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【趣味を広げる】犬語がわかるともっと楽しい!

小田哲之亮(千葉動物病院院長)

2010年12月11日 公開 2022年12月20日 更新

小田哲之亮

『犬と会話ができる本』(監修:小田哲之亮)より

犬語とは何か(1)犬から人への犬語)

「犬語」とひと口に言っても、その意味するところは多様です。犬語で犬とコミュニケーションをとるには、「犬の発する犬語を人が理解する」面と、「犬に通じる犬語を人が発する」面の両方を、きっちりとおさえなければなりません。

 まず最初は前者、つまり「犬にとっての犬語」とは何かを知りましょう。

 犬の発する犬語は、

 〈1〉鳴き声〈2〉表情や目や耳など顔の部位のようす〈3〉しぐさや体の動きの3本柱で成り立っています。とりわけ〈3〉にはさまざまなバリエーションがあり、訴えたいところがもっともハッキリと出てくる部分です。電信柱にオシツコをする「マーキング行動」や、ほかの犬の背中に乗る「マウンティング」など、人間にとっては理解しがたく、戸惑ってしまう動作も多々ありますが、「なぜするのか」「いつするのか」といったことをきちんとおさえておけば、的確に対応することができるでしょう。

 とくに注意が必要なのは、ストレスを感じている犬の発する犬語です。

 ノルウェーの研究者であるトゥーリッド・ルーカス女史は、犬が自分や相手を落ち着かせるためにおこなう動作を観察し、27種類の「カーミングシグナル」として提唱しました。この本に出てくる犬語にも、たくさんのカーミングシグナルが含まれています。

 そのうちのいくつかを紹介すると、

 ●「まばたきをする」→あなたに敵意は持っていないよ。

 ●「地面のにおいをかぐ」→とにかく落ち着こう。あわてるな、自分。

 ●「口をパクパクする」→いやな気分だ......でも落ち着かなくちゃ。

 などがあります。いずれも緊張状態にあるときに、自分や相手を落ち着かせるためにする動作です。

 カーミングシグナルは、緊張を解くための友好のサインであり、ほかの犬や飼い主に対して送られるものです。犬同士ならすぐ理解しあえても、犬語を知らない人間はしばしば誤解しているのを見かけるので、気をつけましょう。

 カーミングシグナルを頻繁に発していたら、ストレスがたまっている証拠なので、適切なケアが必要です。

犬語とは何か(2)人から犬への犬語

犬にこちらの意思を伝えたり、犬に語りかけたりするには、やはり「犬語」――犬にわかる方法で表現しなくてはなりません。

 その方法もまた、いくつかの柱に分かれます。

 〈1〉人間の言葉とジェスチャー
 〈2〉表情とスキンシップ
 〈3〉犬の行動原理に即したしぐさ

〈1〉については前章で述べたとおりです。犬は200程度の人の言葉を理解することができるので、簡単な言葉や、時には短いセンテンスも理解できます。シンプルに、はっきりとした声で伝え、同時にジェスチャーをつけましょう。犬への指示の伝わり具合をよく観察しながら、声かけのベストなタイミングや頻度を見つけていくことが大事です。

 こちらの愛情を伝えるには、〈2〉が有効です。飼い主の笑顔を見ると、犬も安心した表情を見せます。遊ぶときやほめるときには、スキンシップもふんだんにとりましよう。PART6で説明しますが、抱き方(P154)やなで方(P156)にもコツがあります。犬の喜ぶ方法でおこなうことを心がけましょう。とくに、ほめるときには、良い笑顔で良いスキンシップをとることで、学習能力が高まります。

 〈3〉は、犬のカーミングシグナルを理解したうえで、人間も似たようなことをするテクニックです。犬と同じように地面のにおいをかいだり、舌で鼻をなめたりすることはさすがにできませんが、簡単なしぐさならまねることができるでしょう。たとえば、犬は相手に「落ち着いて」と言いたいときに、あくびをします(→P12・92)。興奮している犬にあくびをして見せたら、それは「落ち着いてね」と言っていることになるのです。

 カーミングシグナルを使わずに、犬を落ち着かせることもできます。

 飼い主に連れられた犬がこちらを警戒しているときは、まず飼い主と会話をしながら、犬がこちらに興味を示してくるのを待ちましょう。犬がこちらを見上げているのがわかったら、こちらもおだやかに目を合わせます。そこまで待たずにいきなり目を合わせると、犬は「この人は敵意を持っている」と誤解してしまうので、注意しましょう。

 これらのさまざまな「人から犬への犬語」をうまく組み合わせて、気持ちを伝えてください。「言葉」と「スキンシップ」、「表情」と「しぐさ」などを同時に組み合わせることで、犬に伝わる言語はますます多様に、そして伝わりやすくなるのです。

犬と会話ができる本 犬と会話ができる本
小田哲之亮監修 《千葉動物病院院長》

しぐさや表情から犬の気持ちがわかるようになれば、愛犬との生活がもっと楽しくなる! 愛犬ともっと心を通わせるための「犬語」辞典。

 

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