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“新卒がすぐ辞める”企業の採用活動における「給与面以前の大きな問題」

鳶本真章(組織開発デザイナー)

2023年02月02日 公開 2024年09月12日 更新

“新卒がすぐ辞める”企業の採用活動における「給与面以前の大きな問題」

昨今、話題になっている「すぐに辞めてしまう新入社員」。若者の忍耐力の無さが問題視されがちだが、"すぐに辞めてしまう"原因となっているのは、企業の「ミッションの不在・浸透不足」にある。

新著『ミッションドリブン・マネジメント』を上梓した鳶本真章氏。本稿では同書より、ミッションの不在の会社でよく見られる、場当たり的な採用活動の実情について書かれた一節をご紹介する。

本稿は、鳶本真章著『ミッションドリブン・マネジメント』(技術評論社)を一部抜粋・編集したものです。

 

「〇人採用」が目標という問題

人材は最も重要な経営資源と言えます。いい人材の採用は、どの企業にとっても課題でしょう。僕は、採用について相談されることが多くあります。

「来年度、新卒を200人採用したいんです」

採用人数が目標として決まっており、そのためにどうしたらいいかという相談です。

理由を聞くと「今年度200人採用だったので」。過去の実績ベースで目標を決めています。「今年の採用人数は120だったが、辞めた人が多いので来年度は200人必要」というような場合もあります。

過去の実績+現状のポジションで空いているところを埋めるという考え方で採用人数を決めているのです。このパターンがほとんどです。

そのうえで、よさそうな人トップ200を採用したい。できるだけよさそうな人に来てもらうにはどうしたらいいか。200人採用したいのに、100人しか面接に来てくれなかったら困ります。「1000人の中からトップ200を選びたいが、どうすればいいか」というような相談であるわけです。

もちろん、たくさんの人が「働きたい!」と言ってくれればそれに越したことはありません。いい人材を選びやすくなるのは事実です。しかし、その前に「どういう人材が欲しいのか」が明確でなければいけません。

一般的に言って「いい人材」が、その会社にとって「いい人材」かどうかはわかりません。本来、会社のミッションに共感していることが最重要なはずです。ミッションのためにモチベーション高く行動することができる人材こそ、その会社が欲しい人材です。

しかし、明確な人材像がないまま採用活動をすると、どうなるか。目標の200人を採用できたとしても、辞める人が多くなります。

とにかく200人採用できれば、1年後に50人しか残っていなくてもかまわないのでしょうか?

そんなはずはありません。200人採用して150人辞めるなら、最初から「辞めない50人」を採ったほうがいいでしょう。採用・教育にはコストがかかりますし、引き継ぎ時のトラブルなどのコストも発生する場合があります。

「やはりこの会社は合わないから辞めたい」というのは、無視できない損失を生んでいるのです。会社にとっても、本人にとってもです。「こんなはずじゃなかった」と思いながら仕事をする時間が長引けば、本人のキャリアや人生によくない影響があるでしょう。

ですから、採用人数のみを目標とするのはまちがっていると言えます。

「新卒で〇人、第二新卒で〇人」と目標が決まっているケースもありますが、これも正当な理由がないことが多いです。日本では新卒を特別扱いしており、新卒でないと入社できない会社も多く存在します。

会社のミッションを実現するため、長期間かけて社員を育成していく必要があって新卒にこだわるというのならわかりますが、ほとんどの場合は「慣例」でしかありません。

 

採用してもすぐ辞めるという問題

「最近の若者はすぐ辞める」

やるせない表情でそう語る経営者や人事担当者は多くいます。とくに2000年代以降、「すぐに辞める新入社員」が話題になり、問題視されるようになりました。

厚生労働省の調査(※1)によれば、3年以内に離職した新規学卒者は、高卒で約4割、大卒で約3割(令和2年度)。産業別では「宿泊業・飲食サービス業」の3年以内離職率が最も高く、高卒で約6割、大卒で約5割です。

データだけ見れば、飲食サービス業で新入社員を100人採用したら、3年後には半数以上辞めているのが普通ということです。

なぜ、そんなに多くの人が辞めてしまうのでしょうか。「最近の若者は」と言いますが、辞めた本人にばかり責任があるわけではないでしょう。

内閣府がおこなった調査(※2)では、若者(16~29歳)がはじめて就職したあとに辞めた理由は「仕事が自分に合わなかったため」が最も多く、約4割(複数回答可の結果)となっていました。

現代は終身雇用の時代ではなく、「合わないなら辞めていい」がスタンダードになりつつあります。

昔は、合わないと思っても会社を辞めるハードルは高かったはずです。長く勤めるほど賃金や役職が上がって優遇される設計になっており、転職市場も小さかったからです。

右肩上がりに経済が成長しているときは、そもそも「仕事が自分に合う・合わない」に意識が向きにくいこともあったでしょう。

そう考えると、現代の新入社員が「仕事が合わないから」といって辞めていくのは当たり前です。合わない仕事に向き合って長くい続けるメリットがありません。ですから、「最近の若者は我慢が足りないのだ」といった考えはまちがっています。

離職率を下げたいのであれば、「会社に合う人を採用する」こと。これに尽きます。「そんなことはわかっている」と言われそうですが、実際、できていないから辞めていくのです。

※1 厚生労働省資料「新規学卒就職者の離職状況を公表します」 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00004.html
※2 内閣府資料「特集 就労等に関する若者の意識」 https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h30honpen/s0_0.html

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辞めるのは、入社前と話が違うから

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