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2026年10月改正「106万円の壁」がなくなった? 知らないと損する「年収の壁」総まとめ

高橋創(税理士)

2026年11月02日 公開

2026年10月改正「106万円の壁」がなくなった? 知らないと損する「年収の壁」総まとめ

2026年10月、「106万円の壁」が撤廃される――そんなニュースを目にした人も多いだろう。しかし「壁」と名のつく制度はこれだけではない。2025年の税制改正でも「103万円の壁」が「178万円の壁」に変わるなど、税金と社会保険、それぞれに複数の「壁」が存在し、混同している人も少なくない。「壁がなくなる=働きやすくなる」と単純に喜んでいいのか。書籍『給与明細から学ぶお金のキホン』(日東書院本社)をもとに、いま知っておきたい「○○の壁」を整理する。

※本稿は、高橋創著『給与明細から学ぶお金のキホン』(日東書院本社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

そもそも「壁」は1つじゃない

社会保険の壁
「社会保険の壁」(『給与明細から学ぶお金のキホン』より)

「○○の壁」とは、パート・アルバイトなどの年収が一定額を超えると、税金や社会保険料の負担が生じたり、扶養から外れたりする年収の境目のことだ。ややこしいのは、これが「社会保険の壁」と「税金の壁」という、まったく別の2種類のしくみに分かれている点にある。

「社会保険の壁」は、扶養している家族の社会保険(健康保険・年金)から外れて自分で保険料を払うかどうかの境目、「税金の壁」は所得税や扶養に関わる控除などに関係する境目を指す。ニュースで話題になっている「106万円の壁」は「社会保険の壁」の一つだ。

 

社会保険の壁は4段階

社会保険には、年齢や立場によって「180万円」「150万円」「130万円」「106万円」といった基準がある。

「180万円の壁」は60歳以上の人などが対象で、これを超えると社会保険上の扶養から外れ、本人の収入に対して保険料が発生する。「150万円の壁」は19歳以上23歳未満、「130万円の壁」は一般の対象者が同様の境目となる。

そして「106万円の壁」は、一定の条件を満たす短時間労働者が社会保険に加入することになる基準である。

これまでは、①週の勤務時間が20時間以上、②給与が月額8.8万円以上、③2カ月を超えて働く予定がある、④学生ではない、⑤従業員数51人以上の企業で働いている、という条件をすべて満たす場合などに加入対象となっていた。

 

「106万円の壁」撤廃で変わること

税金の壁の一覧
税金の壁の一覧(『給与明細から学ぶお金のキホン』より)

2026年10月に撤廃されるのは、これまでの条件のうち、②「給与が月額8.8万円以上」という賃金要件だ。

これにより、週20時間以上働くなど他の条件を満たす人は、月収が8.8万円未満でも社会保険の加入対象となり得る。

つまり撤廃によって、これまで月額賃金の条件によって対象外だった人にも、新たに加入義務が生じる可能性があるということだ。

なお、従業員数の要件も段階的に縮小される。2027年10月からは、これまでの「51人以上」から「36人以上」の企業へと対象が広がる予定だ。その後も対象企業は順次拡大され、2035年10月には企業規模の要件が撤廃される予定となっている。年金制度の見直しを背景に、社会保険の加入対象は今後も広がっていく方向にあることは覚えておきたい。

 

税金の壁も、実は変わっている

社会保険の壁とは別に、税金の壁も見直しが続いている。

税制改正により、「扶養控除・配偶者控除」は123万円から136万円に、「特定親族特別控除」は150万円から159万円に、「配偶者特別控除」は160万円から169万円に、そして所得税を負担することになる壁(かつての「103万円の壁」)は160万円から178万円に、それぞれ引き上げられた。

また、一定の年収を超えたら、いきなり控除がなくなるわけではない。「特定親族特別控除」は197万円以下まで、「配偶者特別控除」は207万円以下まで、収入に応じて段階的に控除を受けられる仕組みが用意されている。

「壁を超えたら一気に負担が増える」というより、「収入に応じて控除額が少しずつ減っていく」という設計に近づいている点は、以前との大きな違いだ。

※扶養控除…扶養している親族がいる場合に、所得から一定額を差し引ける制度。
※配偶者控除…一定の所得以下の配偶者がいる場合に、所得から一定額を差し引ける制度。
※特定親族特別控除…19歳以上23歳未満の親族の所得が一定額を超えても、段階的に控除を受けられる制度。
※配偶者特別控除…配偶者の所得が一定額を超えて配偶者控除の対象外になっても、段階的に控除を受けられる制度。

 

178万円までなら所得税はゼロ

2026年分の所得税について、パートやアルバイトなどで給与収入だけを得ている場合、年間収入が178万円以下であれば所得税はかからない。これは、給与から「給与所得控除」と「基礎控除」を差し引くと、課税対象となる所得がゼロになるためだ。

以前は所得税がかからない年収の目安が103万円で、これが「103万円の壁」と呼ばれていた。しかし税制改正により、その目安は178万円まで引き上げられている。

基礎控除の額自体も、納税者本人の合計所得金額に応じて段階的に変わる仕組みになっており、所得が低いほど控除額は大きく、高所得になるほど控除額は小さくなる。

 

結局、何に注意すればいいの?

社会保険の壁と税金の壁は、それぞれ別のタイミング・別の条件で見直されている。「106万円の壁が撤廃される」というニュースだけを見て安心せず、自分がどの壁の対象になっているのか、年齢、雇用先の従業員数、扶養に入っているかどうかなどを確認しておくことが欠かせない。

最新の制度は法改正によって見直される可能性があるため、働き方を考える際は、その都度情報を確認するようにしよう。

プロフィール

高橋創(たかはし・はじめ)

税理士

東京都出身。東京都立大学(現首都大学東京)経済学部卒業。平成16年に税理士試験合格後、平成19年2月に高橋創税理士事務所を開設し独立開業。税理士業のかたわら、新宿ゴールデン街のバー『無銘喫茶』のオーナー、 YouTube『二丁目税理士チャンネル』、 ネットショップ『経費擬獣図鑑』の運営なども行う。

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