お笑いコンビ・メイプル超合金のツッコミ担当として活躍する安藤なつさん。無類の料理好きとして知られる安藤さんが、自由な発想が光る初のレシピ本『安藤なつの奔放ごはん』を上梓しました。実は介護の現場に20年以上携わっており、介護に関する著書でも注目を集めています。
"きつい"というイメージが先行しがちな介護ですが、安藤さんは、大変なことも楽しいことも他の仕事と変わらないと語ります。今回は、介護を中心に安藤さんの考えをうかがいました。
※全3回の中編です
長年の関係でも、合わなくなったら離れてみる
――自由な発想な料理も印象的ですが、安藤さんの発信を拝見していると、人間関係に対しても押し付けが少なく寛容な印象があります。
【安藤】そうなんですね。自分のことはあまり見えないので、自覚はなかったですが…。
――相手を尊重しながら関係を築かれているように見えます。人づきあいの中で、何か意識されてることはありますか。
【安藤】長年一緒にいても今は疲れる相手になってしまったなら、別に一緒にいる必要はないと思っています。
だから、自分が余裕があって、向こうにも余裕があって、そういう時が来たらまた会えばいいんです。無理してこの関係続けようとするのが一番しんどいじゃないですか。
いろんな背景があると思うんですよ。仕事仲間で、ここでいざこざになるとめんどくさいから仲良くしとこうみたいな。それ、一番ストレスじゃないですか。そうやって壊れていくので、別に今はいいやって思うことの方が多いです。なんとかなるっちゃなるんで。
介護を通じて人と向き合うことにストレスは感じない
――安藤さんは長年介護の現場にもいらっしゃり、今もその発信を続けていると思います。利用者の方とのコミュニケーションを通しても、そうした人間関係の受け止め方が身についたりしたのでしょうか?
【安藤】そこはまた少し違うんですよね。介護は仕事なので、仕事として利用者さんとお付き合いをしてきました。だから、この人は何考えてるんだろう、何を求めてるんだろうということは積極的に考える必要があるんです。
友達のように対等ではないですよね。利用者さんと職員の立場なので。利用者さんが健やかに過ごせるためにどんなアプローチがふさわしいか、常に試行錯誤していました。
――仕事としてでも、利用者さんにあわせて「こういう方だから、こうやって接していこう」と考えながら接することに、ストレスのようなものが生まれたりはしませんでしたか?
【安藤】それも料理と共通しているのですが、実験のような感覚なんです。アプローチの仕方を変えて、正解に気づけて、向こうも喜んでくれたら嬉しい。だから、ストレスになったことはそんなにないですね。
どうしても、介護業界にはあまり良いイメージがないじゃないですか。離職率も高いし。でもその離職の理由は、利用者さんとのコミュニケーションではなくて、職員同士のコミュニケーション不足が多いんですよね。
介護業務の内容ではなくて、やっぱりお給料だったり、人間関係で辞められてる方が圧倒的多数だと思います。利用者さんに対して嫌だという人は、本当に少ないんじゃないかと思います。
もちろん、重度の認知症の方だったり、手に負えない方もいると思うんです。例えば、暴れる方がいて、その方に殴られてしまった時にカバーし合える同僚がいたらやっぱり違うじゃないですか。現場の環境が整っていなくて、ケアに向き合えないことが大変なんだと思います。
――負担が一人に偏ったり、そういうアンバランスが離職につながったりするんですよね。
【安藤】「私がやってあげるから」っていうスタンスの職員がいるとだいぶ崩れるんですよね。職員同士の尊重も必要なんです。難しいことではあるんですけど。
――介護=大変というイメージは根深いですが、安藤さんは家族介護が大変とおっしゃられていましたよね。
【安藤】はい。そこが一緒くたになっているんですが、介護職と家族介護の二つは全く別物なんです。
家族で看るとなると24時間体制じゃないですか。各々仕事や生活をこなさなきゃならないので、余裕がない。
更に、できてたことができなくなっていく身内の様は、精神的にもつらいと思うんです。切り離しができない。だからこそ、家族介護はめちゃくちゃ大変だと思っています。なので、専門職の人を頼ってほしいなと常々思っているんです。
どんな仕事でも大変な瞬間ってあるじゃないですか。残業が続いたり、失敗したり、締め切り間に合わないなど。大変と思う瞬間は、介護であってもさほど変わらないと思います。
――やはり、賃金の問題なのかもしれませんね。被介護者も増えていく一方ではあるので、そこは改善されていくと良いのですが。
【安藤】そうですね。お金の問題はやっぱり改善されていくべきだと思います。
介護について揉める前に、どう話し合っておくべきか

――高齢者がいるご家庭では、介護施設に預けるかどうかで意見が割れることもあると思います。家族でどんなことを話し合っておくべきだと思いますか?
【安藤】ご家族が認知症になる前に話しておくのが、一番理想ですね。遺産はどうするのかとか、介護施設にお世話になる場合に、施設の費用は親御さんのでちゃんと賄ってほしいなどというのは、お子さんは今後の生活があるわけだし、ちゃんと話し合った方がいいかなって思うんです。
介護費用がどれくらいになるかは、認知症のレベルや介護度にもよりますね。要支援1、2は一番軽いんですけど、そこから要介護1から5まであり、5は寝たきりの方ですね。それに応じて、使える介護サービスの量が増えていくんですね。
――やはり、お金のことが一番揉めてしまうんですよね。
【安藤】結局お金かよって思うけど、結局お金ですよね。だって生活があるんで。そこを認知症になる前に話し合っておいた方がいいかなと思いますね。
もちろん、話し合えるご家庭かどうかで変わってきてしまうんですが。親子の関係性があんま良くないとか、縁を切ってることもあり得ますし、いろんなパターンがあると思うんです。
関係性によっては、話し合う時に「お金目当てか」ってなる可能性もあるので難しいですよね。でも、究極を言えば面倒を見なくてもいいですからね。中には、縁を切ったんで親の面倒は見ませんっていう人もいるじゃないですか。
でも、ご家族の関係がある程度良好で、いずれ介護が発生するのが目に見えているのであれば、親御さんが住んでいる地域包括センターにまずは相談してみると良いと思います。
認知症の家族と“一緒に住まない選択”をすること
――実際に認知症の方を施設に預けてみると、家族関係が改善したり、よく施設に会いに来るようになることもあるそうですね。
【安藤】余裕ができたからじゃないですかね。最近、X(旧Twitter)で孫が認知症のおじいちゃん/おばあちゃんを看ているなかで、怒鳴り散らかしてるような映像がよく流れてきます。そういうのを見ると、いやもう施設に入れてあげてよと思うんです。
そのお孫さんは、認知症の家族に対して明らかにストレスが溜まっているじゃないですか。ご本人もそれで怒鳴り散らかされて絶対にしんどいですよね。だからこそ、一緒に住まない選択をしてほしいですね。
――さきほどの人間関係の保ち方に似てますね。
【安藤】確かにそうですね。距離を取ること。
大変な思いをするくらいなら、第三者に助けを求めることも必要だと思います。ただ、日本人の特性かわかんないですけど、助けてって言えない人も多い印象です。でも、言いづらくて溜めて爆発するぐらいだったら、助けてもらった方が絶対にいいと思うんです。









