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思考の老化を防ぐ「脳にいい習慣」とは?

和田秀樹(精神科医)

2011年09月22日 公開 2022年12月26日 更新

思考の老化を防ぐ「脳にいい習慣」とは?

昔のようにアイデアが出ない、頑固になった、すぐに答えを急ぐ、突発事態に弱くなった、気持ちの切り替えがうまくいかない……。もしかしたらそれは「思考の老化」が原因かもしれない。多くの人が40代の現役世代から始まるという前頭葉の老化――精神科医・和田秀樹氏が「思考の老化」を防ぐ、脳に良い習慣を紹介する。

※本稿は、和田秀樹著『「思考の老化」をどう防ぐか』より一部抜粋・編集したものです。

 

「ツッコミの習慣」は最良の思考トレーニング

他人の決めつけに簡単に納得するのは「思考の老化」である。テレビの解説でも、書籍の内容に対してでもいいのだけれども、「そうだったのか」と簡単に納得するのをやめてみよう。

昔の中高年は、よくテレビに向かってブツブツと文句を言っていた印象がある。私が関西に住んでいたからでもあるのだろうが、大衆食堂などではテレビに向かって「税金上げて暮らしがよくなる? アホなこと言うな」「きれいな服着て、偉そうなことばっかり」などと、ケチをつけているおっちゃんがいた。

「NHKで阪神が負けた言うとるけど、ウソやないか? よそのチャンネルなら勝っとるのと違うか?」という冗談があるけれども、テレビを見ながら文句を言うのは、当たり前の光景だったように記憶している。

理髪店に行けば「○○はこう言っているけれど、オレに言わせりゃ」式の、テレビやラジオの解説に対してひと言あるような中高年は日本中にいたはずだ。

こうしたツッコミの姿勢は、思考習慣として非常に重要だ。コメンテーターなどの歯切れのいい断定に「そうだったのか」と納得してしまうのは思考の老化だから「本当にそうなのか?」と疑って反論することで、ものを考える習慣ができる。

今はインターネットがあるから、統計の数字などにあたるのも簡単だ。たとえば「昔より少年犯罪が増えて、子どもが残虐化している」というコメントなど、怪しいと思えば自分で統計データを見つけられる。ところが今は「ツッコミの習慣」そのものが希薄になっているように思える。

最近タクシーの運転手さんからよく聞くのは「ビートたけしがこんなことを言っていた。鋭いよなあ」「みのもんたが朝、ズバッと切り込んでいた」といった肯定的な話ばかりで「オレに言わせりゃ」式の人は激減した印象がある。

昔なら「出演1回で数百万もギャラを取っているから、あんなことが言えるんだ」と文句の一つも話していたと思うのだが、「テレビで言っていた」ということに対して素直になり過ぎているように思う。

ここ40年ほどの間に、日本人の平均年齢は30歳から45歳へと急激に上がったため、他者の決めつけに対してツッコミを入れるよりも、すんなりと肯足したほうが楽さや安心感を覚えるようになったとも考えられる。

思考の老化を防ぐには、どんなことにでも「そうだったのか」と納得するのではなく、意識してツツコミを入れることだ。何にでもケチをつけたり、文句ばかり言えという意味ではなく、「それは言い過ぎだろう」「例外が必ずあるはずだ」など心の中で決めつけに対して疑問を抱くことで十分なのだ。

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