熟年世代で婚活ブーム
2011年10月17日 公開 2023年01月11日 更新
籍を入れない熟年パートナーが主流に?
「東日本大震災のあと、熟年の結婚が増えているっていうけど、本当かしら?」
私は担当のTさんに聞く。
「そんな話、聞きますよね。本当なのか、私も気になります。取材してみましょうか」
私とTさんはかなり本気で、東京・新宿にある中高年専門の結婚相談所「茜会」を訪ねることにした。
私も病気してからすっかり精神的に弱くなっちゃったし、仕事も減っちゃったし(泣)、こんな病気もちでも、もらってくれる人がもしやいないかしらん、と思う日が多々あるんですよ――。
「震災後の2週間ほどは、まるで申し込みがありませんでした。でもそれ以後は、たしかに以前より申し込みは増えています」
茜会広報の村越ひろみさんはいう。
「やっぱり! みなさん、どんな思いでいらっしゃるんですか?」
伺うと、村越さんはいった。
「とくに反応が多かったのは、40歳以上の独身女性です。被災者の方々が避難されている体育館の様子などを報道でみて、『極限状況のなかでも、多くの人は2人以上の家族で一緒にいる。でも、もし東京で震災が起きたら、私は独りぼっちだ……』と、映像に自分を重ね、居ても立ってもいられなくなった方が多いようです」
なるほど。たしかに私もあの日、誰にも電話しない自分、誰からも電話がかかってこない自分にショックを受けた。数人の編集者さん以外、プライベートでは誰からも連絡なかったもんね。あの状況で連絡し合う相手がいないことは、「私の人生、何?」と問い直す十分なきっかけだったのだと思う。やっぱり誰かにとっての一番目でありたいし、自分も大切に思う人をもちたいもの!
村越さんは続けて教えてくれる。
「仕事一本でずっと生きてきて、人から羨ましがられるキャリアや収入があっても、『やっぱり仕事じゃない』と結婚に目を向ける中高年の女性が多いですね。やはり万一のときに駆けつけてくれる誰か、そして経済的に支えてくれる誰かを、みなさん真剣に求めています」
うんうん、私もまったく同じ気持ちです。では男性は?
「男性は、震災がきっかけというよりは、死別や離別で相談に来られる方が多いですね。なかには、奥さまが亡くなった翌日に来られる方もいました。どうにも独りでいられない、どうしていいかわからない、と女性以上に差し迫った方が多いような印象です」
なるほど、真剣さは種類こそ違えど同じくらいということかしら。そしてその真剣さは、年齢が高くなるほどに増すのだそう。60~70歳くらいが最後の結婚のチャンスということもあり、行動がストレートなのだとか。でも、その感じはわかるなぁ。20代や30代だと、とてもそこまで切実にはパートナーを求められないものね。
話を聞くほどに、若い人より熟年の人にとって結婚って必要なんだなって気がしてくる。
「ただ、ここ5~6年の傾向なのですが、籍を入れないパートナーを求める方も増えてきていますね」
ええ!? 結婚を相談しに来るところなのに籍を入れないってどういうこと?
「みなさん、お子さんがいる年齢なので。入籍で子供への遺産配分が減ることに遠慮したり、互いの子供や親戚との付き合いを負担に思う方もいるんです」
はあああ――。親の遺産を当てにして、その幸せを受け入れない子供ってどうかと思いますけどね。私は籍を入れないなんてヤダな。結婚って心の居場所だから、籍を入れてくれないと、すべては受け入れてもらえない宙ぶらりんな感じ。そういうと、Tさんも隣で頷いた。
「たしかに女性は入籍を希望される方が多いですね。でも、昔はありえなかったそんな傾向があるのも事実なんです」
なるほどね。さて、そんな茜会への入会は、7種類のコースのなかから選ぶことができる。まずは特別コースといって、専任のカウンセラーが相手を紹介してくれるコース。月に1人から3人まで、希望の人数によって月会費が異なりますが、入会金は12万円、登録料などが4万円。初期費用16万円(期間1年)に、毎月、月会費+お見合い成立時にお見合い料が加算されるシステムだ。また相手からの申し込みは無料でお見合いができる。
ほかはもっとカジュアルで、「セレクト」「一般」「ハーベスト」「パーティー」コースのなかから、パーティーだけ出られればいいのか、毎月いろんな人を紹介してほしいのか、など本人の希望により選ぶことができる。こちらは初期費用3万円から10万円(期間1年+休会1年)と、かなりリーズナブル。特別コースからして、想像していたよりずっと安い。そのくらいの支払いで、本当に生涯のパートナーが見つかるのかしら――。でも、「いい出会いをされている方がたくさんいるんですよ」と村越さん。
高学歴、高収入、高身長の女性はモテない!
