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脳科学者が語る「不安やストレス」を克服する“前頭葉の育て方”



2020年11月24日 公開

茂木健一郎(脳科学者)

「走ることも前頭葉のトレーニングになる」と茂木健一郎氏は語る
「走ることも前頭葉のトレーニングになる」と茂木健一郎氏は語る(撮影:荒川雅臣)

コロナの影響では一時期、スーパーから米や水、小麦粉やパスタが消え、ドラッグストアからはマスクやトイレットペーパーなどが消えました。1970年代のオイルショック時を髣髴とさせる買い溜めが起きたからです。

このような現象は、国民レベルでの前頭葉の機能低下といわざるを得ません。冷静に考えれば、各人が必要なだけ購入する分には、一気に商品がなくなるということは起こらないのに、論理的に考えることを脳が拒否し、不安に駆られるままデマに飛びついてしまうのが人間の愚かなサガです。

群衆心理に惑わされず、不安やストレスに打ち克つためには、脳の前頭葉を鍛えることが必要だ、と脳科学者の茂木健一郎氏は語ります。では、どうすれば前頭葉を鍛えることができるのでしょうか?

※本稿は、茂木健一郎著『最強メンタルをつくる前頭葉トレーニング』(PHP研究所)の内容を一部抜粋・編集したものです。

 

「キレる若者」は前頭葉の未発達、「キレるお年寄り」は前頭葉の萎縮

ニュースで「キレるお年寄り」や、「キレる若者」が話題になることがあります。過去を振り返っても、「思わずキレてしまった」ことの一度や二度、どなたの人生にもあるのではないでしょうか。

相手の言動に思わず「キレてしまう」現象も、無用な買い占めなどの群衆行動と同様に前頭葉の働きが大きく関与しています。 

喜怒哀楽の感情は側頭葉の「扁桃体」で生まれます。扁桃体は人間の感情を司る部位で、いわば脳の感情システムといえます。

扁桃体はいわば感情の「アクセル」役です。感情のアップダウンをもたらし、脳を混乱させます。一方、前頭葉は感情をコントロールし制御する部位。感情の「ブレーキ」や「ハンドル」役とも呼べるでしょう。

用心して生きていても、予期せぬところで他人との衝突は起こるものです。その時に、扁桃体の感情の赴くまま、怒ったり、メンタルをやられてしまい落ち込んでしまったりするのは、人間の原初的な脳の働きのまま突っ走っているようなもの。

「いやいや、待て、待て。これは相手につられて自分も怒るところか?」
「そもそもこれは、怒るようなことだったっけ?」
「この人との関係は、ここで壊れてしまって本当にいいのか?」

怒る前に、一度立ち止まって考えられることが、「前頭葉」が働いている証拠です。怒りや不安などのストレスが湧いた時、立ち止まってもう一度その意味を考える「再評価」のことを、「リアプレイザル(reappraisal)」と呼びます。

怒りは本能的なものですが、その瞬間的な怒りを周囲にぶちまけるかどうか、ということは前頭葉でコントロールできることです。

「キレやすい」若者が増えた、「キレる」老人が増えた……。

昔から若者がキレやすいのは、前頭葉の未発達がその理由ですし、お年寄りの場合は、脳の萎 縮が進んだ結果、前頭葉がうまく機能しなくなってきたからと説明することができます。

そのことがわかっていれば、もう少し世の中の人に対しても寛容になれるかもしれません。

 

脳トレで前頭葉は鍛えられる?

簡単な計算問題や漢字の読み・書き、クロスワードパズルなどを解く脳トレは、一時期大ブームになりました。ブームが落ち着いた今でも、スマートフォンでできる脳トレアプリが開発されるなど相変わらずの人気ぶりです。

脳トレは、前頭葉を鍛えるために役に立つものなのでしょうか。

結論から先に述べると、脳トレでは前頭葉はあまり鍛えられません。なぜなら、脳トレはルールに則って決まったことをやる、ある種の単純作業だからです。 

もちろん、脳トレには脳トレの良い面もあります。単純計算を解いたり、しりとりや漢字、間違い探しやクロスワードパズルに数独など、脳トレにはさまざまな種類があります。

それぞれ短期記憶を強化したり、認知能力がアップしたり、脳の老化進行を抑えたりといった効果が見られます。楽しんでやる分には、もちろん良いでしょう。

ただし、脳トレをやればやっただけ、脳の実行機能、つまり論理的に物事を考え、計画を立て、問題解決を果たしていく能力が向上するわけではありません。

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