てなくなる現実があるんです」(高橋さん)

支援する側もされる側も疲弊していく――その行き詰まりを解きほぐすために構想されたのが「ながれる」でした。

当初は「半開きのシェルター」という言葉がキーワードでした。従来のシェルターは安全性を優先するあまり生活が厳しく制限され、外の人との関わりを断たざるを得ないこともあります。そこで「ながれる」では、地域との接点を残しつつ、会いたい人に会える自由を大切にする形が模索されました。

議論を重ねるうちに、「助けを求める人だけを主役にするのではなく、場をつくる人や訪れる人も含め、それぞれが"自分の安心"を見つけていく場所にしたい」という思いが強まり、「自分で自分を心地よくする」という現在のコンセプトに結実したと高橋さんは話します。

 

門前仲町で実現した“安心できる空間”のデザイン

ながれる
「ながれる」エントランス

クリエイティブディレクターを務めたロフトワークの服部木綿子さんは、コンセプトを考える上でまず物件を考える必要があったと振り返ります。

「亜美さんがやりたいことが叶う場所が、ピンポイントでここだったんです。街にも良い気が流れているなという印象があり、かねてより設計をお願いしたいと考えていた安部良さんにも本格的にお願いする流れになりました」

設計を担当した安部良さんは、初めて現地を訪れたときの驚きをこう話します。

「最初は無理だと思いました。家賃も想定していたより高いですし、間口が狭く、細長いビルで、居酒屋の残骸がそのまま残っていたんです。とても安心できる空間とは言えませんでした。でも門前仲町の街の雰囲気、人との縁がこの場所を『ここしかない』と思わせました」(安部さん)

設計のキーワードは「安心」。安部さんは、整理整頓され綺麗に片付いている状態が安心感につながると考えたそうです。

そのため、清潔に整えた空間に木材や植物を多く取り入れ、自然光を大きな窓から取り込む。洗顔後の"すっぴん"のように素に戻れる空間を目指したといいます。3階以上は靴を脱いで上がるため、直に木のぬくもりが感じられます。だからなのか、どこかほっとする、柔らかな空気が全体に流れていました。

 

居場所ではなく“避難先”へ──コミュニティマネージャーの視点

ながれるに設置されたシャンプーベッド
ヘッドスパルームもある。プロに施術してもらえるイベントが行われる予定

コミュニティマネージャーの濠うかさんは、自身の不登校経験を踏まえてこう語ります。

「私は学校に行けず、友だちもほとんどいないまま10代を過ごしました。そうした経験は表に出さなければ気づかれませんが、同じように、見えないところで孤独を抱えている人は少なくないはずです。

だからこそ『ながれる』は、ただの居場所ではなく、一時的に身を寄せられる避難先であり、互いの存在を感じ合いながら安心を育んでいける場になると思っています」(濠さん)

建物は完成していますが、この場所で何が行われるかはまだ定まっていません。それゆえに、ここに関わる一人ひとりがその時々の状況によって当事者になり得る――濠さんはそう語りました。

さらに安部さんは「ケア」という言葉のニュアンスにも触れました。

「英語の"Who cares?"は『知ったことか』になりますが、一方で"I care you"などと言えば『気にしているよ』という肯定にもなる。大げさに支えるのではなく、あなたがここにいることを私は知っている、と伝えるだけで安心になるんじゃないでしょうか。『ながれる』はそうやって気軽に声を掛け合うみたいな、そんなことが行われる場所になっていくのかなと思います」(安部さん)

服部さんは「ながれる」は肩書や役割から少し離れて人と関われる場所であってほしいと話します。

「いろいろ背負っているものを下ろして、ここでとにかく心地よく過ごせる人が増えたらいいなと思います。様々な背景をもった人が集まって、ケアする・されるの1対1じゃない関係性を作れる場所になるのではないでしょうか」(服部さん)

 

自立した運営に向けて

終盤には、運営を支える寄付や参加の呼びかけも行われました。高橋さんは高橋さんは「運営には資金が必要です。ただ寄付という形だけでなく、この場所を活用してお金を生み出す提案も歓迎したい」と語ります。物販やイベントを通じて自立的な運営を模索していることにも触れ、「お金を生み出しながら、安心を一緒につくる挑戦をしたい」と結びました。

「ながれる」が目指すのは依存でも孤立でもない、ほどよい関わり合い。制度や支援の枠を超え、人が人を「気にかける」ことの積み重ねが未来の福祉を形づくっていく。そんな予感が静かに胸に残りました。

(取材・執筆・編集:PHPオンライン編集部 片平奈々子)

 

【ながれる】

●公式サイト
https://nagareru.acyuzuriha.com/

●営業日
木、金、土曜日 11:00~17:00 
※9月中はイベント営業のみ。イベント詳細はInstagram(@nagareru_hak) より

●アクセス
東京都江東区富岡1-12-2

東京メトロ東西線・門前仲町駅1番出口徒歩1分
都営大江戸線・門前仲町駅3番出口徒歩3分

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