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社会

ネット通販が使えなくなる"致命的な課題"

河合雅司(人口減少対策総合研究所 理事長/作家・ジャーナリスト)

2020年09月15日 公開 2022年05月25日 更新

大変なのは最終地点までの輸送

日本の産業の中で運送業の立場はかねてより弱かった。きつくて大変な業務内容のわりにドライバーの給料は低く抑えられてきた。

国土交通省の資料によると、労働時間は全職業比べて1~2割長い一方、年間賃金は約1~3割低い。運送業従事者の平均年齢が40代半ばくらいとかなり高いのも、それだけ若い働き手に人気がないことの裏返しである。人手不足は慢性的に続いているのだ。

東京と大阪など物流拠点の間の輸送はいまだ問題なく機能している。一度に大量の物を運べるので利益率もさほど悪くないからだ。

これに対して、物流拠点から個人宅など最終地点までの輸送が課題なのである。一軒一軒に物を運ぶのは手間のかかる仕事であり、利益率が低い。

配達先が不在だった場合の再配達に要するエネルギーも膨大で、各運送会社とも「置き配」(あらかじめ指定した場所やボックスなどに非対面で荷物を届けるサービス)の導入など無駄を省くべく工夫を重ねているが、これといった人手不足の解決策はなかなか出てこない。

一方でネット通販が便利だからといってネット通販の利用量が爆発的に伸び続けたならば、どこかで配送業務がパンクすることは火を見るより明らかだ。

現在のように即日や翌日の時間指定配達といった過剰とも思えるサービスがいつまでも続くわけはない。注文してから何週間も待たされるということになるかもしれない。

世の中はどこかで、誰かが「それぞれの役割」を担っているからこそ機能し、成り立っている。一方、われわれを待ち受ける「未来」では、その担い手がいなくなっていくのである。

世の中の"歯車"が一つ欠けると、何がどう変わるのかイマジネーションを働かせることが重要なのである。

「人口減少に負けない思考法」をもって未来に起こりうる変化を見抜いていかなければ、結局はツケが自分自身に回ってくることを忘れてはならない。

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