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「他人の話に耳を貸さない人」が苦しみ続ける“消えない不安”

2020年11月30日 公開

加藤諦三(早稲田大学名誉教授、ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員)

気分転換

「嫌いな人がいることは大切」だとどこかで聞いたことがあるかもしれない。それは自分のアイデンティティーを見つける上で非常に重要だからだと加藤諦三氏は言う。

加藤諦三著『自立と依存の心理』(PHP文庫)では、どこか不安で自分に自信を持てないのは「心の自立」ができていないからと加藤諦三氏は語る。過去を振り返ることで自身を見つめ、本当の心の自立をすることで逆境に折れない生き方ができるようになる。

※本稿は加藤諦三著『自立と依存の心理』(PHP文庫)より一部抜粋・編集したものです。

 

「嫌いな人がいること」が大切な理由

「心の支え」とアイデンティティーとは切っても切れない関係にある。アイデンティティーの形成を抜きにした「心の支え」は考えられない。それはアイデンティティーが形成されてはじめて自分にとって適切な人生の目的ができるからである。

自分は自分、人は人、という気持ちが固まってはじめて自分の人生の目的も明確に見えてくる。人生の目的が明確に分かるから「捨てる」ものと「選ぶ」ものを分けることができる。

愛されて育った人は、青年期になれば案外簡単に自分は自分、人は人というアイデンティティーを形成できる。しかし愛されないで育った人は容易にはアイデンティティーを形成できない。

愛情に恵まれないで成長したある人が「本当に自分のアイデンティティーができたのは、ずるい人たちによってたかって騙されたときである」と言った。彼は「この人たちと自分は違う」と心の底からそう思えた。「この人たちに囲まれて生きるのなら死んだ方がいい」とハッキリと思ったという。

人間のアイデンティティーは異質な人と接したときにも出てくる。「自分はあの人たちとは違うなー」という感じ方である。「自分は絶対にこのようには生きたくない」という確信である。

あるいは「あのようにはなりたくない、あのような生き方はしたくない」等々の感じ方である。アイデンティティーの形成には「好き嫌い」は大切である。「あの人はイヤだー」と思うことで、あの人のようにはなりたくないと願う。

「あの人はイヤだー」と思うことは、大切なことである。そういう人がいて、はじめて「私はこう生きる」という姿勢も出てくる。とにかく自分で自分を受け入れればいい。人はそれぞれの運命を背負って生まれてくる。

そして自分を受け入れれば運命は開ける。ありのままの自分に価値があると気がつけば、運命は光になる。自分を受け入れれば、自分の運命を呪わない。

 

アイデンティティーがないから虚勢を張る

自分の生き方が見えてくるからこそ、社会の中で自分の役割も見えてくる。アイデンティティーが形成されると「自分の責任はここだ」ということも見えてくる。

うつ病になるような人は、義務責任感が強いという。しかし義務責任について心の整理ができていないので、背負わなくてもいい重すぎる責任まで背負い、挫折する。

アイデンティティーが形成されると、何よりも無理をしなくなる。アイデンティティーが形成されるということは、「自分はこういう人間だ」ということが分かるということだから、生き方が着実になるということである。

そして無理をしないで、着実な生き方になれば、社会的な大きなつまずきは少なくなる。自分の給料では高すぎる高級車を買う、自分の給料では払えないローンを組んで家を買う人がいる。

カード破産という言葉がある。無理をしなければカード破産は少ない。なぜ無理をするか?それはアイデンティティーが形成されていないからである。

どう生きていいか分からないで見栄を張ってブランドものを買うからである。アイデンティティーが形成されれば、無理をしてブランド品で自分を飾る必要はない。実際以上に自分を見せる心理的必要性はない。

アイデンティティーが形成されれば、虚勢を張る必要のない仲間もできてくる。アイデンティティーが形成されていないと恋人にさえ虚勢を張らなければならない。無理をしてブランドものをプレゼントする。自分の収入では買えないような高級品を買う。

あるいは恋人の選択そのものを間違える。人に自慢する恋人を作る。恋人の選択を間違えるような人は、仲間の作り方も間違える。そうして次々と人間関係を間違える。それが最大の不幸である。どんなに貧しくても心優しい人に囲まれて生きていれば幸せである。

それが「心の品格」のある人たちである。心の支えなしに「心の品格」は考えられない。どんなに権力を得ても、質の悪い人に囲まれて生きていれば、地獄である。

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