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Moguru(本の話)

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中2から毎年、新人賞に応募 真門浩平さんが明かす“ミステリ作家への道”

真門浩平(作家) 

2026年09月29日 公開

中2から毎年、新人賞に応募 真門浩平さんが明かす“ミステリ作家への道”

2022年、大学4年生のときに「第19回ミステリーズ!新人賞」を受賞し、ミステリ作家としての道を歩み始めた真門浩平(まもん・こうへい)氏。短編ミステリの新人賞である同賞に初めて応募したのは中学2年生のとき。以来、毎年、同賞に応募し続けてきた。

受賞作を含む短編集『ぼくらは回収しない』が注目を集め、大学院修了後の現在は兼業作家として執筆活動にいそしんでいる。最新刊『終着駅で待ち合わせ』は、自身、3冊目の単行本となるノンシリーズの短編集だ。その執筆の背景を訊ねた。(取材・文=「文蔵」編集部)

※本稿は、『文蔵』2026年10月号より、内容を抜粋・編集したものです。

 

自分が見た夢にミステリとの親和性を求めて

――最新刊は5話を収録した独立短編集ですね。1話目の「各停十三駅分の帰り道」は電車を舞台にしたお話でしたが、なぜ電車の乗り換えを題材にした謎にしようと思われたんですか。

【真門】モデルとなった京王井の頭線は、大学生のときによく使っていて、乗っているときに思いついたんです。各停電車が急行電車のために駅での待ち合わせをすることがありますが、急行電車に乗っていたある乗客が、わざわざそこで降りて各停に乗り換えて、その先の急行が停(と)まる駅で降りたとしたら不思議だなと。謎としてはすごく地味なのが逆に新鮮かなと思ったんです。

――この一話を執筆したのは、デビューされたあとですか。

【真門】この一話目だけ、5年ほど前、大学生のころに原型のアイデアを思いついていて、それを大幅に書き換えたという感じですね。物語にイヤホンの音漏(も)れが関わってきますが、その音漏れを実際に聞いたりしたわけではありません。

ただ、イヤホンコードをバッグやネックウォーマーに巻いたりしている場面を描いていますが、そのシーンは自分が以前、そんなことをしていることがあって、謎解きの手がかりとして使ってみました。

キャラクターにモデルはいませんが、書き直すにあたってキャラクターの造形を変えたり、この話に合う表現を改めて追求してみたりしました。

――小説誌に掲載された作品もありますが、収録順は執筆順と同じでしょうか。

【真門】『ぼくらは回収しない』を出したあと、次の本について編集者からその作品の中の一篇に出てくる高校生二人を登場させた連作短編にするといいのでは、と言われました。そこで、「写真には写らない」を書いたのですが、この二人の話で変化をつけながら何作も書くのは難しいと思って、連作短編ではない形でまとめることにしたんです。

まず「写真には写らない」、次に、「各停十三駅分の帰り道」を書きました。その後に「非運の死」、「天森町は今日も雨」という順番でした。そこで編集者から「人が殺されていないミステリが続いているので、今度は殺人を書いてみましょうか」と提案されたんです。

それで執筆したのが「夢落ち」です。夢を題材にしたミステリを書こうというのが第一にあって、「殺人事件がいいですね」と言われたのを念頭に置きつつ、物語そのものよりは謎解きの部分を重視して書き上げました。

――なぜ、夢を題材にしようと思ったのでしょうか。

【真門】頻繁ではないですが、自分が夢を見たとき、覚えていた夢に対しては何かしら説明がつくことが多くて面白いなと。あるとき、鼻をかんでも鼻詰まりが治らないという夢を見ました。

そのときは現実において、実際に自分の鼻が詰まっていたんですね。だから夢の中でいくら鼻をかんだつもりになっても、現実の鼻詰まりが解消されず、夢の中でも治らなかったのでは、と思いました。

この出来事を作品に直接使ったわけではないですが、一見不思議だけど妙に筋が通っていることもある「夢」というものに惹(ひ)かれたのです。

――意外な展開が繰り広げられるといえば「非運の死」という一篇は、1月2日に地震が起きて、ある事件が起こります。能登の地震を意識して書かれましたか?

