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ネット通販が使えなくなる"致命的な課題"

河合雅司(人口減少対策総合研究所 理事長/作家・ジャーナリスト)

2020年09月15日 公開 2022年05月25日 更新

ネット通販が使えなくなる"致命的な課題"


(写真:吉田和本)

コロナ禍でニーズが拡大したサービスの一つにインターネット通信販売(ネット通販)がある。しかし、『未来を見る力』(PHP新書)を緊急出版し、「人口減少に負けない思考法」の必要性を提唱する河合雅司氏は、人口減少に伴う"致命的な課題"によって、その便利さを享受できなくなる可能性があると警鐘を鳴らす。

※本稿は河合雅司著『未来を見る力』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです。

 

拡大するネット通販

ネット通販は、いまや人口減少で実際の店舗が減ってしまった地域に住む人々にとっては、それこそ命綱ともなっている。

アマゾンに代表される巨大資本の通信販売会社の登場によって、消費の地域格差はかなり小さくなった。ファッション通販会社のZOZOは、以前ならば東京の渋谷や原宿などに行かなければ入手できなかったおしゃれな服を、地方にいながらにして手に入れることを可能にした。

総務省の「家計消費状況調査」(2019年)によれば、2人以上の世帯におけるインターネットを使って注文した世帯の割合は、2008年の16.3%から2019年には42.8%にまで伸びている。

2019年の2人以上の世帯におけるネット通販の月間平均支出額は1万4332円である。これを年代別に見ると、40歳未満が2万1179円と最も多いが、40、50代は約2万円、60代も約1万3000円と、その利便性からいまや幅広い世代に利用されている。

 

致命的な課題であるトラックドライバーの不足

実際の店舗が少なくなってしまった地方のみならず、高齢者など「買い物弱者」対策としてもネット通販への期待は高まっている。

高齢者の利用も進んできているが、インターネットに慣れ親しんできた世代が高齢になれば、さらに高齢者向けの商品ラインナップやサービスが充実するだろう。高齢化社会との相性は相当に良い。

しかし、今後の勤労世代の激減を考えると、ネット通販が日本で発展し続けるには致命的な課題があると言わざるを得ない。注文・購入や決済までは問題ないのだが、配送が簡単にいかないのである。

国土交通省によれば、宅配便の取扱個数は1985年には4億9000万個だったが、2018年には43億701万個にまで膨らんだ。ネット通販の拡大も個数を押し上げる大きな要因になってきたものと考えられる。

ところが、これだけ増大した個数を捌く、肝心のドライバーを十分な人数確保できないのだ。

国交省の資料によれば、2017年1~3月期には67%の事業者が人手不足を訴えている。公益社団法人鉄道貨物協会の本部委員会報告書(2018年度)は、大型トラックの運転者数が2017年度時点ですでに10.3万人不足し、2028年度には不足幅が27.8万人に拡大する見通しだという。

 

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