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生き方

思考の老化を防ぐ「脳にいい習慣」とは?

和田秀樹(精神科医)

2011年09月22日 公開 2022年12月26日 更新

和田秀樹

前頭葉をショートカットさせない

日常生活は、基本的に同じことの繰り返しである。平日は朝8時に起きて、日中は働いて、夜は少し自由な時間があるけれども、明日に備えて夜更かしはできない、などと私たちはルーティンのタイムテーブルの中で暮らしている。

通勤の途中「今日は取引先に直行だ」と思っていても、つい乗換駅でいつもと同じ改札口に入ってしまった経験がある人も多いだろう。これも一種のスキーマであり、すでに思考をショートカットする回路ができあがっている。日常生活の中では、いちいち次の行動を前頭葉で考えていないのだ。

だから、それを崩すためには、いつもと違う行動をしてみることが大切だ。たとえば週に一度は、ランチで今まで食べたことのない店に入ってみるとか、月に一度、家族で外食するとき、新しいジャンルの料理に挑戦してみるといったことでもいい。

あるいはネクタイの色を、今まで持っている系統とは違うものを買ってみる。エルメスのような店で、グリーンのネクタイを手に取って「これ、お酒落だなあ」と思えば、勇気を出して一本買ってみることだ。

普段とまったく違う色のネクタイをすると、シャツやジャケットがこれに合うかどうか気になる。当然、そこで組み合わせを考える。たとえ日常的な行為でも、いつもと違うことをしたり、いつもと違うものを買ったりするときは、前頭葉をショートカットせずに考える。ここが重要なポイントだ。

年齢を重ねるほど、「昼食はいつもこの弁当屋だ」とか「いつもこのコンビニに行く」といった前例踏襲が多くなる。何となくいつもと同じで、違わないことが当たり前になってくるのだが、これも「思考の老化」を助長していく。

服装の雰囲気がいつもと変わったり、髪を染めたり、ボトックスで顔のシワを取ったりするような、見た目に変化が生じると、周囲の反応にも変化が起きやすい。

それに対応して、当初は考えてもいなかった次の選択肢が生まれるから、脳を活発に働かせることに繋がる。震災後、節電の呼びかけに伴なって「スーパークールビズ」が推奨された。ネクタイをしなくていい、ポロシャツでもいいとなって、毎日何を着て行けばいいか迷う人が大勢出た。

「ネクタイをしていれば楽だった」と感じるのは、今まで毎日の服装について、あまり頭を使ってこなかったからだが、私服で出動する女性は以前から毎日こうした変化に朝から頭を働かせていたわけだ。

「毎日、違うことをする」という思考習慣のきっかけにもなりそうだったが、デパートやスーパーではよくしたもので、スーパークールピズ向けの売り場ができ「これを着ていれば大丈夫です」という無難な商品が並んだ。

日常のルーティンから離れるには、それなりの意識と努力が必要ということなのだろう。

 

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