なぜ、欧州サッカーリーグは外国人だらけなのか?
2014年07月16日 公開 2023年01月11日 更新
EUが進める国境の撤廃
この問題を考えるうえで理解しておかなければならないのがEU(欧州連合)だ。
EUとは、欧州が1つの国のようになるべく設立された地域共同体のこと。1951年にドイツ、フランス、イタリアなどで結成された「ECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)」をルーツとし、「EEC(欧州経済共同体)」、「EC(欧州共同体)」、そして「EU」と次第に規模を大きくしてきた。当初の加盟国は6ヵ国だったが、現在は28ヵ国にまで増えている。
1つの国になるために何を行ったかというと、政治・経済をはじめとしたさまざまな分野における国境の撤廃だ。具体的には1999年にEUの共通通貨「ユーロ」を導入し、2009年にはEU大統領を選出した。こうした一体化の流れのなかで、サッカー選手の「移籍の自由」と「外国人枠の撤廃」も義務づけられたのである。
ボスマン判決により、欧州の移籍市場は一気に活性化した。選手獲得競争が過熱し、選手の移籍金やサラリーが急騰。2001年のジダンの推定移籍金が7350万ユーロ、2009年のクリスティアーノ・ロナウド9400万ユーロ、2013年のベイル9100万ユーロなどと、天文学的なマネーが当たり前のように飛び交うようになった。
しかし、それほどの額を支払えるのは資金力の豊富な一部の金満クラブに限られる。そのため、ビッグクラブと中小クラブとの二極化か進んでしまった。
選手獲得資金を回収できなくなり、経営破綻に陥ったクラブも少なくない。2002年にはイタリアのフィオレンティーナ、2007年にはイングランドのリーズ、2010年にはスペインのマジョルカ、2012年にはスコットランドのレンジヤーズが経営破綻の憂き目を見ている。
EUの理念に基づくボスマン判決は欧州サッカーに華やかさをもたらした。だが一方で、自国選手の占有率の低下やクラブの財政悪化といった弊害を引き起こしたのだ。