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一流は「金曜日」の過ごし方が違う 仕事の質を高める時間の使い方

越川慎司(株式会社クロスリバー代表取締役社長)

2026年10月21日 公開

一流は「金曜日」の過ごし方が違う 仕事の質を高める時間の使い方

現在、株式会社クロスリバーの代表取締役社長を務め、過去にはマイクロソフトで業務執行役員を務めていた越川慎司さん。成果を出す一流のビジネスパーソンと働いてきた中で、「世界の一流ほど、平日の時間の使い方を意識していた」と語ります。本稿では、「金曜日に意識したいこと」「一流が平日の夜にしないこと」について見ていきましょう。

※本稿は、越川慎司著『世界の一流は「平日」の夜に何をしているのか』(クロスメディア・パブリッシング)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

金曜日の負担を軽減することで結果につながりやすくなる

金曜日に、その週の遅れを取り戻そうと残業をする人は少なくありません。しかし、火曜日と水曜日に全力を投じる一流のビジネスパーソンは、金曜日には大きくペースを落としています。彼らは金曜の午前中に残務を処理し、午後は会議を入れない時間に設定して、翌週の準備や週末の計画を整える時間に充てています。

彼らは金曜日の15時頃から週末の予定を立てたり、早めに仕事を切り上げたりすることで、金曜日の夕方から一足先に休日モードへと切り替えます。この早い段階でのスイッチの切り替えが、心身の回復を早めるのです。

一方で、成果を出せない人は金曜日の夜まで残業をして疲弊し、土曜日の朝を強い疲労感とともに迎える傾向があります。金曜日の負担を軽減することが仕事の結果につながりやすい理由は、次の3つの点に整理できます。

【理由①】金曜日で1週間の印象が決まる

1つ目は、心理学者で行動経済学者のダニエル・カーネマンが提唱した「ピークエンドの法則」による心理的影響です。人間は一連の経験を「最も強烈な瞬間」と「終わり方」で記憶し評価するため、1週間の終わり方である金曜日の過ごし方が、週全体の印象を決定づけるのです。

金曜の夜を疲労困憊で終えると、その1週間は「疲れた5日間」として記憶されます。対して、穏やかに1週間を終えることができれば「充実した5日間」として記憶され、週末以降のマインドセットが大きく向上します。金曜日の午後に意識的にペースを落とすべき理由は、この記憶のメカニズムにあります。

【理由②】疲労の持ち越しを防ぐ

2つ目は、身体的な疲労の持ち越しを防ぐためです。金曜日に全ての力を出し切ってしまうと、土日は心身の回復だけで時間が過ぎてしまいます。

その結果、週末を本当の意味でのリフレッシュや次週への備えに充てる余裕が失われ、月曜日の始動が鈍くなることにより、1週間全体のパフォーマンスが低下します。前の週の金曜日に無理をすることが、皮肉にも翌週の成果を下げる悪循環を生み出すのです。

【理由③】思考のスペースを確保する

3つ目は、思考の”スペース”を確保するためです。金曜日の午後にあえて予定を詰め込まない時間を持つことで、1週間の出来事を振り返り、来週の優先事項を整理する余裕が生まれます。この思考のスペースがあるからこそ、一流のビジネスパーソンは月曜日の朝に「今週取り組むべきビッグロックは何か」ということについて、明確な答えを持って出社できます。

 

金曜の夕方から休日モードへ切り替える

金曜日の夕方を軽くして土日のエネルギーを温存し、家族や友人との時間を楽しみながら次週への準備を整える。そうすることで、月曜日を最高の状態でスタートできます。このリズムを1週間の中に組み込んでいるからこそ、ピークゾーンである火曜日と水曜日に最大の成果を出し、1週間全体での生産性を高められるのです。

私自身もこの数年間、金曜午後の過ごし方を工夫してきました。具体的には、金曜の午後に会議を入れず、ノートに1週間の振り返りを書き出し、翌週の優先順位を確定させてから帰宅するようにしています。

この習慣を継続したことで、月曜朝の心理的な負担が明らかに軽くなりました。金曜の夜を「今週もなんとかやり切った」という疲弊感ではなく、「来週が楽しみだ」という前向きな心持ちで迎えられています。

こうした考え方は、ドイツやオランダといった欧州のテクノロジー企業の幹部たちからも、しばしば耳にするものです。ドイツでは、金曜の午後に働き続けている人は「1週間の設計ができていない人」と見なされる傾向にあります。日本では金曜の夜まで会社に残る人が「頑張っている人」として肯定されがちですが、欧州のビジネスシーンでは全く逆の解釈がなされています。

この背景には、仕事の後の時間を指す「ファイアーアーベント」というドイツ独自の文化が存在します。これは「退勤後の夕べ」を意味し、仕事が終わった後の自由な時間をドイツのビジネスパーソンは非常に大切にしています。

とくに金曜の夕方は、1週間で最も重要なファイアーアーベントと位置づけられており、仕事によってその時間が奪われないよう徹底されています。こうした文化的な土壌があるからこそ、金曜の午後を軽くする習慣が社会に根付いているのです。

