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「巨額の赤字国債」の原因は社会保障費ではない...630兆円をドブに捨てた日本

2022年03月21日 公開

大村大次郎(元国税調査官)

日本の巨額赤字国債の実態

2020年の調査で日本の平均賃金はOECD加盟35カ国の中で22位であり、19位である韓国よりも年間で38万円ほど安くなっているという。

この長い日本低迷のきっかけとなった「バブルの崩壊」は、実はベルリンの壁の崩壊が大きく関係している。その経緯を戦後の日本経済の歩みとともに紐解いていきたい。

※本稿は大村大次郎著『お金で読み解く世界のニュース』より一部抜粋・編集したものです。

※初出時に広義として「公共事業」と表記しておりましたが、定義の違いにより誤解を招く可能性があるため「公共投資」と変更させていただきました

 

ソ連の崩壊により奇跡的にアメリカ経済が復活

80年代、軍拡競争と産業の斜陽化のため瀕死の状態となっていたアメリカ経済に、思いもよらない幸運が訪れる。

ソ連と東ヨーロッパ共産主義陣営が崩壊したのである。

1989年、ドイツのベルリンの壁が壊され、東ヨーロッパの共産主義圏が事実上崩壊し、さらに1991年にはソ連という国家までもが消滅した。

これにより、アメリカは、ソ連との軍拡競争を行う必要がなくなり、軍事費や他国への支援を大幅に削減することができた。

そしてアメリカは世界で唯一の超大国となった。

この東西冷戦の終結により、アメリカの対外政策は一変した。他国に対して、強硬な態度を取るようになったのである。特に、これまで気を使ってきた同盟諸国に対して、強い態度を取るようになった。

その顕著な例が、日本である。

アメリカは、1970年代以降、貿易赤字が常態化し、赤字額の累積に苦しんでいた。その最大の原因は日本だった。

アメリカの貿易赤字の7割を日本が占めていたこともあり、1987年には対日貿易赤字は600億ドル近く(当時の日本円で10兆円前後)に達していた。

このまま、貿易赤字が累積すれば、アメリカ経済は破綻してしまうかもしれない、そう考えたアメリカは、「最大の貿易赤字相手国である日本をどうにかしよう」ということになったのだ。

そこで、アメリカは「日米構造協議」という会議を日本に働きかけた。

日米構造協議というのは、「日本の巨額の対米貿易黒字(アメリカから見れば対日貿易赤字)を縮小するために、日本とアメリカで、お互いの是正すべき点などを指摘し合う」という目的で始められたものである。

1989年にブッシュ大統領から宇野首相へ働きかけて開始され、1992年までの間に、5回会議が行われた。

それまでも、各産業での個別の是正交渉などは行われていたが、両国の経済社会、産業全般に関して、問題点を指摘し合うというのは、これが初めてのことだった。

そして、この交渉は「両国がお互いの問題点を指摘し合う」ということになってはいるが、実際は、「アメリカが日本に対して指摘する」ということが主だった。

国同士の力関係から、そうならざるを得なかったのだ。

「相手国の経済社会の問題点を指摘し合う」などというのは、普通に考えれば「内政干渉」である。

しかし、アメリカはそれをごり押ししてきたのである。

この「日米構造協議」は昨今の日本とアメリカの経済関係を見ていくうえで、無視することはできない。現在の日本の経済自体に多大な影響を与えているのである。

アメリカは、対日貿易赤字の原因は、日本市場の閉鎖性にあると考えていた。

日本の市場は、不公正で未成熟なので、アメリカの商品が入っていけない。だから、その不公正をやめさせ、先進国として成熟した市場にさせたいということだった。

日米構造協議でアメリカが日本に求めた主な内容は、次の三つである。

・日本の貯蓄、投資バランスを改善するために、政府が大規模な投資を行うこと
・大規模店舗法など流通制度を見直すこと
・土地政策を改善すること

他にも諸々あったが、アメリカが真に強く求めたのは、この三つだといえる。

そして、この三つに関して、日本は実際に是正策を講じたのだ。

その結果、日本側の施策の失敗もあって、日本の経済社会は大きく混乱し、バランスを崩した。

 

日本の巨額赤字国債の本当の原因

日本は、このアメリカの要求を受け入れた。

1990年にその当時の日本の首相であった海部氏がアメリカに対する公約として、今後10年間で430兆円の公共投資を行うと明言したのだ。その後、村山内閣のときに、この公約は上方修正され630兆円にまで膨らんだ。

1年に63兆円を10年間、つまりは630兆円である。

この巨額の公共投資が、日本経済に甚大な厄災をもたらすことになる。
「他国に公共投資を強いる」というアメリカの姿勢にももちろん問題はある。しかし、この公共投資に関しては、日本側の対応が最悪だった。

そのため、この公共投資は日本経済に多大なダメージを与えたのだ。バブル崩壊後の長い不況、「失われた20年」の要因の一つと言ってもいいはずだ。

何が失敗だったのか?

まずは、その額の大きさである。630兆円というのは明らかに異常な額である。

日本の年間GDPをはるかに超える額であり、当時の国家予算の10年分である。当時の社会保障費の50年分以上である。それを丸々公共投資につぎ込んだのである。

いくら当時の日本政府が財政を健全化していたといっても、こんな負担に耐えられるはずがない。当然のように、あっという間に、巨額の財政赤字を抱える羽目になった。

現在の国の巨額の借金というのは、間違いなくこのときの630兆円の公共投資が原因なのである。

国は、現在の巨額の赤字国債について、「社会保障費の増大で生じた」などと弁明しているが、数理的に、どこからどうみても無理がある。当時の社会保障費は、わずか11兆円ちょっとである。公共投資費は年間60兆円以上だった。誰がみても、どちらが借金の原因かは一目瞭然だろう。

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