なぜ、欧州サッカーリーグは外国人だらけなのか?
2014年07月16日 公開 2024年12月16日 更新
※本稿はサッカーマニア・ラボ著『[図解]ワールドカップで世界がわかる』より一部抜粋・編集したものです
★自国の選手が1人もいない!? EU圈で外国人選手が何人も試合に出られるワケ★
外国人だらけの欧州リーグ
欧州各国のリーグ戦では、試合に出ている選手の大半が外国人選手というケースがよく見られる。ときには、出場選手全員が外国人選手という場合もある。
インクランド・プレミアリーグでは、1999年12月にチェルシーが先発メンバー全員に外国人選手を起用。それから10年後の2009年12月に行われたポーツマス対アーセナルの試合では、双方のクラブの先発メンバー全員が外国人選手という事態になった。
イングランドのリーグなのに、イングランド人プレーヤーがスターティングラインナップに1人もいない――。欧州ではこうした試合も珍しくなくなりつつある。
こうなる理由は、そのクラブにおける自国選手の割合を見るとよくわかる。
プレミアリーグの6強はマンチェスター・ユナイテッド37.5%、マンチェスター・シティ25%、チェルシー20%、アーセナル20.7%、トッテナム・ホットスパー36%、リバプール38.1%といった具合で、自国選手が占める割合は半分にも満たないのだ。
イングランド以外の強豪クラブの自国選手占有率はどうかというと、FCバルセロナが68%と抜きん出て高い以外は、レアル・マドリード52.1%、バイエルン・ミュンヘン53.8%、ACミラン50%、インテル14.8%、パリ・サンジェルマン48%と、5割を超えるクラブはなかなか見当たらず、多くが外国人過多になっている(2014年3月31日現在)。これでは外国人選手ばかりの試合が増えても不思議はない。
一方、日本のJリーグはサンフレッチェ広島86.2%、横浜F・マリノス93.1%、川崎フロンターレ89.2%と、日本人選手の占有率が圧倒的に高いため、外国人選手ばかりになってしまうことはない。
この欧州と日本の差は、外国人選手枠の違いによって生じている。Jリーグでは、1チームあたり3人の外国人選手+韓国などのアジア人選手1人+タイ、ベトナムなどの東南アジア人選手1人、つまり最大5人までしか外国人選手が認められない。これに対し、欧州リーグではEU(欧州連合)国籍をもつ選手は無制限+EU圏外の選手3人まで保有できるのである。
1995年までは、欧州にも外国人選手の保有数に制限があった。欧州各国の国内リーグに外国人枠が設けられており、1つのクラブが契約できる外国人選手は、多くても4~5人に限られていた。
ところが、同年12月に欧州司法裁判所が下した「ボスマン判決」をきっかけに、外国人枠は撤廃されることになった。
ボスマンとは、ジヤン・マルク・ボスマンというベルギー人選手の名前。彼は1990年にRCリエージュとの契約が満期を迎えた際、リーグが定める最低金額の契約金を提示されたことから、フランスのクラブへ移籍しようとした。
当時は契約満了後も前所属クラブがその選手の保有権を持ち続けることと、移籍先のクラブに移籍金を要求することが認められていたため、移籍するには前所属クラブの了承を得なければならなかった。だが、リエージュはボスマンの移籍を認めなかった。移籍先のクラブが移籍金を支払えないのではないかと疑念を抱いたからである。
結局、移籍できずに働き場を失ったボスマンは、リエージュとベルギーサッカー協会を相手に保有権の放棄を認める裁判を起こし、1990年11月に勝訴する。さらにその後、ベルギーサッカー協会とUEFA(欧州サッカー連盟)を相手に裁判を起こし、現行の移籍制度は、EUの法律で定められている「労働の自由」に触れると訴えた。
結果はまたもボスマンの勝訴。1995年12月、欧州司法裁判所は契約満了後ならば移籍金なしで自由に移籍できると認めたのだ。同裁判所は各国の国内リーグが設けていた外国人枠についても、「EU内における移動と就労を制限してはならないというEUの労働規約に反する」と指摘し、撤廃が決まった。