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東進ハイスクール・安河内哲也の 「話せる人」を目指す英語勉強法

安河内哲也(東進ハイスクール 講師)

2014年02月06日 公開 2024年12月16日 更新

『THE21』2014年2月号特集「日本人にいちばん合った英語勉強法」より

 

日本人に圧倒的に足りないのは「会話力」だ
全勉強時間のうち50%を音読に充てよう

 

ネイティブ同様に話すなんてムリだ

 英語に関する4つの技能、「話す」「読む」「聞く」「書く」のうち、日本人が最も苦手としているのは、「話す」でしょう。中学校から大学まで英語を学び、就職後も教材などで勉強しているのに、まったく話せない人はたくさんいます。

 日本人が英語を話せないのは、勉強の仕方がズレているから。「話す」ためのトレーニングが足りないからです。

 英語を話せるようになるには、何か言われたとき、頭で考えなくても、無意識に言葉が出てくる反射神経を鍛える必要があります。この反射神経は、机上の勉強だけでは鍛えられません。文法や語彙などの知識を学び、音声を聞くだけでは、無意識に言葉が出てくるようにはならないのです。TOEICで900点を獲得しているのに、英語が話せない人がたくさんいるのは、その証拠です。

 しかし、正しい方法でトレーニングをすれば、誰でも反射神経を鍛えることができ、英語を話せるようになります。効果は、私自身が体験済みです。そのトレーニング方法をお伝えしましょう。

 具体的なトレーニング方法の説明に移る前に、1つ、頭に入れておいてほしいことがあります。それは、「ネイティブスピーカー幻想を捨てる」ということです。

 「ネイティブのように、流暢に話したい」。そんな理想を描く人は多いようですが、母語ではない英語でそれを実現するにはとんでもない時間がかかります。私は英語に20年以上携わり、日々英語を使っていますが、それでもネイティブのようには話せません。

 にもかかわらず、ネイティブレベルを目指すと、理想と現実のギャップがなかなか埋まりません。だから、途中で英語の勉強が嫌になるわけです。

 そもそも、ネイティブのように話す必要があるのでしょうか。世界的にみれば、英語を使う人の多くはノンネイティブであり、その国々のなまりのある英語を話しています。日本人なまりの英語を話したからといって、誰も何とも思いません。またノンネイティブの多くは、ネイティブが使う難解な熟語を理解できませんから、そんな熟語を使っても、困惑されるでしょう。

 ネイティブレベルを目指すのは「変な英語を使ったらネイティブに笑われる」という一種の欧米コンプレックスもあるのでしょうが、引け目を感じる必要はありません。ネイティブはたまたま母語が英語であるだけで、偉くも何ともないのです。

 世界の人々と話すなら、ノンネイティブレベルの英語が話せれば、十分。まずは、そのレベルを目指しましょう。

 

何度も音読すれば頭に刷り込まれる

 以上を踏まえ、具体的なトレーニング法をお教えしましょう。

 最初のステップは、「中学英語の文法を学ぶこと」です。

 中学校の教科書は非常に良くできていて、日常会話に必要な文法はほとんど学べます。仮定法のようないくつかの高校英語をプラスすれば、会話で使う文法はバッチリです。中学英語の文法の基本をマスターすれば、あとは単語を入れ替えるだけで、さまざまな会話ができます。

 ただし、中学英語の文法の理論を研究するだけでは、無意識に言葉が出てくるようにはなりません。そのために不可欠なのが、「音読」です。

 基本的な文章を何度も音読し、頭に刷り込ませることで、英会話をするときにも、無意識にその文章が出てくるようになります。黙読ではなく、声に出すことによって、動的記憶として残るのです。ピアノの楽曲を繰り返し練習することで勝手に手が動くようになりますが、それと同じ原理ですね。

 このトレーニングを習慣づけることで、無意識に話せる言葉が増えていきます。基本的な文法に加えて、単語集も音読することで、語彙も増やせます。

 具体的な音読の方法は、次項にまとめたので、参考にしてください。脳に染み込ませるためには、全勉強時間のうち、最低50%は音読に充てたいところ。私の場合は、勉強時間の70%は音読に費やしていました。

 初めから長時間の勉強を自分に課すと、三日坊主になりますから、最初は、毎日1分から始めましょう。1分のつもりでも、一度やり始めれば、10分くらいはやるものです。それを毎日続ければ、いつの間にか習慣化されるでしょう。

 そして、ある程度音読トレーニングをしたら、実戦の場で、どんどん使ってください。最近では、フィリピン人とスカイプで英会話ができるサービスが格安で利用できますし、外国人のたまり場になっているバーに行けば、いくらでも話すチャンスが得られます。

 そう言うと、「外国人と話すのは、完璧に話せるようになってからにしたい」と言う人がいますが、それでは、いつまで経ってもうまくなりません。使ってみないと、発音や言葉遣いの間違いに気づけないからです。怒られたり、笑われたりすることもあるかもしれませんが、そうして間違いに気づき、修正することを繰り返す以外に、英会話の上達の道はありません。

 それに、1人で勉強して、知識をつけ過ぎると、聞違えることが怖くなり、話せなくなります。

 実は私も、大学時代にそんな時期がありましたが、アメリカを旅行したとき、考えを改めました。ユースホステルで、ネイティブとノンネイティブが国際政治や経済について議論していたのですが、前置詞なんてムチャクチャだし、「三単現のS」のルールなんて誰も守っていない。しかし、話は盛り上がっているのです。間違うのを恐れて黙っていた私は、その姿を見て、「なんてつまらないことを気にしていたのか」と気づかされました。

 英語学習の面で、完璧主義は阻害要因になります。英語を話せる自分になりたいなら、完璧を日指す考えを一度捨ててみましょう。

 

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