ただし入会には、独身を証明できる書類、住民票、学歴証明(専門学校以上)、収入証明(男性のみ)、写真が必要となる。そのうえで、生年月日、居住地、持ち家かどうか、身長、職業、年収、婚歴、親や子との同居か否か、兄弟姉妹の有無と別居かどうか、入籍を希望するか、子供の有無、趣味、性格、喫煙、運転免許などについて紹介データをつくり、自分とお見合いしてくれる人がいるかどうか、反応を見ることになるわけで――。
「なんか、自分の値段をあからさまに突きつけられる感じ」
いろいろ聞いていて、少し腰が引けるあたくし。昔、こういうところを取材したときには、私は喫煙していたので(ほかにも理由はあるのでしょうが)、ほとんどマッチングがなくて本当に落ち込みました。女性の喫煙は、結婚市場においてはすごく不利になるんですよ。いまは喫煙してないけど――。
「私とお見合いしてくれそうな人はいるでしょうか? さらに私、難病もちなんですけど」
聞いてみると、私をじっとみる村越さん。
「男性への希望条件が高そうですよね。年収3000万円以上くらいからですか?(笑)」
「えええ、そんなタカビーに見えますか? ていうか、そんな条件の男性を紹介してくれるなら、入会しようかしら。やっぱり高収入希望なのがバレてるんですね?」
「いままでご自身でかなり稼いできているのが雰囲気でわかりますので。女性はなかなか自分がいままで自力でしてきた生活から下は想像できませんからね」
わかってらっしゃる! いやらしいと思うんですけど、そうなんですよ。それでずっと「サラリーマンの人と結婚は無理だなあ」なんて思っているあいだに歳を取って、病気になって――。
「高学歴、高収入の女性の特徴ですよ。男性は、高学歴、高収入ほどモテますが、女性は逆。あと女性の高身長も、なかなか難しいですね」
「あ、わかります。男性はどうしても自分より収入や学歴が低い人を求めますよね」
「本当にそうなんですよ。だからじつは、条件で釣り合わせていくのが難しくて――。意外に運命の出会いをするのがパーティーの場なんです。気が合ってしまうと、一瞬で条件を乗り越えてしまう。そのような『神のみぞ知る運命の力』というものを、この仕事をしていると感じます」
そんな運命的な出会いがあるんですか? 聞くと、プライドの高い、国家公務員のキャリア女性が、中卒の大工さんと結婚したケースを教えてくれた。
「こちらが本当に素敵なカップルで。彼女は『毎日、彼にお弁当をつくるのが幸せでたまらない』と……」
「へえええ――!」
本気で仰天。そんな出会いがあったら、どれだけ人生輝くかしら! 低収入や低学歴などの要因も、恋の前にはなんの障害にもならないってことなんだと思う。まさにそれこそ出会いの喜び、人生の幸福っていう気がする。
「ただ、女性は男性の経済力が、男性は女性のセクシャリティーが、ほとんどの場合は譲れない条件ですね」
と村越さん。それもわかるなぁ。詰まるところ、男と女はやっぱり別の生き物で、女は男の強さに、男は女らしさに惹かれるんだろうね。
「つくづく結婚と向き合うと、男女平等教育とか、くだらないって感じるなあ」
お見合いの場でも、昨今は女性が積極的で、男性が弱く、うまくいかない場合が多いそう。いくら結婚相談所に入っても、最後の決め手は自分の恋愛力ってことなのね。結局は結婚できたほうが互いに幸せなんだから、恋愛できるような魅力的な男女になること、子供には結婚に向かわせるような教育をしてあげること、が大切って気がする。
女の子が大学教育を受けられるのは素晴らしいけれど、家事ができたり、女の子らしく振る舞うことはもっと大切。「一生、正社員で働くことが素晴らしい」みたいな価値観の植えつけはどうかと思うし。また男性には、もっとしっかりしてもらえるような教育にしてほしいんですよね。平等に扱ってもらうより、女性を守れて素敵にエスコートできる男性が増えてくれたほうが、よほど女子は幸せなわけで――。
「やっぱり仕事より結婚! プラス病気あるぶんお金がかかるんで、やっぱり高収入の男性に惹かれるんですけど――。本当に紹介してくれますか?」
かなり本気になるあたくし。年齢がいくと見境なくなるっていうけど、熟年だし、病気だし、そのぶん本音が炸裂しちゃいます。そんな本音をぶつけ合うのも醍醐味。自分の値段を思い知らされてもパートナーがほしいと思えたら、結婚相談所に飛び込んで人生を変えてみてもいいのかもしれません!