日本の職場環境において、金曜午後をすべて自分のために使うことは容易ではないかもしれません。しかし、予定を無理に詰め込まないというマインドを持つだけでも、1週間の質は大きく変わります。まずは「金曜の16時以降は新しいタスクを受けない」といった、実行可能な小さなルールを設けることから始めてみてください。

 

一流が平日の夜に絶対にしないこと

ここからは世界の一流が平日の夜に「やらないこと」を紹介します。

彼らは自らのコンディションを整え、仕事のパフォーマンスを向上させるために、取り組むべき課題だけでなく、避けるべき行動も明確に定めています。その時々の状況に応じて変化する「やるべきこと」とは異なり、「やらないこと」の基準は常に一定です。この「しない習慣」を毎晩守ることは、コンディションの安定に繋がり、翌朝のパフォーマンスを支える土台となります。

私がマイクロソフトでグローバルのエグゼクティブたちと仕事をしていた際、彼らが夜の行動に関して「しないこと」を語る場面に何度も遭遇しました。お酒を飲み過ぎない、寝室にスマホを持ち込まない、何となく夜を過ごさないといった決まりごとは、彼らにとって義務ではなく、自らのコンディションを守るための能動的な選択でした。

世界の一流が平日の夜に絶対にやらない習慣は、大きく分けて3つあります。

【夜のNG習慣①】寝室にスマホを持ち込む

マイクロソフトのエグゼクティブたちは、寝室をデジタルデバイスから完全に切り離された空間にするべきだと口を揃えていました。スマートフォンが枕元にあると、仕事の連絡に対応してしまったり、目的なく動画を視聴したりしてしまいます。彼らは、端末を寝室の外に置くだけで睡眠の質が向上し、翌朝の思考が明快になることを実体験として理解していました。

【夜のNG習慣②】夜の予定を決めていない

一流のビジネスパーソンは、帰宅前やその日の早い段階で、夜の時間を何に使うかをあらかじめ決めています。帰宅して疲労を感じている状態で意思決定を下すのは困難ですが、事前に「読書か運動をする」と決めておけば、迷わずその通りに行動できるからです。

明確な意図を持たずに夜を迎えると、脳はスマートフォンのスクロールやテレビの視聴といった、安易で受動的な刺激に流されてしまいます。こうした行動は、脳にとって負担が少なくラクではあっても、本来必要な回復には寄与しません。

マイクロソフトでは、多くの社員が意図的にデジタル・デトックスの時間を作っていました。創業者のビル・ゲイツは、「Think Week」と呼ばれる、デジタルデバイスを手放して読書と思考だけに集中する週を年に1、2度設けていました。これは特定の期間での取り組みですが、日常の夜においても、意図を持って過ごすという姿勢は共通しています。

【夜のNG習慣③】翌朝に疲れを持ち越す行動をする

一流の人たちは、翌朝に疲れを残さないことを夜の生活設計における最優先事項に据えています。こうした配慮は単なる健康管理の枠を超え、翌朝を最高のコンディションで迎えるための戦略的な選択といえます。

身体的な負荷を最小限に抑えるために、深酒や遅い時間の食事を徹底して避けます。同時に、脳を興奮させたまま眠りにつかないよう、入眠前の過ごし方にも注意を払っています。

仕事のことを考えながら眠りにつくことも、翌朝に疲れを持ち越す要因になります。未解決の問題や翌日への不安を頭の中で反芻し続けると、体は横になっていても、脳が情報処理を続けてしまいます。この脳が休まらない状態こそが、朝になっても疲労が抜けない原因となります。

就寝前に懸念事項を紙に1行書き出すだけで、脳へ情報を「手放す」というシグナルを送ることが可能です。深く心地よい眠りを得るために、この習慣を取り入れてみることをお勧めします。

「しない習慣」を実践することは、「する習慣」を身につけるよりも難しくありません。今夜からスマートフォンを寝室に持ち込まないと決めるだけで、翌朝の自分に変化が現れます。世界の一流が活力を持って朝を迎えられるのは、意志が強いからではなく、前夜の過ごし方を意識的に設計しているからです。

プロフィール

越川慎司(こしかわ・しんじ)

株式会社クロスリバー代表取締役社長

2005年に米マイクロソフトへ入社し、後に日本マイクロソフトの業務執行役員としてPowerPoint、Excel、Word、Microsoft Teamsなど、主要プロダクトの事業責任者を歴任。

2017年、株式会社クロスリバーを設立し、全メンバーが週休3日制と複業(専業禁止)を実践する独自の働き方で、これまでに800社以上の業務改善・働き方改革に携わる。教育者としても活動し、京都大学大学院をはじめとする教育機関で教壇に立つ一方、年間400件を超えるオンライン講座を展開。受講者満足度は平均98%を誇り、学んだ内容を実際の行動に移す受講者が95%を超えるなど、確かな成果を上げている。

著書は直近8年間で32冊に上り、『仕事の「ムダ」が必ずなくなる 超・時短術』(日経BP)や『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は海外でも翻訳・出版されベストセラーとなる。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」ほか、多数のメディア出演実績を持つ。数字に裏打ちされた具体的なノウハウと豊富な実績を基盤に、組織と個人のパフォーマンス最大化を支援し続けている。

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