【真門】能登の地震の後に書いたものですが、意識はしていません。2年前の年末にプロットを作りましたが、ふだんは別の場所で暮らしている主人公が実家に戻り、家族が集まっている状況と、おみくじを引くシーンを描くという都合上この日を設定したのです。

「非運の死」は、一番時間がかかった作品。もともと陰謀論を題材にしたものを書きたいと思っていて、プロット自体は1、2カ月でまとめて一旦書き上げたのですが、1年ほどそのまま置いてから、読み返してかなり細かく書き直しました。

――作品では主人公の妹は宗教関係に、母親は陰謀論にハマってしまいます。真門さんは陰謀論に関心があったということですが、身近に信じる人がいたなど、何かきっかけがあったのでしょうか。

【真門】とくにそういうことはなく、ただ「陰謀論」を信じる人に興味があったんです。

自分は信じないけれど、信じる人が自分とは違う人間と思うのではなく、そうした人たちには何かしら「陰謀論」に納得してしまう心理があり、自分自身も実は近いものを持っているのかもしれないなと思い、ネットの記事を読んだり、どんな人が陰謀論を信じてこの世界に陥ってしまうのか、といったことをSNSで調べたりしました。

物事に対して「何か裏があるのでは」と疑う姿勢は、ミステリにも通じるところがあるので、題材にしてみたいと思ったんです。

――この作品は家族の話でもありますが、真門さん自身にはきょうだいはいますか。

【真門】兄がいます。家族をモデルにしたことはないですが、不思議ときょうだいが出てくる短編が多いですね。

中学生のころ、小説を書いて投稿していることは家族に隠していたのですが、「ミステリーズ!新人賞」に応募した際、出版社から選考結果の手紙が来てバレてしまいました。今では毎回家族にも作品を読んでもらっています。

 

中学2年生から新人賞に応募していた

――ミステリの新人賞に初めて応募したのはいつですか。

【真門】中学2年生です。当時、自分が中学生であることをメタ的に扱ったトリックを思いついて、中学生であるうちに投稿しないと使えなくなると思ったことが応募のきっかけです。その作品は落ちてしまったのですが、中学生特有の過剰な自信があったので、続ければ受賞できるんじゃないかと思ったんですね。

それから毎年応募するようになって、そう簡単じゃないとだんだん現実がわかってくるのですけど(笑)。自分の作品を客観的に見られるようになってきたころに、やっと受賞できました。

――「ミステリ」との最初の出合いを教えてください。

【真門】小学3年生のとき、学校の図書室で出会ったはやみねかおる先生の作品ですね。その影響で、実際にミステリを書いてみたりしました。そしてひと通り子供向けの小説を読み終わったあと、東野圭吾先生や米澤穂信先生の作品に出合いました。大人向けのミステリの世界への橋渡しをしてもらった気がします。

中学生のときにいわゆる「新本格ミステリ」にハマりました。予想を裏切られる驚きと、解決へと導くロジックの面白さに感動し、このジャンルを書いていきたいと思うようになりました。

――ミステリーズ!新人賞を受賞した翌年の2023年、新人発掘プロジェクト「カッパ・ツー」に応募し、見事に選ばれて『バイバイ、サンタクロース 麻坂(まさか)家の双子探偵』が刊行されました。

【真門】応募した時期は「カッパ・ツー」の方が先で、同時に選考が進んでいました。自分の好きな新本格ミステリの面白さを詰め込んだ作品です。

――この作品は麻耶雄嵩(まや・ゆたか)さんの影響を受けておられる気がしましたが。

【真門】中学生のときによく麻耶さんの作品を読んでおり、本格ミステリにのめり込むきっかけとなった作家さんなので、影響を受けていると思います。当時から使っていた「真門浩平」というペンネームは、本屋で自分の本を麻耶さんの近くに並べたくて、五十音順で「まやゆたか」に一番近いということで決めたものなんです。

――今はお仕事をされながら書かれていますが、執筆の状況はいかがでしょうか。

【真門】平日は仕事があるので、週末を小説の時間にあてています。もともとトリックなどを思いつくペースが速い方ではないと思うので、忙しさのために執筆が進まない、という感じはあまりしないですね。

――今後の予定が決まっていたら教えていただけないでしょうか。また、これから書きたい作品についても教えていただけますか。

【真門】光文社の雑誌「ジャーロ」の9月号に短編を掲載させていただく予定です。記憶力を競う「メモリースポーツ」を題材にしたミステリで、ロジックにこだわった一作になりました。その先は特に決まっていませんが、頭脳競技を題材にし、似た方向性で書けるのではと考え中です。

ミステリの知的な面白さを軸に、読者を楽しませられる新鮮な作品を書けたら良いなと思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 

プロフィール

真門浩平(まもん・こうへい)

作家

1999年アメリカ生まれ。東京大学大学院修士課程修了。2022年、「ルナティック・レトリーバー」で第19回ミステリーズ!新人賞を受賞。23年、「麻坂家の双子喧嘩」で新人発掘プロジェクト「カッパ・ツー」第三期入選(刊行の際に『バイバイ、サンタクロース 麻坂家の双子探偵』と改題)。24年、「ルナティック・レトリーバー」を含む作品集『ぼくらは回収しない』を刊行する。

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