有本均・元ハンバーガー大学学長のモチベーションメソッド
2013年01月16日 公開 2021年07月12日 更新
1つの会社や職場で長く働いていれば、どうしてもモチベーションが上がらない時期も出てくる。
とくに中間管理職であれば、上司とのつき合い方に悩む一方で、部下のやる気をどう高めればよいかという難しい問題を抱えているはずだ。
そこで、30年近くサービス業の現場を経験し、日本マクドナルド〔株〕の「ハンバーガー大学」や〔株〕ファーストリテイリングの「ユニクロ大学」といった社員教育機関で学長を務めた経験ももつ有本均氏に、
自らのモチベーションを上げる方法と、上司として部下のやる気を高めるコツ、その両方について語っていただいた。(取材・構成:塚田有香/写真:まるやゆういち)
※本稿は『THE21』2013年1月号[総力特集]より、内容を一部抜粋・編集したものです。
自分のモチベーションは結局は自分が上げるもの
私は大学1年生のときにマクドナルドでアルバイトを始め、そのまま社員になって、店長、スーパーバイザー、統括マネジャーと立場を変えながら、ずっと現場でキャリアを積んできました。
人の入れ替わりが激しい外食業界で、私が長年やりがいをもって働くことができたのは、働く人たちのモチベーションを上げるためのしくみや環境、教育・研修制度が整っていたことが大きな理由として挙げられると思います。
外食産業では、入ってからすぐに辞めてしまうアルバイトが多い。マクドナルドは、現場で働く人の9割以上がアルバイトです。
そこで重要なのが、新人が現場に入った直後の上司の対応。マクドナルドでは、のちに私も学長を務めたハンバーガー大学で、店長やスーパーバイザーなど部下をもつ立場の社員たちに、いかに部下のモチベーションを高く保つかを学んでもらっています。
部下のモチベーションにとって大切なのは、上司とのコミュニケーションです。具体的には、上司が「ほめる」「ダメ出しする」の両方をきちんと実践すること。
最初の1カ月間くらいはもっとも成長が急な時期ですから、ほめる材料はたくさんあります。肉の焼き方にしろ、レジ打ちの速さにしろ、昨日よりは今日のほうが確実に上達しているので、そこをきちんとほめるようにします。
一方で、できなかったことはきちんとダメ出しをしないと、本人も成長しないし、自信を失うことになります。「若い人を怒るとすぐ辞めてしまう」と、何もいわない上司が増えているようですが、それは本人のモチベーションにとって逆効果。
「成長したい」という意欲はどんな人にも必ずあるので、その人が仕事でスキルアップできるようにダメ出しをすることは、むしろやる気につながります。
とはいえ、いくら会社や上司のサポート体制が整っていたとしても、それに依存しすぎてはいけません。モチベーションを上げ下げしているのはあくまでも自分自身で、会社や上司はそのきっかけを与えているだけです。
それに、上司にもいろいろなタイプがいますから、自分と合う上司のときは高いモチベーションを保てるが、合わない上司のときはモチベーションが下がりっぱなし、というのでは困ります。
私も長く現場で働いてきましたから、気の合わない上司のもとでやる気を失いかけたこともあります。
そこで心がけたのは、その人が嫌いだからといって避けるのではなく、自分から積極的に話しかけること。しかも、表面的な会話ではなく、「私はこうしたほうがいいと思う」といった突っ込んだ話をするようにしました。
相手を避け続けたところで状況は何も変わらないし、上司が異動になるのを待っていたら何年かかるかわからない。仕事の悩みは仕事で解決するしかないし、それには自分で行動して突破するしかないのです。