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生き方

50代が"バブルの恩恵"と引き換えに突きつけられた「過酷な現実」

江上治

2019年03月04日 公開 2024年12月16日 更新

会社でも大変ないまの50歳

いまの50歳前後の人たちを見ると、とにかく元気がない。お金の不安だけではない。

仕事でも疲弊している。世界がじつに残酷なものになっているからだ。
私が会社に入った当時は、50歳のビジネスマンは非常に元気だったし、格好よかった。これは彼らがお金をふんだんに使えたことが大きい。給料以外に使える経費が多く、交際費も出張費も、ほとんど青天井で、若いわれわれも、その恩恵に与かった。

一緒に飲みに行けば奢ってもらうのは当然で、そんな彼らを見て、「あの人みたいになりたい」と憧れる上司や先輩もいたものだ。会社でずっと働いていれば、いずれ自分もああなると思っていた。

じつを言えば私は就職活動中も、当時の恩恵をずいぶん受けた。熊本の大学にいた私は、地元での試験に合格して東京の本社面接を受けに行く際、飛行機代とホテル代が全額支給された。実際は伯父の家に泊まったので、ホテル代はタダだ。29社の試験に受かっていた私は、それだけで200万円近くを手に入れた。

さらに先輩の「こうして請求書を出したら、絶対通る」という言葉にのせられ、毎晩一緒に宴会した。今日は寿司、明日はすき焼きと連日ドンチャン騒ぎだ。結局、熊本に帰って3日連続のキャバレー通いでお金は全部使い果たしたが、これが当時のムードだった。

結局、私は30代で独立し、会社員ではなくなったが、当時の同期たちの現在の仕事ぶりは、かつての上司たちとまったく違う。彼らに会うと、とにかく疲れ果てている。かつてのように自由にお金は使えず、一方で仕事はどんどん複雑になっているからだ。

まず扱う商品が激増している。私がいた頃の損害保険会社は、損害保険だけを扱っていればよかったが、1996年の金融ビッグバンにより他の金融商品も扱うようになった。

覚える仕事、求められる資格が増え、ライバルには銀行や証券会社まで加わり、顧客の獲得合戦も激しくなった。

しかも課長になれば、かつては部下の管理だけすればよかったが、いまはプレイングマネージャーとして自分でも販売しなければならない。それでいて給料はさほど上がらず、手当てもそうは出ない。加えてバブル期前後の入社組だから、どの年代より多く採用されている。合併の影響などもあって、ポストが圧倒的に足らない。出世という"アメ"も期待できずにいる。

それでいて出費はあまり減らない。接待などでそれなりのクラスの店にも行くこともあるから、貧相なスーツは着られず、かかるお金はかつての50歳と変わらない。昭和のモーレツサラリーマンも忙しかったが、いまの50歳前後は、忙しさが報われない徒労感も強いのだ。

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